07秋冬・インナーイチ押し素材はこれだ!/綿紡VS合繊
2006年12月21日 (木曜日)
オーミケンシ/清涼レーヨンを新投入
オーミケンシは春夏向けの新素材としてキシリトール練り込みレーヨン「リフレール」を新たに開発した。吸熱効果が特徴で、肌着、靴下、ナイティーなどの分野に向けて販売していく。
レーヨンに練りこんだキシリトールは、発汗による水分によって溶解するが、その際に生地から熱を吸収して肌に清涼感をもたらすという仕組み。同社の調べでは、リフレール30%混素材は未加工品に比べて生地温度を最大1℃下げるという結果を得た。
また、環境に優しい点も特徴の一つ。キシリトールはシラカバなどに含まれる天然の物質。レーヨン自体も木材を原料とする土に返る繊維であり、天然原料のみで高い清涼感が得られる素材として提案を進める。
インナー向けは秋冬向けで調温レーヨン「97.6。F」などがあり、「リフレール」の投入で春夏向けも拡充を図る。
旭化成せんい/サーモギア毛混メーン
旭化成せんいは07秋冬向け肌着に、「サーモギア」の吸湿発熱機能をパワーアップしたサーモギアとウール混をメーンに打ち出す。従来のサーモギアはベンベルグ紡績糸と極細抗ピルアクリルを組み合わせたもの。06秋冬の肌着向け販売量は前年比5%増を確保したが、そのけん引車でもある。来秋冬も「薄くて軽くて暖かい」傾向は継続するとの見方で、ウール混を重点投入する。一方で調湿機能が脚光を浴びているのを考慮、同社でもこの機能を持つ新素材の準備に入っている。
また、07春夏向けではベンベルグ長繊維使いがベースになるが、ファンデーション向けはソフトパワーが特徴のスパンデックス「ロイカHS」が主力。同原糸使いの「クリーミィ」をボトム中心に投入。一部、ベア天竺によるショーツ向けにも投入する。さらに、08春夏向けから、黄変しない「ロイカFW」を本格投入する。
シキボウ/4素材を重点提案
シキボウはニット素材で(1)複層構造糸「デュアルアクション」(2)連続シルケット糸「フィスコ」(3)複合糸(4)インド綿素材「ロイヤルサーラ」の4素材を重点素材に位置づける。紡績は富山工場、編み立てはシキボウ江南と国内生産に軸足を置きながら、独自性を出した商品だ。
デュアルアクションは表面が円滑で太さが均一なため、毛羽が少なくきれいな光沢感を得ることができる複層構造糸。織物を含めて様々な分野で好評を得ている。
また、複合糸ではモダール70%・トリアセテート30%の複層構造糸「チコリーノR」が好評を得ている。ソフト感、しなやかさなどが特徴。婦人アウターなどで好調な綿・トリアセテート混「チコリーノ」のモダール版商品だ。モダールを使用することにより、「チコリーノ」以上のドレープ性や肌触りの良さを実現している。
オペロンテックス/生地企画を共同開発
オペロンテックスのスパンデックス「ライクラ」事業は糸売りながら、需要家との共同開発によるインナー専用の生地企画も展開する。「アイソトロピック」はその一つ。編み組織で特許を持つもので、生地の中で縦、横、斜めに編み込まれる特殊構造から成る。
通常の2ウエートリコットは縦、横のどちらかにストレッチ性の偏りがあるが、アイソトロピックは全方向にバランスの取れた伸縮性を持つ。スポーツ用が多いが、インナー向けにも展開する。
同社の基本は需要家が付加価値を生み出すことができる原糸や生地開発を行うこと。07シーズン向けでもインナー生地で新企画を打ち出す予定だ。
ライクラにとってインナーは売り上げの3割を占める重点用途。大きな拡大は見込めないものの、安定的な商いを指向する。
第一紡績/「W.W.W.」シリーズ開発
第一紡績は来秋冬インナー素材として「W.W.W.(ウォーム・ワンダー・アンダーウエア)」シリーズを新たに投入する。(1)薄くアウターに響かない(2)軽量感(3)適度な保温性――などが特徴。
「W.W.W.」シリーズはアンケート調査で得た「アウターに響かない」「デイリーユースに向くイージーケア性」などのニーズを反映させて開発した。0.9 デ シ テックスの極細テンセル・中空ポリエステルを使った「W.W.W.ライト」、マイクロテンセル・バイロフト混「W.W.W.モイスチュア」、マイクロモダール・中空ポリエステル混「W.W.W.ソフト」の3タイプをそろえる。
紡績法はすべて「IPX」を採用し、毛羽が少なく毛玉が発生しにくい。また、60番手クラスの糸を使うことで、アウターに響かない薄さと軽量感を実現した。生地の編み方は、片側だけ田んぼのあぜのように凹凸をつけた片あぜ編みで適度な保温性を実現する。
帝人ファイバー/サイネックスを初投入
帝人ファイバーは07秋冬インナー素材として原糸では「サイネックス」を初投入するとともに、生地では「デルタ」を打ち出す。サイネックスはソフトで独特な感触と風合い、発色性にも優れるのが特徴で、婦人服地などにも投入する素材。一方、デルタは、独自の編み地構造理論によりフラットな生地表面を表現できるほか、抗スナッギング性も高く、主にランジェリー用途での展開を計画する。
06秋冬シーズンは婦人インナー向けが前年比微減、紳士肌着は10%増。四つ山偏平糸「ウェーブロン」、中空糸「ウェルキー」「エアロカプセル」などが好評だった。紳士肌着は07春夏でも10%増を計画しており、3素材のほか、後加工による吸汗速乾の「さらっとコンポ」などに力を入れる。
また、生地だけにこだわらず、今後は糸売りの拡大にも取り組む。
ダイワボウノイ/活性酸素を除去
ダイワボウノイは活性酸素を除去する機能が期待される白金ナノコロイドを生地に付与した「プラチナエリート」を開発した。07春夏から肌着、パジャマ、シャツ、パンツ、ふとん側地などの用途に向けて販売していく。
生地に付与する加工剤は、プラチナをナノメートルサイズに極小粒子化した白金ナノコロイド。プラチナは多種類の活性酸素に効果を発揮するほか、触媒として作用するため効力が長く持続する。プラチナ以外にも活性酸素を分解する物質はあるが、その多くは特定の活性酸素にしか作用せず、自身も酸化されて効果を失ってしまうという。
プラチナエリートは、活性酸素の一種である過酸化水素を生地上で分解することも確認している。さらに抗菌加工も付与しており、その耐久性も確認済みだ。
三菱レイヨン/コアブリッドに重点
三菱レイヨンのアクリル繊維第一部は07秋冬インナー素材として、アクリル複合繊維「コアブリッド」シリーズを重点的に打ち出す。中でも芯部分に温度調節ポリマーを練り込み、鞘部分は保温性に優れたアクリル繊維から成る「コアブリッドルーモ」、芯にセルロース系化合物を練り込むことで優れた消臭・吸湿性を持つ「コアブリッドタイニー」を打ち出す。
06秋冬は極細繊度の「ピチカ」、遠赤外線効果を持つ「ロニセラ」などが好調で前年比2割増を達成した。来秋冬では保温肌着の潜在需要が広がり、安定しているとの見方で、拡販を目指す。とくにコアブリッドルーモでは倍増を計画する。
国内販売のうちインナーは2~3割を占めており、中期的に比率を高める方針で、アクリル繊維の基本性能である軽くて暖かいという特徴を訴求するほか、コアブリッド技術での開発を進める。
東洋紡/軽さ・薄さ・暖かさ訴求
東洋紡は来秋冬に向けて、「軽く薄く暖かい」を切り口にした素材提案に力を注ぐ。ポリエステルやナイロン、アクリル、綿など総合的な素材展開や独自の紡績技術、堅田(滋賀県)の総合研究所を活用した評価技術などを生かしながら、差別化を図る考え。
来秋冬に向けては新素材「ウォーモ」などが好評を得ている。ウォーモは0.5デシ テックスレベルの極細アクリル短繊維と中空ナイロン長繊維の長短複合素材。軽さ、しなやかさ、保温性などの特徴を持つ。
また、春夏向けでは「フィラシス」などが好評を得ている。超長綿と特殊ポリエステルを独自の紡績技術で組み合わせた素材で、吸汗速乾性、形態安定性、フィラメントの質感を生かした表面感などが特徴。糸の表面はほぼ完全にフィラメントで覆われるため、毛羽が少なく、光沢感に富む
ユニチカテキスタイル/「シルフKF」軸に伸ばす
ユニチカテキスタイルのインナー素材は今上期、安価な中国品との競争激化で前年同期比若干の販売量減となった。重点投入している改質原綿による抗フィブリル性リヨセル「シルフKF」は、順調に伸びていることから、下期以降も、インナー素材の軸として拡販を進める。
シルフKFは「加工面での品質安定性が好評」としており、シルフKFを含む「シルフ」シリーズを今後もインナー素材の柱として拡販する方針だ。このほどヨネックスが07秋冬からスポーツインナー市場に参入するのに際して、同社のシルフを採用したことから、その販売増にも期待する。
これら独自素材の拡販で、「下期は最低でも前年同期比5~10%以上販売量を伸ばし、上期のマイナスをばん回する」方針だ。