個性光る原糸群(42)「ソフィスタ」(クラレ)

2004年06月03日 (木曜日)

 エチレン=ビニルアルコール樹脂(EVOH)は、ポリビニルアルコールの特徴である優れたガスバリア性と、ポリエチレンの熱溶融成形性と合わせ持つ結晶性ポリマーだ。そのEVOHを世界で初めて繊維として商品化したのがクラレだ。最初、芯にポリエステル、鞘にEVOHを用いた原糸が「エグゼ」だった。

 ところが、大きな欠点があった。耐熱性が弱いため、高温染色ができなかった。もちろん、できないこともなかったが、できるようにするためには、手間と時間が余りにも掛かりすぎた。

 97年に試行錯誤の末、ようやく耐熱処理も可能なEVOH専用の薬剤を開発。その薬剤によって、反応処理に8時間も掛けていたものが、ほとんどなくなった。さらに生地でしかできなかった処理が、糸そのものからでも可能になった。その“ニュー”エグゼとも呼べる素材を新たに「ソフィスタ」と名付けた。

 実はポリエステルとEVOHは仲が悪い。衝撃でお互いが剥離し易い。しかし、芯部のポリエステルを菊のようなギザギザにすることでEVOHとの接触面を増やし、問題点も解決した。

 ソフィスタは、熱伝導率が高いため、接触冷感に優れる。また、合繊でありながら親水基を持つため吸水速乾性もある。同社がソフィスタを“アクアテックファイバー”と呼ぶゆえんは、そこにある。現在、素材面もポリエステル以外のものを使った“新ソフィスタ”の開発も進めている。

基本データ

素材:エチレン=ビニルアルコール繊維(EVOH)、ポリエステル

展開番手:芯鞘タイプ(E45%・EVOH55%)35D, 75D, 100D, 150D、分割糸タイプ(E67%・EVOH33%)50D, 75D

用途:スポーツ衣料、インナー、靴下など

備考:EVOH樹脂はガスバリア性に優れ、食品の酸化劣化を防ぐ機能性樹脂として食品包装材料などにも需要は多い。