足元を見直し再飛躍図る/豊島社長・豊島俊明氏
2006年04月27日 (木曜日)
豊島社長・豊島俊明氏
豊島は今期、為替や人民元、原油高などアゲンストの風への対応が遅れて苦戦している。しかし得意とするメンズカジュアル分野では、団塊世代に向けたアダルト市場が広がる気配を見せるなど今後への好要因もある。中国を基点としたビジネスも、2月に経営範囲を拡大した豊島国際〈上海〉を軸に、着実に内販、三国間ビジネスを進めている。7月新年度に向けて、もう一度足元を見直して、再飛躍できる態勢を取る。
国基点のビジネス着々内販はスポーツ向け開拓
――国内の衣料品市場が大きく変化しています。
昨年のクールビズをきっかけにメンズアダルト市場が注目されています。デパートもメンズの売り場を拡大し、郊外型の紳士服チェーン店なども、我々と一緒にカジュアル分野の商品を展開しようという話もあります。現状メンズアダルト向けカジュアルの売り場がほとんどないため、デパートにかかる期待は大きいでしょう。そうなれば、供給ルートを持つナショナルブランド系アパレルが良くなります。
最終的にメンズの市場は10~20%くらい広がると見ています。しかし、定年延長などで一度に退職するわけではないので、世の中で言うほど爆発的な購買につながるかどうか、正直に言って現状では分かりません。
――「2007年問題」はどうでしょう。
例えば商社では、団塊の世代の大量退職で、テキスタイルの知識を持った人が少なくなるという懸念はあります。国内でテキスタイルを作ること自体が少なくなっているなか、製品ビジネスを続けながら、昔のことを知っている人に教わることも必要になります。
モノ作りのノウハウとして、糸や生地など素材の知識があれば、提案力、調達力が広がります。製品を手がけるチームが糸、テキスタイルのことを知って、すべてを一貫で行うことが必ずしも理想的だとは、リスクを考えれば思いません。しかし、少なくとも素材のことを知っていることで、トータルな発想でモノ作りを展開できます。
――中国を中心とした海外事業をどう見ますか。
生産拠点という点で考えれば、長期的には中国一極集中のリスク分散も必要です。当社もベトナム生産を行っています。しかし、カジュアル分野では中国以外はなかなか難しいのが現状です。そのなかで現地の繊維企業に低コストを押し付けるだけでなく、お互いに利益の上がる仕組みを提案し、技術レベルと生産効率を向上し、品質面も合わせて安定したモノ作りを進めることが重要です。
――中国を基点としたビジネスは。
この2月に外高橋保税区企業として内販権を取得し、豊島国際〈上海〉の経営範囲を拡大しました。内販事業や欧米市場向け製品事業など上海を基点とした中国事業を本格化します。
内販分野では、現地日系企業向けの原料、素材供給から始めます。製品ビジネスの早期展開には、「いかにアパレルのお手伝いができるか」がポイントになると見ています。当社が得意とするカジュアル分野では漠然としすぎているため、「スポーツ」にターゲットを絞って進めます。現地の百貨店、専門店など小売り向けに日本のメーカーの商品を卸していくことで、内販の突破口を開きたいと考えています。
――三国間ビジネスは。
現地の生産背景を基盤とした欧米市場向け製品輸出ビジネスも徐々に形が整ってきました。米国市場向けでは、売り込み先アパレル企業を与信管理面や取り扱いアイテムの価格帯別に絞り込み、ターゲット顧客に見合った商品で効率的に攻勢をかけます。
――今年の課題は。
この2~3年、非常に高水準な業績だったこともありますが、この6月期は為替や人民元、原油高などアゲンストの風への対応が少し遅れた面があり、経常利益でかなり減益になる見通しです。市場の変化は我々が考えているよりも3~5倍くらい早く進んでいます。だからこそ逆に、目先にこだわらず、腰を落ち着けて方向性を見失わないようにしたい。この下半期からもう一度足元を見直して、再飛躍できる態勢を取ります。
プロフィール
(とよしま・としあき)1977年東海銀行入行。85年豊島入社。90年取締役、94年常務、99年専務を経て、2002年社長就任、現在に至る。
新入社員に薦めるこの1冊/先人の知恵で自分を磨け
豊島さんが「現代に通じる名言がいっぱい。昔から親しんできた」と言うのは、中国古代の歴史書の世界。なかでも「史記」(司馬遷著)や「十八史略」(曾先之著)がお薦めだと言う。ファッションの世界は、名前の華やかさとは逆にアナログ的な要素が強く、「フェース・ツー・フェース」で最後は担当者の魅力がモノを言う。昔の人の知恵を学んで身につけ、自分自身を磨いてほしい。