バンブーレーヨン素材キャンペーン/脚光浴びるバンブーレーヨン素材

2003年12月22日 (月曜日)

 竹(バンブー)を原料とするレーヨン短繊維と、それを用いたテキスタイルが、話題の素材として脚光を浴びている。12月3~5日に開かれたジャパン・クリエーション(JC)では、テレビや新聞など一般マスコミも大きく紹介し、関心の高さを示した。バンブーレーヨン素材の特色と各社の取り組みを見る。

天然の機能性とエコロジー/わたは中国・インドから

 バンブーレーヨン繊維の原料である竹はイネ科の多年生植物で、熱帯から温帯にかけて分布。竹取物語を持ち出すまでもなく、竹は古来われわれに馴染みの深い植物だ。

 竹の繊維を物理的に取り出して使用することは、これまでにも行われてきた。今注目されているのは、竹を原料として、セルロースを化学的に抽出し、ビスコース法で繊維に再生する再生セルロース繊維、いわゆるバンブーレーヨンだ。竹を用いることによる独自の技術的な問題はあっても、製造法自体は木材パルプを使ったレーヨン繊維と基本的には同じだ。

 このバンブーレーヨンは、(1)機能性(2)触感・風合い(3)エコロジー性――などの点で従来の素材にはない特色を持つ。

 (1)機能性▽優れた抗菌防臭性=かつて、おにぎりや肉を竹の皮で包んでいたように、竹の持つ食物保存作用は、経験的に知られていた。これは、竹自体が優れた抗菌防臭性を持っていることを示すものだ▽高い吸放湿性=バンブーレーヨンは異型断面で、さらに細長い中空を持つ。このため水分を素早く吸い取り、速やかに吐き出す。その吸放湿性は綿の2倍と言われている▽高いマイナスイオン発生性。

 (2)触感・風合い▽接触冷感=熱伝導性が高いため接触冷感特性を持ち、さわやかな触感を発現▽ソフトな風合いと適度なハリ▽深く透明な色合い。

 (3)エコロジー性=竹は成長が早いため、短周期で再生産が可能だ。このため、森林の伐採抑制につながり、自然に優しい繊維として注目されている。竹は伸長期に1日1メートル以上も成長。一度伐採すると数十年間は再利用ができない木に比べ、2~3年の短サイクルで竹は成長を繰り返す。このため、伐採しても自然環境のバランスにほとんど影響がなく、計画的に育林すれば無尽蔵に得られる天然エコロジー素材と言える。

 半面、テキスタイルにした場合、「しわになる」「縮みやすい」「引き裂き強力に劣る」などの弱点もバンブーレーヨンは持つ。このため、他繊維との複合や独自の糸・織物設計による弱点の克服などを、テキスタイルメーカーは行っている。

 このバンブーレーヨンを生産しているのは、世界の主要竹産地であるインドと中国。肉の薄い日本の竹とは異なる、極めて肉厚の竹を用いてレーヨンを製造している。日本のバンブーレーヨン・テキスタイルメーカーは、インドあるいは中国からわたを輸入して使用している。竹の種類によって性質が異なるなど未知な部分の多い素材であるだけに、現地のレーヨンメーカーにまかせきるのではなく、原綿生産の品質管理や品質向上が大きな課題となっている。

主要4社で住み分け/多様なテキスタイル展開

 日本でバンブーレーヨンによるテキスタイルを本格的に展開しているのは野村産業、東レ、クラボウ、日本毛織の4社。これ以外に、トーア紡コーポレーションと中央毛織が部分的に展開している。

 インドのバンブーレーヨンを使用したテキスタイル展開で先行していたウールテキスタイルメーカーの野村産業(愛知県一宮市)は、竹を原料にしたセルロースレーヨン繊維を含む糸と、その糸を用いた布帛(織・編み物)の国内製造特許を今年7月4日付で取得した。同特許のカバー範囲は広く、それに抵触しないでバンブーレーヨンの糸、テキスタイル、製品を日本国内で展開することは実質的に不可能となった。海外品の持ち込みも、もちろんできない。

 東レ、クラボウ、日本毛織は全品目についての特許実施権を野村産業から得てこの事業を展開。トーア紡は横編み、中央毛織はワーキング・ユニフォームに限り特許実施権を取得している。

 野村産業は「バンブール」の商標で、バンブーレーヨンを使った織物を生産・販売している。ジャケット用途を中心にし、他素材との複合はもとより、100%バンブーレーヨンにも挑戦している。日本毛織は、ウールテキスタイル事業を通じて昔から野村産業とは付き合いが深かった。同社は、野村産業の「バンブール」商標を借用して「ニッケ・バンブール」として、ウール・バンブーレーヨン複合織物を扱う。

 東レは、中国産のバンブーレーヨンに自社の各種合繊を組み合わせて、バンブーレーヨンの素材特性を生かすとともに、その弱点を補う。「爽竹(そうたけ)」のブランドで、海外を含む全面的な展開を進める。

 クラボウも中国産のバンブーレーヨンを使用。同社綿合繊事業部は「凛竹(りんたけ)」の商標で、羊毛事業部は「紫竹(むらさきたけ)」の商標で商品化を行っている。

 もちろん、商品や販売の領域が画然と分かれるわけはない。一部では競合しながらも、基本的には生産品種による住み分けを目指す。同時に、粗悪品によるイメージの低下を恐れ、統一的な品質維持に動いている。

「竹マーク」を展開/品質保証の認定規格設定

 野村産業、東レ、クラボウ、日本毛織の4社は、バンブーレーヨン素材の品質を保証する「竹マーク」を新たに設定し、「竹マーク推進事務局」を設立した。同素材の品質を維持するとともに、品質の伴わない素材を使用した製品の流通を防止・排除するのがその狙いだ。

 竹の本来持つ機能性やエコロジー、新しい感覚などから、バンブーレーヨン素材は熱い注目を浴びている。それだけに、粗悪品によって消費者の信頼を失うことは、これからの成長にとって大きな打撃となる。その事態を避け、バンブーレーヨン素材の市場への定着、拡大を進めるため厳格な品質基準を設けた。4社は、今回の「竹マーク」の設定により、「竹マーク」素材とそれ以外の素材との差別化を図るとともに、これらの素材の排除を目指すと言う。さらに、その品質を保ち、消費者に信頼される良質の素材を供給することで、消費者の保護に努めることを表明している。

 4社は、バンブーレーヨン素材の品質規格の設定と認定、品質の維持・向上およびマークの実務運営を円滑に行うため「竹マーク事務局」を設立。その代表は野村産業の野村弘社長だが、実務は東レが担当する。共同展示会の開催などを含む今後の販売促進活動についても、推進事務局で検討する。

 「竹マーク」は、4社が定めた厳しい規格に合格した素材にのみ表示可能だ。今後、アパレル・流通から小売りまで、製品添付ラベル、製品貼付用シール、店頭POPなどで「竹マーク」を表示することにより、業界関係者から一般消費者にまで広く訴求する。

 「竹マーク」は、(1)高品質な竹繊維を使用していること(2)厳しい品質管理のもとに生産された素材であること――を保証するマーク。「竹繊維素材の品質を保ち、品質の伴わない素材を使用した製品の流通を防止し、消費者に信頼される高品質な素材を供給することで消費者の保護に努める」ことを目的とする。その認定規格は、4社が定めた次の3点を満たした糸と生地だ。それは、(1)野村産業によって特許実施権を許諾されたメーカーによって生産されていること(2)品質表示におけるレーヨンのすべてが、認可された竹の種類・産地・製造工程や場所などを満たすバンブーレーヨンであること(3)4社がそれぞれに定める、厳しい品質管理基準に合格していること。さらに、バンブーレーヨンを20%以上使用しているものであることにも、4社は合意している。

 「竹マーク」を使用できるのは、これら4社と、部分的に特許実施権を許諾されている中央毛織とトーア紡の、認定規格を満たす素材だけだ。

 使用しているバンブーレーヨン短繊維は、野村産業がインド産、東レとクラボウがそれぞれ別の中国産。日本毛織は野村産業ルートによるインド産を主体に東レ、クラボウルートによる中国産のわたも使用している。東レとクラボウは中国へ調査団を送って検討した結果、中国産を近く一本化する見込みだ。

野村産業「バンブール」/素材メーカーと協働

 野村産業は愛知県一宮市に本社・工場を持つウールテキスタイルメーカーだ。同社は、竹を原料にしたセルロースレーヨン繊維を含む糸と、その糸を用いた布帛(織・編み物)の国内製造特許を今年7月4日付で取得した(特許取得第3448526号)。

 野村産業は従来、毛紡績糸を紡績から購入し、織るという形態をとっていた。しかし、バンブーレーヨン繊維については、自分のリスクでインドから購入し、梳毛紡績に賃紡させた上で、自社で織物に織っている。色々な試行錯誤の上で同社は技術を確立し、99年10月12日に特許を出願、01年4月24日の公開を経て、今年7月4日の取得となった。

 同社は現在、東レ、クラボウ、日本毛織に全品目の特許実施権を許諾し、トーア紡に横編みのみ、中央毛織にはユニフォームのみに限定した特許実施権を許諾している。野村弘社長は「自社でなにもかもできるものではない」と語り、東レなど大手企業が採り上げたことで同素材への世間の関心が一気に高まったことを高く評価している。同社長は素材メーカーとの協働が進んだことで、「毛織物メーカーが発想できない靴下や寝装寝具などの用途が広がった」と語り、情報交換、共同販促を通じて市場認知度を高め、バンブーレーヨン素材の市場を拡大したいとしている。

 野村産業自体は、バンブーレーヨン素材を「バンブール」の商標で展開している。販売は織物のみで、糸売りしない。その主な用途はメンズおよびレディースジャケットなど。スーツやレディースにも拡大する。素材はバンブーレーヨン100%物から化合繊、天然繊維との混紡、交織物(いずれもバンブーレーヨンの混率は20%以上)など多彩。草木染めによるバンブーレーヨン100%の先染め織物なども開発している。毛番手で15、28番手が主力だ。

 今年(暦年)の「バンブール」加工反販売は3000~4000反。04年には、2割増に当たる4000~5000反の販売を見込む。特許実施権を許諾している素材メーカーとコラボレーションを強め、同繊維を市場に浸透させることで、天然繊維の一角を占める素材として育成する。

クラボウ「凛竹」「紫竹」/日本人の感性にアピール

 「涼しさをイメージする人もいるだろうし、りりしさ、清潔さを感じる人もいるだろう」。日本人は“竹”という言葉に、特有のイメージを持つ。クラボウの綿合繊、羊毛の両事業部は、バンブーレーヨン繊維そのものの特徴に加え、“竹”というキーワードが消費者に与える“ひらめき”をテコに、市場開拓を進める方針だ。

 綿合繊事業部は、バンブーレーヨン使いの紡績糸をモリリンと共同開発し、「凛竹(りんたけ)」商標で販売している。デビュー戦となった03春夏商戦への投入量は、280コリだった。これが、04春夏商戦で550~820コリへ一気に拡大すると見込む。

 「凛竹」に使われるレーヨン繊維は、中国四川省の慈竹、雑甲竹を原料に作られたもの。これをクラボウの紡績工場の一つ、丸亀工場(香川県丸亀市)で糸にする。「凛竹」には、バンブーレーヨン100%糸と、バンブーレーヨン50%・綿50%混糸がある。それぞれについて20単、30単、40単糸をそろえた。現在のところ、糸売りが中心だ。モリリンを通じてセーター、靴下、外衣、下着など様々な用途へ販売している。

 羊毛事業も、「紫竹(むらさきたけ)」商標で、バンブーレーヨン使いの紡績糸を商品化した。改めて言うまでもないが、綿合繊事業部の「凛竹」が綿紡機製なのに対し、こちらは梳毛紡機製。羊毛繊維の染色加工から、紡績、織布、そして織物の染色整理加工までをこなす羊毛織物の一貫生産工場、津工場(三重県津市)が生産している。

 「紫竹」にとって

は、04春夏商戦がデビュー戦となる。これに備えて津工場は、バンブーレーヨン100%(毛番手60

単)、バンブーレーヨン70%・「エコウォッシュ」羊毛30%混(同72単)、バンブーレーヨン60%・リネン20%・ラミー20%混(同48単)、バンブーレーヨン45%・羊毛55%混(同48単)など多様な糸種をそろえた。これらを使った織物や編み地を商品化、デビュー戦で3000反の販売を見込む。横編み用途への糸売りも行う。

東レ「爽竹」/環境と機能を狙う

 東レは、バンブーレーヨン短繊維を使った複合素材「爽竹(そうたけ)」を04春夏物から本格展開し、同秋冬物にも拡大する。

 「爽竹」は、ポリエステルを中心とする、東レの多様な合繊と中国製バンブーレーヨン繊維とを組み合わせた複合素材だ。バンブーレーヨン(混率20%以上)と合繊との優性結合によって、竹本来の抗菌防臭・吸放湿性・マイナスイオン発生・接触冷感などの効果を発揮しながらも、バンブーレーヨンの持つ物性上の弱点を合繊でカバーした。同社は、中国のバンブーレーヨン工場に技術者を張り付けて、バンブーレーヨンの品質改良と品質管理に当たっている。

 50%「アルフィックス」(芯鞘構造のフルダルポリエステルわた)/50%バンブーレーヨンをはじめとする、50%ポリエステル・50%バンブーレーヨンが「爽竹」の主力となる。1・5Dのバンブーレーヨン短繊維を使い、20~40番手までの糸によって、東レはテキスタイル展開している。その用途は、婦人・紳士外衣、スポーツウエア、和装、下着、靴下、布団わたなど多岐にわたる。

 「爽竹」の主な販売形態はテキスタイル。価格混乱を避けるため、糸売りは一部のアクリル混のみに限る。

 04年春夏の販売計画は、織物1万9000疋、編み物6000疋の計1万5000疋(1疋は50メートル)。同社は、ベターゾーンを主力にトップダウン方式で市場を構築する。04春夏物の主な販売先は▽スポーツでゴールドウイン▽アウトドアでモンベル▽スーツで三陽商会、オンワード樫山、青山商事▽ニットでプーマ、ゴールドウイン▽ゴルフパンツでエミネント、フェニックス、マスターズ▽カジュアルパンツ・ジャケットで瀧定▽寝装で大阪西川▽タオルで池内タオルと七福タオル(豊島経由でオペレーション)。タオルはロフトで全面展開する。また、フェニックスにはマフラータオルも入っている。これら以外に、様々な婦人物へ東レは「爽竹」を展開している。

 「爽竹」の主な最終需要期は春夏だが、東レは年間素材としての「爽竹」の定着を目指す。同社は、カシミヤ調の超極細アクリル短繊維「オルピア」やウール、PPS繊維「HOW」、中空ナイロン「サンブロン」などとバンブーレーヨンを組み合わせ、「爽竹」の特性に暖かさも加え、秋冬用に対応している。

日本毛織「ニッケ・バンブール」/超エコロジーを強調

 「自然が育む羊毛と、わずか2、3年で成長する竹。生分解性もある両素材を使って、超エコロジー素材を作った」。上質な羊毛とバンブーレーヨンの混紡素材を「ニッケ・バンブール」商標で提案する日本毛織は、そう強調する。

 「ニッケ・バンブール」を同社は、04春夏向けにテスト販売し、04秋冬向けから本格展開に入る。対象市場は、紳士服、婦人服、ビジネスユニフォーム、寝装、インテリアと幅広い。各分野で中高級品ゾーンの素材として提案し、年間約3億円の売上高を狙う。販売価格は織物で1メートル当たり1500~2000円程度だ。

 紳士服市場へは、百貨店アパレル、大型専門店の春夏スース、10マンススーツ、ジャケット、カジュアルシャツ素材として提案。とくに春夏スースの分野では、小売店頭のイチ押し商品になるように育てたいと意気込む。04秋冬向け素材を、10月の内見会で披露した。05春夏スーツ向けには、バンブーレーヨンの混率が30%以上の60単(毛番手、以下同じ)、72単を主に使って、幅広い商品をそろえる。

 婦人服向けには、ミセス、フレッシャーズ、カジュアル分野を対象に、ブラウス素材を含む織物と編み地を提案する。中心素材は、バンブーレーヨン40%混の72単糸使い。対象ブランド別に別注混率への対応も行う。代表的婦人服地については、来春の「プルミエール・ヴィジョン」展にも出品する予定だ。

 備蓄カタログメーカー向けを中心とするオフィスユニフォーム素材としては、機能性、物性面への配慮から、バンブーレーヨン、羊毛、ポリエステルの3者混(バンブーレーヨンの混率は20%以上)使いが主力。ユニバーサルデザイン向け、衛生介護向けでは、抗菌、消臭機能を強調するためにバンブーレーヨンの混率が高い素材も開発する。

 インテリア寝装関連では、バンブーレーヨン・綿混糸(バンブーレーヨンの混率は33%と50%)をパイル素材としたタオルケットを、01年春夏から展開している。加えて、抗菌消臭性を強調した毛布やシーツ、バンブーレーヨンと羊毛の混紡交織素材によるラグカーペットの商品化も予定している。