クラレベクトラン/100億円事業へ育成

2006年08月01日 (火曜日)

 クラレは将来的に、高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」を100億円超の売り上げ規模に育成する。3年後の2008年初頭には年産1000トン体制に増強するほか、3000トンへの拡大を狙う。

 現在の売上高は約25億円、1000トン体制に向けて(1)細繊度糸の強化(2)FRP(繊維補強プラスチック)の本格化に取り組み、現状、約25億円の事業規模を40億~45億円に拡大させる。

 ベクトランは4月に数億円を投じて、ボトルネックの解消を行い、400トンから500トンに拡大したが「需要がおう盛で依然、玉不足にある」(繊維資材事業部の梶田栄機能素材部長)。このため、再度ボトルネック解消を実行、10月には600トンにまで能力を引き上げるが、年産400トン規模の新設を早期に決定したい構えだ。

 引き合いが活発なのは、2005年に買収した米セレニーズ・アドバンスド・マテリアルズ(CAMI)が好調なため。現在、クラレアメリカの新規事業部として運営するが、軍需用(膜構造物)、マリンスポーツ(ロープ)などでの用途開拓が実を結んでいるという。

 ただ、08年初頭に計画する1000トンへの拡大には新用途開拓が不可欠として、細繊度での用途開拓、FRPの本価格化に力を入れる。

 細繊度(110~280デシテックス)では特殊ケーブル、コード類がターゲット。例えばヘッドフォンのコードの補強もその一つで、水を吸わないベクトランの特徴を生かしてパラ系アラミド繊維からの代替を狙う。

 FRPは航空機、自動車などの部材向け。水を吸わない、耐衝撃性が高い点を訴求する。FRPでは生産開発プロジェクトチームを設け、自社でのFRP試作や評価試験を行える体制を目指す。「1000トン体制では少なくとも100トンはFRPで占めたい」と意気込む。

 また、長期的にはゴム資材への展開も検討しており、現在、素材改良を進めている。同時に強度アップや対薬品性の向上など「第2、第3世代」のベクトラン開発も進める。

 ベクトランは高強力高弾性率を持つスーパー繊維の一つで、90年事業化。低吸湿性、極低温下での物性維持に優れる。