合繊大手/防塵衣でシェア争い
2006年12月19日 (火曜日)
防塵衣というニッチ市場で合繊大手の争いが激しくなりそうだ。この数年、半導体などクリーンルーム向け需要の回復に加え、製薬、食品など他産業への広がりもあって、防塵衣アパレルとの連携を強めながら各社が拡大戦略を組む。ただ、国内の電子部品用防塵衣の飛躍的な成長は見込みにくいとの声もあり、その面ではアパレルも含めた国内のシェア争いも予想される。
すそ野の広がりに期待も
防塵衣用生地はポリエステル長繊維高密度織物に静電気を抑制するため、カーボン練り込みの導電糸を打ち込む。ポリエステル長繊維の多くは定番糸。経糸84デシテックスのなま糸、緯糸84デシテックス、167デシテックスの加工糸だ。
半導体などのクリーンルームで着用する防塵衣は年間100億円市場と言われる。一般のユニフォームからすれば微々たるものに過ぎない「小さな池」。そこに限定されたアパレルが「大きな魚を釣る」ためにひしめく。
合繊大手もアパレルとほぼ一体運営に近く、例えば旭化成せんいはセーレン・ゴールドウイン、帝人ファイバーはチクマ・東洋リントフリーというルートが出来上がっている。その防塵衣において「この数年、すそ野が広がっている」(帝人ファイバーの高橋紀光ユニフォーム販売部長)と言う。
2000年にピークを迎えた防塵衣は、かつてのように極端な好不調を繰り返す「シリコンサイクル」から脱し、04年以降、回復基調にある。半導体にとどまらず「液晶、プラズマなど電子部品が拡大しているほか、電子部品ほどの性能は求められないが、製薬や食品などへも防塵衣の市場が広がっている」(旭化成せんいスポーツ衣料営業部の能村豊房特需担当課長)ためだ。
これを受けて、各社とも拡大戦略を組む。東レでは「後れを取った新制電糸なども投入しながら、5年後に売上高で現状比4割増を目指す」(神原茂郎機能製品事業部長)など鼻息は荒い。旭化成せんいはスポーツ衣料営業部で防塵衣用生地を扱うが、スペックが厳しいユニフォームの売上高比率を5%から10~15%に引き上げる計画。帝人ファイバーは販売量で3年後には現状比1~2割増を見込む。
導電糸の市販大手であるKBセーレンは自社で生地販売する一方、導電糸「ベルトロン」は各社にも供給する。カネボウ合繊から引き継いだナイロン4品目の一つでもあり、中期的に防塵衣料以外も含めて7~8割増を見込む。
その制電性において、JIS法に加えIEC(国際電気標準化会議)基準が来年導入される見通しで、これに対応した商品開発も進む。導電糸では「従来の芯にカーボンを配したものでは、JIS法はクリアできるが、IEC対応では通らない場合もある」(KBセーレン・ベルトロン販売課の中西啓二係長)からだ。KBセーレンはすでに鞘部分にカーボンを配したベルトロンも開発済みで、各社もIEC基準対応の生地開発をほぼ終えている。
こうした高機能化が進む一方、「電子部品用で国内市場は飛躍的に伸びない」(帝人ファイバーの高橋部長)との見通しもある。同社の規模拡大は南通帝人を活用した海外需要向けが中心だ。その面で国内は電子部品向けで性能向上を図るとともに、製薬、食品などへの対応が、規模拡大のカギを握る。