繊維ニュース

セーレン ユニチカの合繊を承継

2025年06月24日 (火曜日)

 セーレンは20日、ユニチカの岡崎事業所(愛知県岡崎市)で生産・販売するポリエステル長・短繊維、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)などの合繊・不織布事業を承継することで基本合意したと発表した。取得に向けた協議を7月中に終え、8月上旬には最終契約書を締結し、12月末に手続きを完了する予定だ(一部既報)。

 ユニチカから譲渡される事業はポリエステル重合、同長繊維(ユニチカトレーディングとその子会社の事業は除く)、同SB、同短繊維、同高強力糸、合繊紡に関する外部委託加工。

 売り上げ規模は約300億円で、昨年11月28日にユニチカが公表した事業再生計画に伴い撤退を決めた繊維、不織布関連事業の約6割を占める。従業員数は営業など含めて約500人。譲渡額など詳細はこれから詰める。

 同日の会見でセーレンの川田達男会長は赤字事業を引き継ぐ理由について「岡崎事業所が持つ32万平方㍍の土地・建物、人材、今後の可能性から判断し事業承継を決めた」と説明した。

 土地・建物に関しては同社が半導体、建材、人工衛星、炭素繊維、エレクトロニクスなど自動車内装材以外の新規事業への拡大投資を計画する中で「土地の確保から工場建設まで一から手掛けていては時間がかかる。その点で土地・建物が有効活用でき、資産でもある優秀な人材も生かせる」と強調した。

 今後の可能性については「岡崎事業所はこれまで大きな投資が行われていなかった。全てではないが、設備投資によって構造転換できる」とし、新規事業で計画する約300億円の投資のうち、100億円強を岡崎事業所に投じる予定。既存事業は今後、精査するも全体の8割は事業継続できるとの見通しも示した。

 旧カネボウから承継した子会社のKBセーレンとのシナジーは原料材調達などを想定。これまで外部調達するポリエステルSBの内製化によって、新製品開発にも結び付けたい考え。

 同席したユニチカの藤井実社長はセーレンへの事業譲渡について「総合繊維メーカーとしての高い事業力と、KBセーレンの改善実績があり、シナジーも期待できるため岡崎事業所のポテンシャルを高めることができる。何より大きな事業を雇用を含めて承継していただけること」が判断基準になったと説明した。

 また、綿100%スパンレース不織布を製造する垂井工場(岐阜県垂井町)や大阪染工(大阪府島本町)など残る撤退事業については8月末までに譲渡先を決定する計画だが、8月以降も一部は交渉が続くと述べた。