回顧/合繊
2003年12月24日 (水曜日)
「選択と集中」で改善
03年は合繊大手の方向性が今まで以上に明確になった1年と言える。各社が進めてきた「選択と集中」がより進展したからであり、実際にその成果も挙げている。
03年度上期の繊維連結業績を見ても、カネボウを除き各社とも実質増益を果たした。不採算品の縮小、得意分野や独自性ある素材への集中の効果が表われた。
「選択と集中」に伴い不採算事業からの撤退、縮小も加速した。旭化成(現・旭化成せんい)は3月にアクリル繊維から撤収、年末には帝人デュポンナイロンがナイロン長繊維、カネボウ合繊がアクリル繊維から撤退する。これにより、国内のアクリル繊維メーカーはモダクリルを含め7社から5社に、日産能力は約3割減、ナイロン繊維メーカーは6社から5社となり、能力は15%減となった。その他、クラレは3月末でポリエステル短繊維能力を半減させている。
旭化成はアクリル繊維で業界第2位、帝人デュポンナイロンはナイロン繊維で第3位の規模。クラレのポリエステル短繊維はカーペット用では最大シェアを占めていた。これはたとえ、大手でも赤字が続くようなら撤退するのだと言うことを表している。
「選択と集中」は汎用繊維であるポリエステルの用途でも行われている。最も顕著な例は東洋紡である。タイヤコード、シートベルトなどの産業資材用への傾斜と衣料用の縮小を徹底しており、すでに年産5万トンの内4万トンが産業資材用。これをさらに拡大する方針を示す。
産資、不織布への傾斜
産業資材用途の強化は「選択と集中」が進む中で合繊メーカーに唯一共通する。帝人は4月から持株会社化に完全移行するとともに、中計「WING2003」をスタートしたが、その中で産業繊維を重点戦略事業と位置付ける。積極的な資源投入も行っており、7月には蘭テイジントワロンのパラ系アラミド繊維能力を約6割増の1万8500トンに増強した。
ユニチカは「トップシェア、シェア優位事業の維持拡大」を中計「飛躍05」の課題とするが、その事業の一つがポリエステルスパンボンド、綿100%スパンレースという不織布である。合繊子会社のユニチカファイバーでも産業資材の拡大に取り組む。
今上期、大幅な収益改善を果たし、繊維事業の強さを見せつけた東レでも産業資材は重点事業。フッ素繊維、PPS繊維、PAN系炭素繊維全てが世界トップにあり「先端材料の東レ」を標榜する。
こうした動きは合繊メーカーにとって産業資材や不織布が裏方から表舞台、そして主役へと変りつつあることを物語る。衣料用繊維は中国などに凌駕されたが、産業資材用繊維は日本の技術的な優位性が確立できるとの見通しもあるからだ。
中国対応の布石も相次ぐ
その繊維超大国、中国への布石も活発であった。クラレは11月から面ファスナーの加工会社「可楽麗魔術粘扣帯(上海)」を稼働したが、04年以降の投資案件も数多く発表された。旭化成せんいは来春、スパンデックス生産の杭州旭化成 龍を倍増設、東レは来年1月から東麗合成繊維(南通)でチップスタートの差別化ポリエステル長繊維、05年からナイロン長繊維、06年からはバッチ重合のポリエステル長繊維などの生産を明らかにした。帝人ファイバーは子会社である帝人加工糸を帝人南通への進出を発表、三菱レイヨンのアクリル繊維も来年第2四半期には立ち上がる予定だ。