デュポン帝人と東レ・デュポンが供給プリント配線基盤で花火

1999年06月14日 (月曜日)

 帝人とデュポンがパラ系アラミドペーパーでも手を握った。メタ系アラミドペーパーの単独事業化をあきらめ、デュポンと手を組んだ帝人だが、先行していたパラ系アラミドペーパーを、メタ系の合弁会社「デュポン帝人アドバンスドペーパー」に加えた。これで両社の関係も五分五分との見方もできる。ただ、微妙な存在なのが東レ・デュポンだ。パラ系アラミド繊維「ケブラー」を国内で生産販売する同社はデュポン社にペーパーの原料となるチョップドファイバーを供給していただけに、今後の展開はどうなるのか。周辺事情を探ってみた。

 今月二日、帝人とデュポンは九四年に設立したメタ系アラミドペーパーの合弁会社「デュポン帝人アドバンスドペーパー」で、プリント配線基盤用のパラ系アラミドペーパーの生産販売を加えると発表した。三日から事業を始めている。抄紙生産についてはメタ系ペーパーで実績のある三島製紙が有力だが、今のところは決定していないという。

 帝人の「テクノーラ」にとって、プリント配線基盤用ペーパーは最重点用途だ。この数年、「テクノーラ」の事業拡大を支えてきた。九六年からスタートした松下電器の多層基盤技術「ALIVH」の材料として採用されたことによるもので、同基盤は携帯電話などに使用されている。

 一方、東レ・デュポンでも帝人には遅れをとったものの、硫酸の除去という問題をクリアし、ペーパーの原料となるチョップドファイバーの展開を始めていた。詳細は明らかにしないが「一定の規模となっていた」と言う。「テクノーラ」ぺーパー同様、プリント配線基盤を主力としていたようだが、デュポン社との絡みで単独でのペーパー事業はあきらめ、デュポン社に原料供給だけを行っていた。

 その東レ・デュポンも、今回の帝人とデュポンの提携には驚いたのではないだろうか。東レ・デュポンがデュポン社に販売していたものはデュポン帝人アドバンスドペーパーに引き継ぐ模様だが、将来、「ケブラー」を「テクノーラ」に代えていくことはあるのだろうか。

 これについて、帝人の長島徹機能ファイバー事業本部長は「デュポン帝人アドバンスドペーパーにとって『テクノーラ』も『ケブラー』も原料のひとつ。プリント配線基盤は技術革新が進んでおり、それに合った素材を供給していかねばならない。ひとつの素材にこだわるのではなく、ベストクオリティーのものを追求していくべき」と語る。

 むしろ、原料面ではフレキシブルに対応する方針で、場合によっては「ケブラー」と「テクノーラ」の組み合わせや他のスーパー繊維を使うことも将来、あり得るかもしれない。

 また、基本的には東レ・デュポンも帝人も既存の製紙メーカーに販売することもできるという。

 東レ・デュポンも多少戸惑いは隠せないものの、デュポンと帝人の提携が「パラ系アラミドペーパーの需要増につながれば」と意外に好意的だ。

 松下電器では「ALIVH」をグローバルスタンダード化したい意向で、技術供与も行っているが、既存のガラス繊維使いに比べ数%の規模しかないパラ系アラミドペーパー。デュポンと帝人が手を組み、そこに東レ・デュポンが交わることで、パラ系アラミドペーパーが大型市場に育つことを期待したい。