竹繊維に首ったけ(下)戦略的な展開進める竹レーヨン

2005年03月25日 (金曜日)

 竹そのものの繊維の流行が04年だとすると、バンブーレーヨンの流行は一足早かった。03年7月に野村産業(愛知県一宮市)が竹を原料にしたセルロースレーヨン繊維を含む糸と、その糸を用いた布帛(織・編み物)の国内製造特許を取得。同社と東レ、クラボウ、日本毛織の4社が、12月にバンブーレーヨン素材の品質を保証する「竹マーク」を新たに設定したことで一気にバンブーレーヨンの知名度が高まった。

 バンブーレーヨンの特徴は、竹本来の抗菌防臭性や吸放湿性、独特の触感(接触冷感)、風合いなど。野村産業は「バンブール」、東レは「爽竹」、クラボウは「凛竹」、日本毛織は「ニッケ・バンブール」商標で、全品目で販売する。また、東亜紡織の「竹子」は横編み用途に、中央毛織はワーキングユニフォーム向けに限り販売が可能だ。

 当初、どこの原産の竹を使うかは各社バラバラだったが、東レが中国生産するレーヨンわたを一括して輸入。それぞれの特徴を生かして紡績糸生産の原料供給も始めるなど、連携した戦略を進める。

 バンブーレーヨンの複合素材の開発も進んできた。野村産業はトリアセテート交撚糸とウール・ポリエステル混紡糸との交織を来春夏向けに発売。紳士服向けでは前シーズン、ジャケットのみの展開であったが、スーツにもアイテムを拡充。婦人服向けにも綿、麻、ウール混など、バリエーションが豊富だ。

 東レの爽竹も今秋冬向けから竹レーヨン長繊維タイプを投入。ポリエステル、ナイロン複合織・編み物「爽竹フィルーナ」では初年度1万5000疋の販売量を目指す。長繊維の場合、艶やかさ、ドレープ性など短繊維とは違った風合いがあり、婦人向けに拡販する。

 クラボウでも芯部分に防縮ウール、鞘に竹レーヨンを配した「凛竹ルナファ」や、綿と竹レーヨン混紡の中空糸「凛竹スピンエアー」、竹レーヨン混のコンピュータースラブで表情をつけた「凛竹ウェイビー・マジック」など複合素材の開発を進め、モリリンと共同販売体制を敷く。綿紡タイプではタオル、靴下、セーター、寝装品などアイテムが徐々に広がる。また梳毛タイプでは婦人服向けに竹レーヨン100%やウール交織のベア天竺を投入し、ジャケット、ボトムに拡販。綿と梳毛の両方の設備を持つことから様々な展開ができることが同社の強みだ。

 日本毛織のニッケ・バンブールは紳士スーツからカジュアルジャケット、婦人スーツ、寝装品、カーペット、帽子まで事業横断プロジェクトとして展開。羊毛と竹レーヨンというエコロジー素材を用いることで、ニッケ・バンブールを「超・天然」というコンセプトで提案した。そのエコロジー性が評価され、「愛・地球博」では公式アテンダントユニフォームに採用され、男女約400人が着用する。

 原料は同じ“竹”でも、レーヨンでは「竹マーク」を制定し連携した戦略を、もう一方の竹そのものの繊維では各社競合の様相を見せる。竹そのものの繊維の場合、各社連携していないだけに、価格競争に陥る危険性が懸念される。しかし、逆に考えれば、価格競争になることで、消費者に竹の繊維がなじみのある存在になる可能性もある。これからも繊維業界にとって“竹”には目が離せない。