中東テキスタイル輸出/07年も昨年並みを維持
2007年01月15日 (月曜日)
対中東テキスタイル輸出は昨年、男性用民族衣装(トーブ)向けを中心に、高品質な「メードイン・ジャパン」製品のブランド力と原油高を背景にした現地の好景気で、日本の素材メーカーや染色加工場、商社などがそれぞれ10~20%程度売り上げを伸ばした。この好調は2007年も続くのか。ラマダン明けの昨年11月から12月にかけて、新年度のビジネスに動き出した各商社の手応えから今年の中東向けテキスタイル輸出を展望する。
独自性が拡大のカギ握る
現地では例年、イスラム教のラマダン(断食月)の時期が一般消費者向けの最大商戦となる。昨年のトーブ商況について最大市場のサウジアラビアでは「短繊維織物が半分近くまで増えてきたが全体的に今一つ盛り上がりに欠けていた」で商社の見方は共通する。
昨年のラマダンが9月24日から10月22日までと夏のバカンスで消費者がお金を使った後に重なり、出費に慎重になったと言われる。また、現地の株価低迷も気分的に影響しているという分析もある。一方、短繊維織物が中心のドバイ(アラブ首長国連邦)市場では地元富裕層向けの高級品を中心に昨年から引き続き活発な引き合いがあった。
伊藤忠商事は女性用民族衣装(アバヤ)とトーブの両方をほぼ50対50で展開する。「短繊維織物の高級品は倍々ゲームで成長」(菅原貞光金沢支店長)している。レーヨン混など原糸から専用に開発した新たな差別化商品で一段と勢いをつける。アバヤについても今年は新商品を開発、高級品市場でのシェア拡大を狙う。
長繊維織物の自社ブランド「マーベニー」を持つ丸紅テキスタイル製品部は、「少なくともまだ1年は短繊維織物の好調は続く、その間にマーベニー復活の足場を築き、08年に成果を出したい」(宮本敏彦衣料素材課長)と今年の目標を説明する。
ドバイのラマダン商戦では短繊維織物の硬仕上げ一辺倒だった傾向に、一部でソフトな方向に戻る動きやドレープ性の高い長繊維織物を求める動きなど多様化の流れが出始めている。NI帝人商事もこの動きを追い風に短繊維織物に加えて、得意とする長繊維織物の拡大を図る。「今年は作り場に目を向けたい」(八木敏純繊維貿易部長)と国内産地企業との連携を深め、総合的な開発力を高める。
中東の現地法人に駐在員を置く蝶理は日本からの輸出のうち、短繊維織物が約80%を占める。「サウジでも長繊維の中級、低級品と短繊維の高級品は動きがいい」(北岡猛テキスタイル貿易部長)と分析、今年は素材メーカーとの連携を強めて原糸、織り、加工それぞれの段階で現地顧客の細かい要望に対応する。
同じく輸出の80%が短繊維織物という兼松繊維の原料テキスタイル第一部。「中東のお客さんは保守的だが、絶えずサムシング・ニューを求めている。今年の商戦はまだまだこれから」(吉本勝則チームリーダー)だけに、紡績糸の工夫などでモノ作りの幅を広げて拡販を図る。
日本品は現地の問屋や小売から「高くてもいいから、ほかと違う商品を持ってきてくれ」と要望される。日本の素材メーカー、染色加工場、商社が一体となってこのニーズに応える限り、「メードイン・ジャパン」ブランドは輝きを失わない。今年の対中東輸出についても、出足はサウジアラビアで荷動きが鈍いものの「昨年並みの収益は可能」という見方で商社の見解は一致する。