住生活スタイル・カーペット編/03~04 各社の動向を見る
2004年04月14日 (水曜日)
中間価格帯に照準/オーノ
オーノは製品の大部分を多くの販売先を想定したオープン製品としている。03年秋冬向けにも4アイテムを投入したが、内容的には汎用性の高い製品が中心となった。結果的に差別化商材を求める販売現場で扱いにくい商材となってしまった。営業部の中谷徹次長は「クセのない商品企画を意識しすぎた感がある。価格的に見ても、二極化が進む売り場では良くも悪くも中途半端なポジションになってしまった」と分析する。
とくに03年の秋は平均気温の高さと消費の冷え込みから厳しい商況となり、現在も継続しているという。
ただし、店頭ルート以外のOEM生産は昨年対比で見ると同水準で推移しているほか、通販ルートも店頭ルートほどの落ち込みは見られず健闘しているという。また、同社が進める新入学シーズンに合わせた学生向け企画は昨年比で20%増の売り上げと好調な動きだ。
04年は、抗菌、消臭、涼感加工の3つの機能を持つピースラグを展開するほか。耐水ラグなど機能面での打ち出しを継続する。中谷次長は「消費者のモノを見る目は確か。プラスアルファの機能や製品の見せ方を引き続き開発し、価格に反映しながら打ち出していく」と方針を示した。
トリプルフレッシュ前面に/スミノエ
スミノエ・MD本部MD企画部の石田孝清取締役は「カーペットの市場規模はNIF(インテリアファブリックス協会)統計を見る限り縮小傾向にあることは間違いない」と話す。原因は単価デフレと輸入品の増加にあるという。
しかし、同社の帖もの、丸巻きピースは好調な推移だという。前面押し出した超消臭加工「トリプルフレッシュ」製品で、売り場の「面」を取る方法が奏効しているという。
石田取締役は「ホームセンターやGMSでは、まず製品を並べる必要がある」と話し、さらに「トリプルフレッシュ」加工製品を全体の6~7割に拡大したことも寄与したと話す。
現在の市場では、いまだに低価格訴求の動きもあるものの、趣味志向に合わせた動きもでてきている。それに対応した中・高級品の開発を進めている。今後は綿100%の帖ものや、敏感肌に対応した後加工なども積極的に打ち出していくとしている。
ラグについては柄を楽しむ傾向が大きいことから、インテリア商材的な年間商品として展開していく。現在、6月の展示会に向け、新企画を検討中だという。
高級品志向に応える/吉田房
吉田房・敷物営業部の東本秀雄部長は「市場や問屋からの意見をフィードバックした高品質な製品作りを進める」と話す。
昨年11月は平均気温の高さからくる買い控えの影響で「店頭でモノがう動かない。一月分がごっそり抜けた」(東本部長)といえるほどの厳しい業況だった。とくにホットカーペット絡みのラグの動きが悪く、感性商品ではない季節商品的な扱いをされていることが分かったという。
しかし04年に入ってからは、1月の段階から、店頭で早めの春物展開が始まり、この動きがよく、徐々に回復傾向にある。
現在は綿混フィラメント糸使いのタフト製品の動きが良いとしており、機能面でも静音加工や防ダニ加工など「わかりやすい」機能が市場で受け入れられ、徐々に市場にも活気が出てきたという。この活気を盛夏もの展開の季節にまでいかに引っ張るかがポイントになる。
その先の04年秋冬に向けては引き続き「感触のよさ」を前面に押し出した製品提案を行う。
クレームの対象となりやすい「毛抜け」を解決したアクリル100%の獣毛調のカーペットなどで感性面を追求するほか、そのほかの素材では三菱パイレンのPP繊維、東洋紡の「銀世界」加工などの製品を企画中だ。
そのほか、人間の自然治癒力を強化する全く新しい加工を採用した製品企画の提案を開始する予定だ。
感性面打ち出し強める/インビスタジャパン
コントラクト用途のタイルカーペットでも柄物の需要が増えてきている。
同社が供給する「アントロンルーミナ」糸は全60色で展開しており、さらにそれらを混紡することでの多色展開が可能となっている。
ナイロン66の特徴である強じんな耐磨耗性やポリマー段階から持つ防汚性能などコントラクトルートで求められる性能も高い。
インテリア繊維部長の多々清爾氏は「コントラクト用途でも、柄物の採用は増えている。一度柄物にすると使い続けるケースも多い。カーペットメーカーも買い替えの際に柄物はすすめやすく、今後の買い替え需要に期待できる」と話す。
家庭用向けにもナイロン66素材の「タクテス」の供給を開始、04年5月からカーペットメーカー3社での採用が決まった。ムートン調の生地表現が可能で、今後、家庭用でのタイルカーペットの使用を増加させる有望素材として期待されている。
多様化対応へ体制作り/三菱レイヨン
三菱レイヨンのアクリル繊維部の別所荘一部長は「国内のカーペット生産に向けた03年11月のアクリル供給量は前年比で大きく減少し、3月まで停滞傾向が続いている」と現況を語る。
現在、獣毛タイプのラグの流行により、アクリル使いの敷物では売場を輸入マイヤー生地使いのラグが大勢を占め、今シーズンのアクリル使い製品の国内生産が抑制されているのではと見る。
同時にそのような輸入マイヤー使いのラグが、国内生産の技術的なアドバンテージが生かせるタフト製品が店頭に並ぶのを阻害していると指摘する。
別所部長は今後、国内産地には原綿の段階から海外製品との差別化を意識した供給が必要になるとし、商品需要の振興のためにもアクリルと他素材の複合提案のほか、産地での後加工などの差別化に対応できる体制作りをすすめるという。また機能付加についても抗菌防臭や制電など、衣料や毛布で培った技術をカーペットにも積極的に投入していく方針だ。
現在、同社で製造しているアクリルの投入先は海外8、国内2の割合。
別所部長は「カーペットは国内産地の中でまだ勢いがある産業。国内のケーススタディが海外輸出に役立つ場面も多々ある。国内への供給をまだまだ重要視している」と国内産地の印象を語った。
オレフィン系樹脂使用をアピール/泉州敷物
泉州敷物はオレフィン系樹脂を使ったタイルカーペット「ファミリエ」を継継続展開する。
現在、ヨーロッパ圏では劣化や不要となってからの処理の面から塩ビのバッキングを使用したタイルカーペットは少なくなっている。営業統括の大石國博取締役は、「マーケットに対して、タイルカーペットには塩ビバッキング使いとオレフィン樹脂使いが存在することをアピールする必要がある」と話す。とくに家庭での使用に絞り込んだ軽量さや防音効果、保温性など、オレフィン樹脂の本来の能力を前面に押し出す必要があるという。
現在のラインナップは発売当時のままの12色展開だが、まず、オレフィン樹脂使いであることが市場で確実に認知され、一定の販売量を確保することが重要だという。
大石取締役は「タイルカーペットのような床材は間違いなく『目的買い』の商品。その需要が喚起されたときにモノだけでなく、どれだけの情報を吸収してもらえるかが大事。価格だけでなく、その「モノ」を作るにあたって、どれだけ考え、こだわったかを明確にアピールする必要がある」と独自性強調の重要さを示した。
今後の販路展開については店頭だけでなく、ウイークリーマンションの管理者向けなどにも広げていく方針だ。