ハイテク繊維/PEN繊維 タイヤ用途で需要増
2004年07月05日 (月曜日)
PEN(ポリエチレンナフタレート)繊維をご存知だろうか。帝人が世界に先駆けて開発、工業化に成功した高性能ポリエステル繊維である。
繊維よりも、樹脂やシート、フィルムなどが有名で、帝人グループでは帝人化成がPEN樹脂を、帝人デュポンフィルムがPENフィルムを生産販売するが、ここに来て産業資材用途向けにPEN繊維への引き合いが強まっていると言う。
PENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエステルの一種。
PET(ポリエチレンテレフタレート)と同じ製造法からなるが、PEN樹脂の特徴は(1)透明性が良い(2)耐熱性に優れる(3)ガスバリヤー性に優れる(4)耐薬品性に優れる(5)臭いの吸着が少ない(6)紫外線遮へい性に優れる――など。
この特徴を生かし、カールスバーグ社とノルウェーのビール協会が採用したプラスチック・リターナブルボトルには帝人化成のPEN樹脂が使用され、給食用食器などでも採用が進む。
フィルムでは高密度・長尺磁気テープや写真用APSフィルム、およびコンデンサー、モーター、トランス、などの電気電子材料、光学関連用途などに幅広く使用されている。
そして、樹脂やフィルムに比べ拡大のスピードが遅れていたPEN繊維が今、脚光を浴び始めた。
国内でPEN繊維を製造販売するのは帝人テクノプロダクツ(TTP)のみ。海外では米ハネウェル、メキシコのコーサがあると言う。
TTPによると、PEN繊維は工業用ポリエステルに比べ、高強力、高モジュラスで、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性に優れるのが特徴。
主に、タイヤ、トランスミッションベルト、高圧ゴムホースなどゴム補強材などに使われている。
TTP社長である唐澤佳長帝人グループ専務CMO兼産業繊維事業グループ長は「とくに、タイヤメーカーが関心を示しており、3年以内に年2000トン、最終的には工業用ポリエステルの約10%、同5000~6000トンに拡大したい」とPEN繊維の事業拡大に意欲を示す。
同社はパラ系アラミド繊維、工業用ポリエステル繊維を持っており、その中間に位置する繊維の一つがPEN繊維。
また、PENにとどまらず、ナノテクノロジーによる新ポリマーの開発も進め、PEN繊維とパラ系アラミド繊維の中間も埋める意向。「これにより、全方位展開が可能になる」とする。