ニュースを読む・国内綿紡設備/運転可能 100万錘の大台割る

2006年12月11日 (月曜日)

 日本紡績協会会員会社の運転可能錘数は10月末で96万2000錘となり、100万錘の大台を割り込んだ。現在の統計方式に変わった71年は1147万錘あった。35年で10分の1以下の規模になったことになる。

 国内綿紡績設備の縮小傾向は続いていたが、今年はその動きが加速した。紡績の繊維事業を取り巻く環境は厳しさを増し、事業構造の変革が急がれているためで、紡機だけでなく染色加工、縫製を含めて国内外の設備のあり方が見直された。ある紡績関係者は「20年くらい前には100万錘くらいになれば一気にもうかると冗談を言っていたのだが…」と設備縮小の底が見えにくい現状をため息混じりに話す。

 紡績設備の再編が加速した要因として、国内の素材需要減少のほか、中国、パキスタン、インドなどの海外紡績が技術水準を上げてきたことが挙げられる。最近では80双、100双まで輸入品の影響を受けるようになった。

 紡績設備再編の動きをみると、日清紡は昨年12月中旬に富山工場の閉鎖を含む国内繊維設備再編を発表。この実施により紡績設備は全面停止する富山工場の5万5600錘のほか、島田工場で1万7100錘、藤枝工場で4万1700錘を削減した。合計で11万4400錘の縮小となる。

 また、6月にはシキボウが1万2000錘を持つシキボウ高知を解散した。この設備はKBツヅキに売却されてフル稼働しているが、同社は紡績協会から脱会しているため、発表の数字には含まれなくなった。

 10月末には近藤紡績所が4万錘の浜松工場・第1工場を閉鎖した。これで浜松工場は紡績設備が無くなった。同社の紡績設備は大町工場4万5000錘、堀金工場4万錘、桜井工場6万錘の合計14万5000錘。一昨年から昨年にかけて6万錘の浜松第3工場、4万錘の浜松第2工場、6万錘の豊橋工場を操業停止しており、2年前の36万錘に比べて半分以下になった形だ。

 このほか、フジボウファイバーがコアスパンヤーン用の紡機を約3分の1にするなど工場閉鎖ではないが、一部設備を削減する動きもみられた。

 紡績設備縮小の一方、綿糸輸入が低水準で推移しているため、現時点では糸の需給はタイト化している。稼働率は、9、10月と80%台に回復。在庫も年初に比べて大きく減少している。来春夏に向けての商売が進むにつれて、「今はフル稼働で糸が足りない状況」という声も複数の紡績から聞かれる。また、ニット糸などでは適品が無い透き間のゾーンも見られ出した。

 しかし、国内紡績設備の縮小がこれで終わるとは言い難い。苦戦する繊維事業の収益改善に向けて、余剰設備の削減を検討している企業がまだみられるためだ。

 現在は多品種・小ロット・短納期に向く体制になっているため、実質的な稼働は80万錘前後とみられる。紡績錘数の縮小傾向は続くとみられるが、個別企業にとってはさらなる縮小ではなく維持かゼロか、という選択に迫られる状況が近くなってきたと見ることもできる。この選択には、開発や技術者育成などの要素も絡んでくる。また、海外での製造コストも上昇基調にあり、今後、糸の確保に向けた新たな判断が必要になってくる可能性もある。