健康・環境ライフ特集/素材編/東レ、蝶理、クラレグループ、クラボウ、第一紡績

2006年06月28日 (水曜日)

東レ/「爽竹」中心に素材充実

 東レは、スローエクササイズ分野にバンブーレーヨン「爽竹」中心に素材開発を進める。リサイクルシステムも、三大合繊すべてを対象とした総合的リサイクルシステムを構築する。

 同社は現在、特殊多層編み組織のポリエステル素材「サラカラ」シリーズや吸汗速乾ポリエステルニット素材「フィールドセンサー」、保温素材「アールモル」など爽竹との複合機能素材を開発中。ヨガやピラティスなどスローエクササイズ分野での販売を目指している。

 また、同社が製造販売するPTT(ポリトリメチレン・テレフタレート)「3GT繊維」の成分約半分が近々トウモロコシ原料に切り替わることから、環境に優しいストレッチ素材として期待が寄せられている。PLA(ポリ乳酸)繊維「エコディア」も環境配慮素材として、主に自動車資材用途での販売拡大を進めている。

 そのほか、吸放湿ナイロン「キュープ」や保温後加工素材「ウォームセンサー」、抗菌後加工素材「マックスペック」など、主にスポーツ素材で充実した商品展開を進めている。

 同社のリサイクルシステムで注目すべきは、三大合繊すべてを対象にした総合的リサイクルシステム「エコドリーム」である。

 ナイロン6製品は官公需ユニフォームを中心にケミカルリサイクルを実施。アクリル繊維「トレロン」もケミカルリサイクルを確立し、04年に日本環境協会からエコマーク商品認定を受けた。

 再生ポリエステルは、マテリアルリサイクルが中心だが、ケミカルリサイクル本格事業化に向けて検討を進めている。

 そのほか、繊維クズや使用済み製品を燃料にするサーマルリサイクルも東海工場で実施している。

蝶理/ロハス志向の素材そろえる

 蝶理は消費者の間で関心が高まっている「ロハス」的なコンセプトに適した素材を相次いで打ち出している。独自の新開発シルクプロテイン加工「シルテイン」のほか、「ロープーマ(羅布麻)」も07春夏物から再スタートさせた。すでに展開中の「ナチュラルダイ(草木染め)」などと合わせ、顧客の反応もいいという。

 シルテイン加工は福井県大野市のベスト工房と提携して展開している。同社が特許を持つセリシンの常温抽出技術を活用し、自家飼育した白色繭から純天然高分子セリシンを抽出する。常温抽出した高分子セリシンは自ら繊維に付着するため、既存のシルクプロテイン加工と比べてアミノ酸の付着効果が高く、保湿性、美白保持性に優れる。耐洗濯性も洗濯30回後で約90%成分付着(従来加工品は約10%程度)を保持。天然繊維、化合繊のほとんどの素材に適合する。

 ロープーマは約20年前に発売したが、5年ほどで自然消滅していた。今回はユニチカテキスタイルが以前とは違う手法で紡績したもので、過去の粗野な感じと異なり、ソフトで光沢感がある。

 細番手化の傾向に合わせて、50番単糸まで紡績。綿混を中心に、「レンチング・リヨセル」(「テンセル」)との複合などで展開する。混率は綿55%、ロープーマ45%など。服地やインナー向けに、織・編み物の双方をそろえる。紡績技術が難しいため、紡績はユニチカテキスタイルの常盤工場で行っており、テキスタイル化も国内産地で行う方針だ。初年度の生産量は20トン。

クラレグループ/皮膚炎のかゆみ和らげる「メディエル」

 クラレグループは、健康を訴求した商材や環境配慮素材で、多彩な展開を行っている。とくにエチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)繊維では、他社の追随を許さない。

 クラレトレーディングが販売するEVOH繊維「メディエル」は、吸放湿・接触冷感素材として好評の同社「ソフィスタ」のポリマー純度を高め、加工段階でも薬剤に徹底的に配慮することで、高い吸放湿性、接触冷感と生体適合性(限りなく肌に優しい)の強化を実現した。

 主に肌着用途で販売するが、注目すべきは、繊維が皮膚に与える刺激が小さいため、アトピー性皮膚炎などのかゆみを和らげる効果がある点だ。すでに信州大学医学部で治験データが出ている。同社は今後、メディエルを既存のEVOH繊維とは一線を画したファブリック素材として、医療用途への本格参入を目指し、開発を加速させている。

 また、UVカットポリエステル「スペースマスター」はスポーツウエア分野で大きな存在感がある。

 そのほかにも、特殊な酸化ケイ素(ブラックシリカ)練り込み保温素材「マイクロウォーム」、光消臭・化学吸着消臭素材「シャインアップ」など健康に訴求した機能性ポリエステルで多彩なラインアップを形成している。

 環境配慮の取り組みも積極的だ。クラレ本体が扱う「ビニロン」や「クラロンK―・」は、アスベスト代替に欠かせない素材。PLA(ポリ乳酸)「ジオダイナ」の開発も加速している。クラレクラフレックスが開発したスチームジェット不織布「フレクスター」も接着剤不要で環境に優しい商材。また、再生ポリエステル「クララペット」も、クラレトレーディングがユニフォーム分野などで販売し、サーマルリサイクルも実施している。

クラボウ/月桃やラベンダー素材を

 クラボウはこれまで「原料」「加工」「システム」の各面から環境と健康に配慮した取り組みを積極的に進めてきた。

 原料では「月桃」「ラベンダー」の素材を展開している。ともに通常ならば廃棄されている部分を再利用するという環境配慮型の素材だ。

 このほか、再生ポリエステルを使用素材「アフターペット」、再生ポリエステル・綿・植物原料混素材「グリーンペット」、未利用綿を使用した「リターンコットン」などの素材も展開している。

 加工は徳島工場を中心として、環境に配慮した生産体制を構築している。例えば水の利用を軽減するために雨水を貯蓄し、トイレや加工などに利用する。また、生産体制の面では設備や薬品、熱の掛け方などを工夫することで二酸化炭素の排出量をかつての半分にまで抑えている。

 カセイソーダ、塩素、ホルマリンを一切使用しない「クラブ―O」ではより品質を上げるための研究開発を常に進めている。ウール素材ではオゾン処理による防縮加工「エコウォッシュ」、化学染料を使用しない着色技術「エコトーン」などを展開している。

 システムの面ではユニフォームでリサイクルシステム「ペットグリーン」を構築。使用しなくなったユニフォームを回収し、サーマルリサイクルする仕組みを構築している。

第一紡績/減農薬コットン素材を展開

 第一紡績は環境配慮型の綿素材「コットンスピリット」を07秋冬から本格展開する。農薬の使用量を抑えて栽培された綿花を使用した素材で、草木染めと組み合わせた展開も視野に入れる。

 コットンスピリットは農薬の使用量を従来の約10分の1に削減して栽培した豪州綿花(長綿)を使用する環境配慮型素材。展開用途は綿100%を中心とし、30、40番手などをそろえる。

 同社の荒尾工場は環境ISOを取得し、環境問題に積極的に取り組んでいる。コットンスピリットもこの工場で環境に配慮した生産を行う。

 また、現在はコットンスピリットの草木染め商品の開発も進めている。ザクロ、五倍子、丁子、ビンロウジュ、クチナシ、アカネ、ヤマモモなど9種類の色展開を予定する。