ナノってなんて素敵ナノ~繊維業界のナノテクは今~(3)

2004年10月14日 (木曜日)

各社が競うナノテク素材

 各社のナノテクを応用した繊維はどんなものがあるだろうか。直径が500~1000ミリ以下の繊維「ナノファイバー」から見てみよう。

 東レは02年、単糸140万本からなるナイロン・ナノファイバー(44T)の開発に成功。数十ナノメートルの均一な繊維径を持つことから、表面積が従来ナイロンの1000倍であるため、従来ナイロンに比べ2~3倍の吸湿性(綿と同等)を持ち、湿潤状態で特異な粘着性も発現する。

 「ナノ構造」としてはクラレの高発色性涼感繊維「ソフィスタ」がある。ソフィスタは、ポリエステルとエチレン=ビニルアルコール樹脂(EVOH)の二層構造だが、実は両者の相性は悪い。少しの衝撃でも剥離する。しかし、芯部のポリエステルを菊のようなギザギザにし、EVOHとの接触面を増やすことで、問題点も解決した。

 帝人ファイバーの光発色繊維「モルフォテックス」もポリエステルとナイロンを61層に重ねることで、自然発色を実現した。

 三菱レイヨンテキスタイルは、アクリルとジアセテートのポリマーを溶かした2種類の溶剤をブレンドして紡糸した「AHF」を01年に開発。アクリル繊維の中にアセテートがランダムに分散する形での紡糸は、「ナノコンポジット」の技術と言える。

 繊維の表面をコーティングするなどの「ナノ加工」は、合繊メーカーだけでなく、紡績、染色加工メーカーでも一般的だ。東洋紡の形態安定加工「ナノプルーフ」、カネボウ繊維の保湿美肌効果を期待した加工「ナノデュウ」、ユニチカグループの「ナノペル」「ナノケア」などのナノ・テックス社の加工。ナノ加工の分類に加えられるものは数え上げればきりがない。

 日清紡の「エージー・フレッシュ」は銀粒子を微粒子化。繊維上に固着材を使用せず、繊維そのものに浸透させることで、洗濯耐久性も持たせ、風合いの劣化を抑える。これなどは「ナノ粒子」の利用ということになる。また、ナノオーダー皮膜を生地の肌側面(内側)に形成させることで、汗を生地の表面に瞬時に移動させて乾燥する吸汗速乾を付与した加工「さらっとコンポ」(帝人ファイバー)も、ナノ粒子を活用したものだ。