有力素材メーカーの来入学商況/高付加価値の提案強化

2005年09月30日 (金曜日)

 少子化による生徒数が減少する中で、素材メーカーのスクールユニフォーム素材の提案は総じて付加価値を高める方向にある。素材メーカーの展示会は東亜紡織が7月に東西で開催したのに続き、日本毛織が9月から10月にかけて東西で開き、カネボウ繊維から国内羊毛事業を継承したサンコーテキスタイルが10月に全国3カ所で初の展示会を開く。来入学商戦に向けた有力素材メーカーの取り組みをまとめた。

日本毛織/「ナノ・ミラクル」提案

 日本毛織は10月6、7日と東京の紙パルプ会館(中央区銀座)でスクールユニフォーム素材展を開く。大阪本社で9月28、29日に開いた展示会に続くもので、今回は全社的なプロモート素材として、スクール分野で初めて「ナノ・ミラクル」を提案した。

 ナノ技術による2ウエー・ストレッチの「アロ・ストレッチ」、新・消臭抗菌素材「V―CAT」、撥水・撥油加工「スーパー・セルボニック」などを提案した。展示会ではより上質で、より機能的で、より快適な素材を「リ・テースト」をテーマに専門店、アパレルを対象にアピールする。

 そのほか、高品質、高機能、高付加価値の最新の無地素材や小学校服企画を披露するのをはじめ、制服ができるまでの工程をビデオにした「技・学・感・心」(約15分)と制服の着こなしなどを簡単に説明できるプレゼンテーションソフト「制服セミナー(パワーポイント)」を紹介する。

 迫間満スクールユニフォーム部長によると、来入学商戦に向けては中学・高校の制服更新が約270校の見通しだ。来年春のモデルチェンジ校は中学で70~80校、高校で190~200校の計270校と予想している。そのほか、私立校を中心に中等部を新設するところが制服更新とは別に約30校あるという。

 制服更新は引き続き公立校の統廃合や中高一貫校の増加などを背景に更新需要があるものの、業界内では入札やコンペなどの価格競争を懸念して、専門店や学生服メーカーが総じて慎重な姿勢をみせているようだ。ただ、入札や見積り合わせは地域によって差があるものの、ここに来て沈静化しつつあるという。

東レ/上期は前期並の推移

 東レのスクールユニフォーム素材の販売は上期がほぼ横ばいの見通しである。武田一光学生衣料課長によると、前々期は上期が悪く下期に注文が集中したが、前期から注文も元に戻り、今期もほぼ前期並みで推移している。

 前々期はアパレルで詰襟服の定番素材の置き換えが進んだことから、旧定番と新定番素材の注文の見込み違いがみられたとしている。詰襟用の定番素材は少子化による生徒数の減少から拡大しにくい市場環境にあるが、付加価値のある定番素材への置き換えを図っている。

 一方、ニットの採用が増えつつあり、とくに幼稚園向けの体操着として、泥汚れがきれいに落ちやすい加工「クリーンマジック」が好調だ。また、夏用セーラー服向けにニットのトリコットやカッターシャツ企画にポロシャツに替わる布帛ライクなトリコットの採用が増えている。

 ただ、原燃料高の影響が徐々に出てきており、とくに染工場のコストが上がっている。このため、定番のリピート商品が採算的に厳しくなっているという。

 新商品については3GTのポリエステル複合繊維「T―400」を使用したいろいろな商品開発を進めているほか、タンブラー付全自動洗濯機に対応した学生服をアパレルと共同で開発を進めている。ただ、今年の機能製品事業部のユニフォーム展は見送ることになり、来年7月ごろに延期する予定だ。

 また、来年3月から中国・青島で生産が始まる「東麗即発〈青島〉染織股フェン有限公司(TJQ)」のポリエステル綿混事業において、スクール分野でスクールシャツ向けに提案をこれから推し進めていく。

東亜紡織/環境素材注目集める

 東亜紡織の前入学商戦は前年並みの実績を確保した。再生ポリエステル「Wリサイクル」などが堅調に売れた。

 久保徹大阪ユニフォーム課長は「そのままの置き換えというよりも、価値や機能が求められている部分がある。少しくらい単価アップしても機能を求めようとする声が出てきた」と商戦を振り返る。

 来入学商戦に向けては人気が定着してきたWリサイクルとともに、ナノテクを駆使した機能商材の提案を進める。

 Wリサイクルは、自社内でリサイクルの仕組みを構築している点が評価されており、「リサイクルの仕組みが認知されてきた。ここにきて再度注目されている」という。同社では再生ポリエステルを使ったテキスタイルの生産だけでなく、使用済みの制服を回収して非衣料製品にする仕組みも構築。回収した制服は楠工場に設置するリサイクルセンターで裁断・反毛工程を通して緑化資材や生活資材、工業資材、建築資材などに再利用される。

 また、ナノテクによる機能素材は昨年の展示会で披露しており、今後も継続して提案を進めていく。商品展開は多彩で、防シワストレッチ素材「ナノアクティブ」、撥水撥油素材「ナノポレット」、抗菌・消臭素材「マルチミラー」、マイナスイオン・血行促進効果が期待される「ヒーリングゼオ」などをそろえている。

東洋紡/「ダウXLA」を提案

 東洋紡は06春の学生服向けにオレフィン系弾性繊維「ダウXLA」を提案する。混率12~14%で、初年度200反の販売を計画。

 志賀泰介生活テキスタイル事業部長は「早急に年間1000反の販売にこぎつけたい」と意気込む。その他、ウオッシャブル性能の高い素材なども引き続き拡販する。

 レギュラースパンデックスでは、耐熱性や脆化などの問題から、高い耐久性が求められる学生服に不向きだった。しかし、ダウXLAは、熱や薬品などに高い耐久性を持つ。

 しかも、比重が0・89と、レギュラースパンデックス(1・2)はもちろん、ポリプロピレン(0・91)よりも軽い。ウールユニフォームグループの真鍋英嗣氏は「今までよりも軽く、動きやすい上着などが作れる」と話す。

 ウオッシャブル素材では「ランドさっと」や「フルフレッシュ」などを提案。ランドさっとはウオッシャブル加工織物で汗などが付着した際、家庭で洗濯可能なイージーケア素材。フルフレッシュはウオッシャブル性能に加え相反する撥水性を兼ね備えた加工素材だ。

 同シーズン向けの販売では、前年比3%(金額ベース)増を目指す。志賀事業部長は「学生服市場も下げ止まる年。前年超えを狙いたい」と話す。現在のところ、販売は昨年並みで推移している。

帝人ファイバー/「ソロテックス」拡販へ

 帝人ファイバーは06春向けにPTT繊維「ソロテックス」使いのカシドスの販売で、前年比5割(数量ベース)増を目指す。ソロテックスはソフトな風合いで、浸色性の良いストレッチ素材だ。

 また、夏物を活性化するため、吸汗速乾素材を主にズボン用途などに提案する。三森啓章ユニフォーム販売部大阪ユニフォーム課担当課長は「アパレルからも夏服の低価格化を避けたい声が聞かれる」と手応えを感じている。

 同シーズン向けの販売では、前年比10%増を目指す。同社の販売は詰襟服向けが中心だが、三森担当課長は「アパレルが詰襟服の見直しを進めていることから、需要も下げ止まる」とみる。現在のところ前年並みで推移している。しかし、出足はアパレルが早期備蓄に慎重となっていることから、出荷がやや遅れていた。三森担当課長は「前年よりも1カ月ほど遅れていたが7月以降回復し、追いついた」と話す。

 また、南通帝人を使った中国縫製対応の販売では、冬向けのカシドス、夏向けのトロピカル素材を扱い、04年は新規販売先の獲得などで03年比倍増となった。しかし、「安定供給を優先し、品種、販売量ともに、むやみに広げない」考えから、今年度の販売は前年並みとなる見通しだ。

サンコーテキスタイル/先染、無地など164点

 サンコーテキスタイル(岐阜県大垣市)は10月に東京、名古屋、大阪で開くスクールユニフォーム展示会で、4つのコーナーを設けて製品33点、素材164点、ニット22点を提案する。

 今回の展示会では「改めてスクール分野向けの当社の姿勢と新素材をアピールする」(富安浩一営業部次長)考え。同社は昨年、カネボウ繊維から事業継承の途上であったこともあり、新規モデルチェンジ校の獲得で苦戦を余儀なくされたものの、今年から失地回復を目指して取引先とのパイプを広げていく。

 初年度の売上高(1~8月の変則決算)は主力のユニフォーム事業が貢献し、当初目標を上回る約36億円の見通しだが、今期は55億円を目指す。

 展示会は「JOIN US」をテーマに出品内容を4コーナーに分けて展示。(1)新タイプの先染柄デザイン、スーツ向け先染柄素材・製品(素材145点)(2)快適性を追求した無地素材・製品(素材19点)(3)新ニット製品(22点)(4)見だしなみに関するセミナーや新アイテムの紹介コーナー――を設ける。

 展示会は東京が10月6、7日(牧村)、名古屋が10月13、14日(名古屋国際センター)、大阪が10月20、21日(牧村本町ビル)。

ユニチカテキスタイル/詰襟用生地5%増目指す

 ユニチカテキスタイルは06春向けに詰襟用生地を拡充する。ポリエステルとウールの混率バリエーションを広げ、従来の定番以外もそろえた。加えて、ストレッチ性やウオッシャブル性、トップ杢使いの高級感、黒の深みなどをアピールする。

 また、撥水、撥油、防汚性能を付与する「ナノ・テックス」加工を提案する。細川勇夫テキスタイル営業部長は「ナノ・テックス加工は機能を目で見て実感してもらえる」と手応えを感じている。ナノ・テックス加工はナノレベルで薬剤と繊維が結合するため、高い洗濯耐久性を持つ。

 同シーズン向けの学生服素材販売で前年比5%(数量ベース)増を目指す。細川部長は「現在のところ微増で推移している。詰襟用生地の充実や周辺商品の強化で達成したい」考えだ。

 展開2シーズン目のシャツ・ブラウスでは、ナノ・テックス加工製品を拡販する。さらに、透け防止素材とナノ・テックス加工の複合などで品番を拡充し、前年比倍増の販売を計画している。商品はカラーや柄物には対応せずに白の無地だけに絞って展開する。