ジーンズ市場の動向を探る

2004年07月15日 (木曜日)

デザインにワンポイント/レディースの次世代ブランド

 次世代向けジーンズがインポート人気を継続させている。ブランド名を挙げると「セブン」や「AG」「ペーパーデニム」といったところだ。もちろん該当ブランドは数多く「ジョーズジーンズ」もそうだろう。

 減速気味の先行ブランドに比べるといずれも元気だ。最近では、ストレッチ性やスタイリッシュ系だけでなく、デザインにポイントを置いたタイプに注目が集まっている。この点が次世代ジーンズの特徴でもある。

 ステッチやベルトループにちょっとしたデザインポイントを付けたカイタック・インターナショナルの「ヤヌーク」は最近、百貨店で人気が高まっている。バイヤーの受けも良い。やはりデザイン性が受け、売り場をけん引していくものと見られる。

 次世代タイプのジーンズの多くはインポートジーンズの独壇場だったが、進化を続ける国産NBからも受けの良い商品が次々に登場してきている。

 このようにジーンズをファッションとして着こなすことに億劫(おっくう)さを見せない次世代層に向けた新しいジーンズの提案の一つにオフィスでもはけるタイプの登場がある。

 文字通り「オンタイムジーンズ」の名で商品を発売するタカヤ商事。帝人ワオは動きやすいカッティングの“Vカットヨーク”を採用した、機能性とファッション性を加味させたジーンズの着用場の広がりに期待する。「スーパーローライズながら、はいた時に後ろから抱き包まれているような着用感」は、オンタイムでも十分着用可能なシルエットになろう。

 いくら人気ブランドのジーンズでも、1年売り場に置けば勢力図は変わる。セレクトショップも消費者動向に敏感になってきたとも言われている。次世代ジーンズに認知されるには、まずはステッチ形状よりも魅力あるワンポイントデザインの有無ということになろうか。

国産NBの新ラインが健闘/関西百貨店のジーンズ

 レディースジーンズ市場をけん引してきたインポートに代わって国産NB(ナショナル・ブランド)が健闘中だ。NB健闘は“美脚”系など、一連のスタイリッシュジーンズの活躍が目立つ。関西の百貨店の中でも活気のあるジーンズ売り場を持つ阪神、阪急、大丸神戸店各店の5~6月にかけての動きは――。

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 大丸神戸店の「パーツオンパーツ」は売り上げの伸びが続いていた輸入ジーンズに代わって国産NBが前年同月比2ケタの増収だった。

 ブランドの数が増えた輸入物は、消費が分散してブランドの売り上げの伸び幅が縮小気味。「シマロン」「アールジーン」などが落ち込んだ一方で「セブン」や「AG」といった“次世代”の輸入ジーンズは2ケタ増。輸入ジーンズは平均で12%の増だったが国産NBは20%も増えた。

 中でも40%増だった「ブラッパーズ」は新美脚に続く「新美尻ジーンズ」がヒットしているため。売り場バイヤーは「商品のバージョンアップが奏功」とみる。このほか新ラインの加工ジーンズはいずれも良かった。

 阪急百貨店の「ジーニストスター」も売り上げ幅の大きかったインポートが減速。一方で国産NBが健闘中。中でもリーバイスのゴールド(2万5000円)が好調で予想以上の本数が売れた。

 さらに、これまであまり扱わなかった穴空きや破れ感をデザインにした“クラッシュジーンズ”タイプが人気上昇中で、美脚系とともにけん引中だ。

 阪神百貨店の「ジーンズハウス」は、インポートの苦戦や昨年同時期に売れた後染めカラーパンツが伸び悩んだことから前年同月比で若干の減。国産はストレッチ混のミセス向けが予想外に伸びた。「ミセスジーナ」などがその筆頭。

 シルエットではローライズ・フレアタイプのスタイリッシュ系新バージョンが引き続き好調だ。夏に向けてヒップ周りのきれいさをアピールしたタイプに期待がかかっている。

 ただ、各売り場の担当バイヤーの共通した声は、「一連のスタイリッシュ系ジーンズの消費が一巡したことで伸び幅がやや減少しているが、新タイプのジーンズが次々と登場しているため売り場MDが組みやすくなった」とのことだ。

豊島東京本社東京三部/市場起点対応を一段と強化

 豊島東京本社東京三部の今春夏物推移は、デニムとカットソーおよび分野別でレディースが貢献し、増収増益と好調な動きを示した。三部の分野別構成比はレディース7割、メンズ2割、キッズ1割となっている。

 三部が主軸に展開するデニムアイテムは市場全般に浸透し、レディースファッションブランドにおいてもそのカテゴリーが明確になってきた。ここにきてコンスタントに反応が出ており、継続性のある安定した収益源に成長している。ただその内容は市場性とともにデザイナーの感性を大いに反映し、いわゆる定番がない。また加工バリエーションへのニーズが多彩で、シーズンごとの新鮮さが求められるという。

 今シーズンの場合は、加工の多様化が一段と加速。ダメージ、ペイント、ヒゲ、ツギハギ、パッチワーク、スワロフスキー、ラインストーン、ステッチワーク、異素材使い、リベットやボタンのワイドタイプ――など、ありとあらゆるタイプが出そろった。またデニム採用のカテゴリーも広がり、雑貨・グッズ、さらにはマタニティゾーンでも売れている。

 ここにきてSCモールへの集客力が高まるなど、販売チャネルの多様化が進み、加工・機能などあらゆる面で独自性を強固に打ち出さないと差別化が図れない状況だ。そのため「取り組み相手への提案・プレゼンテーションの前までに、様々な情報収集・分析などによって今後の動向予測を先んじて発信していくことが、これまで以上に重要になってきた」と高塚俊英部長は指摘する。

 「(SPAなどは)売れた、売れないの反応が早く、それに即応することが大事。そのため個々がスキルアップし、市場動向に対する修正をいかに素早く行えるか」が勝負となる。三部の今後の方針として「顧客にさらに近付く。まだまだ作り手と売り手の目線に差がある。それはハンディだ。従来の作り手は作ったら終わりだったが、今は最終的に商品が売れてレジをたたくまで意識しなければならない」と語っている。

大手ジーンズチェーン/販売員資格制度に成果

 ジーンズカジュアル専門店チェーンの大手3社は、パートタイマーの販売力向上を目的にした「資格制

度」を導入している。一般に全社販売戦力の7~8割を占めるパートタイマーの有効活用は、ジーンズショップにとって絶対命題だ。とりわけ「うんちく」アイテムであり、最近は加工・デザインが多様化しているジーンズというアイテムでは、商品説明に専門性も必要とされることから、各社とも「顧客との接点」に磨きをかけ始めた。「百貨店の販売員に比べれば、まだまだレベルは低い」(マックハウス)にせよ、導入の成果も確実に表れている。

 先駆けてジーンズアドバイザー制度を導入したマックハウスの動機は、販売員たちが持つ待遇に対する不満を解消することで、やる気を起こさせることだったと言う。ジーンズが好きで販売職に就いた点では、販売社員もパートも同じ。ところが、パートであるというだけで、同じように働いても評価されない。

 こうしたパートに現場業務の権限を与えると、「認められている」という満足感がやる気につながる。ライトオンのエリアマネージャーは、ファッションアドバイザーの研修生を推薦する際、「販売実績とやる気を優先している」と話す。従って同社の制度には試験がない。

 ボトムスマイスター制度を導入したジーンズメイトでは、成績を個人ではなく店舗ごとに評価しており、「同じ店舗内の他者への影響力、リーダーシップ、コミュニケーション能力を重視している」と語る。マイスター昇格の2次試験(面接)では、この点が試される。

 「やる気」が向上することで、数字面にも成果が現れている。マックハウスでは「SCへの出店が増え、女性が買いやすい売り場が整備されてきた」こともあるが、レディースボトムスの売り上げが、導入以来連続して2ケタ増を続けている。「女性が8割を占めるJAの力」とする。

 ライトオンでは、同一商品で行った販売コンテストの売り上げが、導入後には3倍に伸びた。ジーンズメイトでもコンテストの販売本数が、予算の3倍に達した。また「マイスター」が4人いる店舗は、過去数カ月、連続して売り上げナンバーワンになっていると言う。

 マックハウスでは、制度の違いはあっても大手3社が導入したことで、「業界基準化するにおいを感じる」とも話す。NBメーカーを中心に「川上寄りのメーカーが(販売コンテストへの協賛などで)関与してきている」ため。これも制度導入の好ましい効果だ。