有力素材メーカー今入学商況/付加価値傾向で商品開発に光

2005年05月27日 (金曜日)

 「業界全体に付加価値素材を採用しようとする動きが出てきた」。強まる価格志向に頭を悩ませてきた素材メーカーは、業界全体に価値への見直しが見え始めたことを歓迎する。さらに、原反のオーダーが10月以降にずれこむ後半型も、今年は歯止めがかかったようだ。しかし一方で、原料高という新たな不安要素も出てきた。簡単に価格転嫁できない業界だけに、この影響が今後どのように展開するのか予断を許さない状況だ。

日本毛織/高付加価値戦略が奏功

 日本毛織の今商戦は、300校を超えたモデルチェン商戦での新規校獲得が貢献し、前年実績を上回った。ニット関係も分母が小さいながらも健闘した。しかし、羊毛高、ポリエステル原料高の影響で、利益面は苦戦した。

 モデルチェンジや店頭商戦での傾向を分析すると、ここに来て、単価下落傾向に歯止めがかかり、価値への見直しも見られると言う。「当社はこの間、高付加価値戦略を推進してきたが、業界全体にもそういうムードが出てきた」(迫間満スクールユニフォーム部長)と歓迎する。

 同社は入学シーズンの時期に合わせて、「学生服はお祝い品」というイメージを表現したポスターを東京や大阪などの駅構内に掲示。その後は、百貨店や専門店の店頭でも飾られたが、「ポスターの評判は大変良い。業界全体がこういう気持ちになれば自然と付加価値の方向に行くはず」(迫間部長)と期待する。

 来入学商戦に向けては、9月下旬から東西で展示会を開く。全社的にプロモートする「ナノ・ミラクル」をスクール向けにストレッチ加工を施して提案するなど、今年は素材展に特化する。

 また、付加価値戦略を打ち出して成功した専門店の事例も合わせて紹介する。「専門店の方々が自信を持って高機能商品を売るための参考にしてもらいたい」(同)。大阪が9月28、29日に本社で、10月6、7日に東京の紙パルプ会館で開く。

東レ/「T―400」使いを訴求

 東レは今商戦で、主力の詰襟向けが、品番の集約や置き換えを進めるアパレルの企画に多数採用されたこともあり、3月期で2期連続の微増収を果たした。インナーや介護衣料、体操服なども分母が小さいながらも健闘し、増収に貢献した。

 しかし、原料高の影響が今商戦から徐々に出てきた。「染工場のコストも上がり、自助努力で吸収するのが難しくなってきた。来期以降もさらに厳しくなる」(武田一光学生衣料課長)と述べる。

 来商戦に向けては、3GT・ポリエステル複合繊維「T―400」を綿やウールと組み合わせた素材を、ブレザーやニット向けに提案する。

 ストレッチ性や耐洗濯性に優れ、綿やウールの風合いを生かせることが特徴。「主力の詰襟やセーラーなどのシェアを守る一方で、これまで不得意だった毛紡メーカーの牙城にも挑んでいきたい」(武田課長)と力を込める。また、ポリ乳酸繊維や竹素材など、全社を挙げてプロモートしている素材に関しては、学生服業界にも積極的に提案する。

 さらに、「学校の安全」を切り口に、衣料に限らず様々な商品の企画開発を行う。「アパレルからの引き合いは多い。安全機能をしっかり調査して提案したい」と意気込む。

 昨年から全体最適化を図るため、アパレル、商社とインターネットで在庫の状況などを把握できるシステムを導入した。まだ、一部の品番でしか確立できていないが、取引先からの要望があれば、今後拡大していく。

 展示会は今秋に機能製品事業部全体でユニフォーム総合展を開く予定だ。

東亜紡織/環境・快適・健康をテーマに

 東亜紡織はここ数年、「環境・快適・健康」をテーマに、学校の形態の変化に合わせた機能素材の開発や、環境重視のウールリサイクルシステムの構築などを進めてきた。今商戦でもこの一連の取り組みが奏功し、新規モデルチェンジ校の獲得が順調に推移、全体でも前年並みを確保できた。

 久保徹ユニフォーム第一営業部大阪ユニフォーム課長によると、今までなら、新素材を開発してから採用までかなりの時間を費やしていたが、良いものがあればすぐに採用が決まるケースが見られると言う。「入札の価格でも下げ止まり感が出ており、価値への見直しが起こっている」とした上で、「機能性があり、付加価値が高い制服を着用させたいという機運が学校や保護者の間で高まっているのは確か」と証言する。同社でも、定番に近い素材から「ナノ・ペル」「バリ・クール」「まるTIミラ」といった機能素材への置き換えが進んだと言う。

 7月には東西でスクールユニフォーム展を開く。大阪が7月12~14日に東レ・プレゼンテーションルーム、20~22日は東京の中央区立産業会館で開催する。

 今後も川上から川下までの競争はさらに激化するとみるが、一貫して「環境・快適・健康」をコンセプトに、素材開発を進める考えだ。

サンコーテキスタイル/10月に東名阪で展示会

 サンコーテキスタイルは、10月ごろに東京、大阪、名古屋で展示会を開き、来入学商戦以降に向けた新素材を積極的にプロモートする。

 同社はプラスチック物流資材メーカーの三甲(岐阜県瑞穂市)が、昨年の11月にカネボウ繊維の羊毛事業を買収して設立した。今後は毛糸からテキスタイルまで一貫生産できる強みを生かして、付加価値素材の小ロット短納期対応をアピールする方針だ。

 富安浩一次長は「カネボウ繊維から名実ともに生まれ変わったサンコーテキスタイルをアピールしたい」と展示会への抱負を語る。詳細は準備中だが、カネボウ繊維時代の素材に加え、展示会に合わせて開発した新素材を盛り込む予定だ。「これまでは“柄物”というイメージが強かったが、今後は機能性を付与した無地素材も訴求したい」

 今入学商戦は納期対応に追われることなく、スムーズに終了した。富安次長は「信頼回復のための第一歩」としながらも、来入学商戦を「厳しい1年になる」と予想する。そのため、展示会で発表する新素材の販促に力を注ぐ方針だ。

ユニチカテキスタイル/ナノ素材をアピール

 ユニチカテキスタイルは今商戦で製品事業が貢献、主力の原反出荷も横ばいを維持し、トータルで前年実績を上回った。

 原反販売は詰襟やセーラーの定番向けが順調に推移し、学校別注の苦戦をカバーした。オーダーは後半型になってきているが、アパレルとの情報を密にとることで、余裕を持って対応できたという。好調な製品事業はニット、ポロシャツに加え、今春からカッターシャツも手がけている。

 来入学商戦にはナノ素材「ナノ・テックス」を学校別注、定番向けにプロモートする。優れた耐久撥水性と防汚性が好評で、今商戦でも一部の学校で採用されたという。さらに、一昨年から提案している「トップバード」はトップミックスによる深みがある色や、制電性、丸洗いできることなどが評価され、採用は着実に進んでいる。

 今後も独自の素材を販売していく方針で、製品展開にも高付加価値戦略を推進する。

東洋紡/機能素材で存在感を

 東洋紡は来入学商戦に向けて、ウール高混率でも丸洗い可能な「ランドさっと」、ストレッチ性に優れたオレフィン系弾性繊維の「DOW(ダウ)XLA」をアピールする。

 「ランドさっと」は形態安定性に優れ、洗濯後の収縮、毛羽立ちを防ぐ。「DOW XLA」は従来のスパンデックスとは違う伸縮性、耐久性が特長で、自然な風合いを表現することができる。「今後も他社にない独自素材を提案して、存在感を発揮したい」(ユニフォーム部ウールユニフォームグループ・真鍋英嗣氏)。

 今商戦は新規獲得校が目標数に達し、前年並みを維持できた。「少子化の中で横ばいを確保できたことはまずまず健闘したと言える」(同)。ウオッシャブルと撥水の相反する機能を兼ね備えた「フルフレッシュ」、軽量ストレッチ「テクタス」が今年も堅調に推移した。

 また、昨年からオフィスウエア担当のテキスタイルデザイナーが学生服も兼務することになった。「アパレルの要望に合わせた素材を具現化できる」(同)と新戦力に期待する。