エコプロダクツ04に見る/繊維業界の“エコ最前線”

2004年12月13日 (月曜日)

多面的なアプローチで

 地球環境の保全・改善に向けた取り組みは、CSR(企業の社会的責任)の一環として、事業収益の拡大とともに重要な経営課題だ。日本最大級の環境総合展示会「エコプロダクツ」に出展した約20の繊維企業各社は、リサイクルシステム・製品、生産工程における水処理・省エネ技術、自然原料・生分解繊維の拡充、省エネ貢献型製品――など、様々な環境対応をアピールした。

多様な環境対応をアピール

 クラボウや旭化成せんい、竹マーク推進事務局は、自然原料を全面的に打ち出した。食品の産地偽装問題などの影響で、天然繊維への関心も原産地や原料の生産背景まで深まってきている。

 旭化成せんいは「ベンベルグ」の原料がコットンリンターで、未利用繊維使用としてエコマーク認定もされていることを強調。一般的には化繊という誤った認識が強く、大半の来場者は驚いていた。誕生から73年が経ち、あらためてエコ素材としての認知度を高めていく。

 野村産業、東レ、日本毛織、クラボウで構成する竹マーク推進事務局は、小物雑貨から秋冬衣料まで一通り市場展開したのを機に、竹を原料とした素材・製品の良さをアピールしている。

 クラボウではケナフや沖縄の月桃などの天然素材、それらと再生ペット繊維を組み合わせた「グリーンペット」が関心を集めた。来場したある教師は、ケナフを育て紙にする授業をしているが、衣料への活用を興味深く見ていたという。

 日本化学繊維協会は化学繊維の利点をアピールした。衣料や家庭用品など1人当たりの繊維消費量は年間約8・4キロで、全世界では約5300トン必要だ。そのうち3200トンを化学繊維が供給し、天然繊維と共に支えている状況を解説し、原料の石油を最小限に抑えリサイクルしていること、水質浄化への活用なども紹介した。

 リサイクルシステムでは、東レが「エコドリーム」、帝人が「完全循環型リサイクル」を提案した。エコドリームはマテリアル、ケミカル、サーマル――のリサクル方式を効率的に組み合わせたもの。帝人は従来の“ボトルtoボトル”“繊維to繊維”に加え、来年2月に立ち上げる“ポリカーボネートtoポリカーボネート”を新たに紹介した。

 学生服製造卸のテイコクの「トンボリサイクルシステム」は再生ペット繊維の学生服をはじめ、使用済みの制服を玄関マットやスリッパの中敷きに再利用するなど、多段階でリサイクルを進めている。

 製品面では消費者に浸透してきた再生ペット繊維をはじめ、自然素材、省エネ貢献型製品が数多く開発されている。池内タオルは風力発電を用いた「風で織るタオル」の新商品「タオル・オリガミ」を来年2月に発売する。タオルと輪ゴムだけで何度も手作りを楽しめるクマのぬいぐるみができる。オーガニックコットンのタオルと特注のシリコン製ゴムで環境にも肌にもやさしく、タオルに戻して洗濯でき清潔を保てる。

 グンゼが今春発売した「エコマジック」は、水洗いで汚れが落ちる肌着。すすぐ過程が省け節水にもなる。ミズノの涼感素材「クールマックス」、発熱素材「ブレスサーモ」は、運動時に動きやすく快適なうえ、素材自体の涼感・発熱機能により冷暖房節約に役立つ。

 各社の環境対応は進展しているが課題も残る。その1つが最終製品の価格だ。消費者の関心は年々高まっているとはいえ、自分の懐を痛めても環境配慮型商品を買う人はまだ少ない。業界に関わる私たちが一消費者として意識を高めるとともに、「タオル・オリガミ」のように“エコ+α”の仕掛けが重要になるだろう。