ひと/伊藤忠商事執行役員ブランドマーケティング第二部門長・久米川武士氏

2006年09月05日 (火曜日)

 「21世紀は過去と同じ繰り返しではつまらない。外側の見えるところだけでなく、心の豊かさ、文化など、五感で感じるものにビジネスチャンスを見いだし、提供したい」と、目線は高い。

 デベロッパーが商業ビルを新たに作る際、全館を衣料品のショップで埋めることはありえない。レストランもあれば雑貨、家庭用品もある。消費者にとっては、これらは同等の支出価値を持つサービス・商品だ。このため、欧州ブランドに加えて、ブルーノートやディーン&デルーカ、クロム・ハーツなど、これまでとは違う幅広いブランド展開を行っている。

 東京のブランドマーケティング第二部門は、大阪のブランドマーケティング第一部門と比べると、組織も収益力も半分程度。「大阪のビジネスに追いつくことが課題」である。ライフスタイルからの切り口に加え、商社としての機能面でも新たなビジネスモデルを模索中だ。その一つはブランド化の提案など、顧客のビジネスを大きくするお手伝いをすること。キッチン周りや電化製品のメーカーに周辺商品の開発を提案したり、ブランド化を提案したりし、ビジネスを拡大する。

 取り扱いブランドでは、米のスポーツ系ブランドが増えてきた。ユーロ高への対策とは別に、これらのブランドは21世紀型ライフスタイルに向くと判断している。EU(欧州連合)本国では電化製品や台所用品しか展開していないが、日本では周辺商品まで手を広げて成功しているケースがあり、この「日本市場で成功したビジネスモデルをEUへ逆輸出したい」と、意欲を燃やす。

 昨年4月には、寝装・インテリアを扱うライフスタイル部を新設した。設立から1年余り経ち、顧客に言われたものを供給するだけではなく、「ディズニー」などのブランドをつけて販売するなど徐々に活性化、今後の飛躍に期待している。

 一方、欧州ブランドはジャパン社の設立など様々な動きがあったが、現状は厳しい環境にある。契約更新時などに、再編成があるかもしれないと予測する。「流動的な今は好機」と業界の動きにアンテナを張る。

 「ロンドン駐在時に、あらゆるところに花が飾られていることに、豊かさを感じた」と述懐する。この経験がきっかけで、ガーデニングに関心を持つようになった。自宅の庭を英国風に模様替えし、家族とガーデニングを楽しんでいる。公私共に五感で感じる豊かさを追求する。 

くめかわ・たけし

 1974年4月伊藤忠商事入社。2000年4月欧州経営企画部長(ロンドン駐在)兼伊藤忠欧州会社。03年4月ブランドマーケティング第二事業部長。05年4月ブランドマーケティング第二部門長。06年6月執行役員に就任。55歳。