連載・ハイテク繊維の世界(14)東洋紡

1999年09月16日 (木曜日)

 既存のスーパー繊維メーカーが最も脅威に感じているのが、次世代のスーパー繊維と呼ばれる東洋紡のPBO繊維「ザイロン」の存在だ。強度、弾性率は既存のスーパー繊維を上回っている上、耐熱性、難燃性においても有機繊維の中では最も高い数字を示しており、あらゆる用途で既存のスーパー繊維と競合する可能性がある。

 唯一の弱点は一キロ当たり一~二万円という高価格だが、それでも米国市場を中心に引き合いは活発だ。六月末から年産百八十トンの長繊維設備がフル稼働を開始。同時にフル販売状態になっている。

 とくに、ハイテク繊維の最大市場である米国においての評価は高く「当初計画以上の荷動きをみせている」と言う。全体の七〇%が米国向けで防弾チョッキ、セールクロス、消防服などが主力用途となっている。

 一方、耐熱性を生かして展開するアルミ生産工程の耐熱フェルト分野は期待値ほどの伸びをみせていない。

景気低迷によるアルミ需要減に加え、「ザイロン」の高価格がネックとなっているようだ。

 パラ系アラミド繊維とPAN系耐炎繊維との混紡フェルト代替が狙いだが、同社としては耐久性が増すことから「引き続きトータルコストダウンできるメリットを訴えていく」考え。

 ただ、当初計画では二〇〇〇年度に短繊維専用機(同二百トン)を導入する計画にあったが、これは耐熱フェルト次第。今年度末にはハッキリさせるとしているが、その動向次第では長繊維設備を導入する可能性も高い。

 その「ザイロン」が国内市場で触手を伸ばすのがプリント配線基板用ペーパーだ。長繊維をカッティングしたチョップドファイバーにペーパー化するものだが、現在は帝人「テクノーラ」、東レ・デュポン「ケブラー」が先行する用途。

 しかし、技術革新が早い世界だけに「ザイロン」でも電子材料部隊や関係会社のコスモ電子(本社四日市市)と共同展開。「耐熱性などの特徴が生きる有望用途の一つと位置付け日米でテスト中」と言う。

 米国で採用されれば一アイテムで三十トンはこなせるというだけに期待は大きい。(つづく)