植物原料繊維特集(2)

2005年07月13日 (水曜日)

バナナって何?/食べるだけは能がない

 バナナは、一本の茎に一回しかならず、実がなった茎は伐採され、廃棄されていた。日清紡はその廃棄されていた茎の部分に着目し、世界で初めてバナナ繊維を使った綿の混紡糸の紡績に成功した。

 現在、商品化を進め、バナナ繊維30%・綿70%混生地を中心に展開する。織物でありながら編み地に見えるなど独特な風合いを持ち、綿よりも吸水速乾性が高い。デニム地にすれば見た目以上に軽くなり面白い。綿と同じルーメン構造を形成することから機能加工との組み合わせた商品開発も進める。

 同じバナナの一種である芭蕉を使った素材も商品化されている。クラボウは「草木布」シリーズで、奄美大島の糸芭蕉から繊維を取り出し、綿との混紡素材として展開。またサンランド(大阪府泉南市)でも、実芭蕉の繊維をわた状にし、綿との混紡糸を開発している。

ヘンプって何?/肌触りが良い涼感素材に

 ヘンプとは日本語で分かりやすく言えば“大麻”のことだ。大麻といえば麻薬を想像し、悪いイメージがあるが、古代では衣料によく使われ、“麻”と言えば日本では大麻のことを指すぐらい日本人にとってなじみのある植物だった。

 衣料用繊維では幻覚作用のある葉の部分ではなく、全く関係のない茎の部分を使う。特徴としてはラミーやリネンよりシャリ感があり、肌触りが涼しく、吸湿、吸汗性がある。太くて短い繊維なので、紡績するのが難しく、各社が打ち出す素材は綿との混紡糸が主流だ。

 ダイワボウは「ヘンプル」として、カジュアルウエアやシャツなどに展開。育成の成長力が強く、生産効率も良く、環境に負担を掛けないエコロジー素材として注目を集める。虫害や天候に強いので化学肥料や農薬を必要としないため土壌によく、環境保護の観点からも非常に評価の高い植物だ。

竹繊維って何?/各社、販売に力を入れ出す

 バンブーレーヨンではなく、いわゆる竹そのものの繊維を使った素材を、紡績各社は相次いで商品化し、拡販に力を入れ始めている。今月6日にはユニチカテキスタイルが「藍竹」ブランドとして打ち出すことを発表。織物、ニット生地で初年度約50万メートルの販売量を目指す。

 ユニチカテキスタイル以外に現在、販売に力を注ぐのが日清紡、クラボウ、ダイワボウ(「竹碧」商標)、富士紡(「着る竹工房」商標)で展開。原料のほとんどが中国の孟宗竹で、中国のメーカーがわたの段階まで加工し、そのわたを紡績各社が輸入し紡績する形を取る。クラボウは紡績糸ではないが、徳島工場のある地元、阿南市の孟宗竹を微粉末化し、それを捺染の技術で生地に付与した「竹の衣」を開発した。

 竹は成長力が強く、環境配慮型の商材として有用的だ。自然の抗菌作用や麻に似た風合いがあり、今後、春夏向けの衣料素材として大いに注目されそうだ。

カポックって何?/自然の中空構造を持つ原料

 カポック(パンヤ)はパンヤ科の落葉高木で、東南アジアの熱帯地方に主に分布する。枝は水平に出て輪生し、全体が横木のたくさんついた電信柱のように見えるのが特徴だ。果実は両端がとがった長さ約12センチくらいの長楕円形をしており、熟して乾くと分裂し、中から多量の繊維で覆われた種子を吐き出す。

 このカポックの繊維の特徴は天然の中空構造による軽さと、繊細でソフトといった点だ。しかし、繊維長が短く、捲縮がなく、繊維そのものが軽すぎるなどの理由で紡績が難しい。このため、フトンや枕、クッションなどの詰めわたとして利用されることが多かった。

 その紡績に初めて成功したのがダイワボウだ。綿との混紡素材「カプック」として、カジュアルアウターやシャツ、ボトムなどで展開。また、クラボウのインドネシア紡織・編み立て合弁、クラボウ・マヌンガル・テキスタイルでもカポック素材の商品化を進める。

ケナフって何?/自然に優しい環境配慮素材

 日本人にはあまりなじみのないケナフだが、少しずつ知られるようになってきた。もっとも、人類がケナフを利用する例は古く、6000年前から栽培されていたと言われる。エジプトのミイラを包む布にもケナフが使われていたことが分かっている。

 衣料用繊維よりもむしろ製紙用の原料としての商品化が進む。木材に代替しうる非木材紙の原料として注目を集めるためだ。例えばマクドナルドではハンバーガーを包むラッピングペーパーやボックスの一部にケナフを使用する。

 素材メーカーの中ではクラボウ(商標「KURABO紅麻綿」)やダイワボウが商品化。リビング雑貨やカジュアルウエア、ユニフォーム素材などに提案する。東洋紡もドレスシャツ素材として展開。最近では三澤繊維(大阪府阪南市)がケナフ30%綿混糸の開発に成功した。不織布でもケナフ混素材の開発をするなど商品化を進める。

ほかにもまだまだある!/こんな植物も紡績糸に

 日本の紡績の強みは、まさに“どんなもの”でも紡績してしまうところにあるだろう。シキボウは昨年8月、子会社の新内外綿と、沖縄県、三菱製紙と共同で、沖縄県特産のさとうきび(粟国島産)から繊維を抽出して、これをバイオマス資源として衣料用に活用する技術を開発した。

 その新内外綿ではとくに原料からの差別化を一段と強化。カポックに似た中空構造を持つカミドーリーを「スーピマ」コーマ綿とブレンドした紡績糸を開発し、話題を呼んだ。また、バナナ、パイナップル、ハイビスカスと綿との混紡糸を「トロピカルヤーン」と名付け、ニット展示会では目玉素材の一つとしてアピールした。

 クラボウも「植物楽園」としてシリーズ化。その中の「草木布」シリーズでは月桃をはじめ、竹、ケナフ、イグサ素材などを、「香織布」ではラベンダー素材を展開し、他社にはない独自の開繊技術で様々な植物の素材を豊富に取りそろえる。