学校制服 問題分析 底なし“少子化”の行方

1999年05月24日 (月曜日)

 学生服市場は生徒数が減少し、さらに「お下がり」などによる買い控えが強まる厳しい環境にある。そのような中で、今年の入学商戦を検証しながら、制服モデルチェンジの動向や来年に向けた学生服業界の取り組みをまとめた。本特集号では学生服業界の99年入学商戦の結果と、来入学商戦に向けた取り組みを素材メーカー、商社、アパレルの各段階にわたって取材した。

《昨年の出生数は120万人》

 厚生省が昨年末にまとめた「人口動態統計の年間推計」によると、98年に生まれた赤ちゃんは前年比1万4千人増の120万6千人となった。2年ぶりに120万人台に回復した。出生数が120万人を割ったのは、93年(約118万8千人)と95年(約118万7千人)と97年(119万2千人)の3回。また、人口1千人当たりで単純計算した出生率は9.6人となり、過去最低だった97年の9.5人からわずかに増えた。しかし、同省では依然、少子化傾向は続いているとみている。一方、文部省による学校基本調査による幼稚園から高校までの在学者数は、すべての学校段階で減少している。別表は「平成9年度学校基本調査」であるが、平成10年5月1日現在の「平成10年度学校基本調査速報」によると、小学校の児童数は766万4千人(前年度比19万2千人減)で、17年連続減少し過去最低となった。また、中学校の生徒数は438万1千人(同10万1千人減)で、12年連続減少し過去最低。高校の生徒数は425万9千人(同11万3千人減)で、9年連続減少。このうち平成6年度から設置された総合学科の生徒数は4万3千人で前年度比1万6千人増加した。幼稚園の園児数は178万6千人(同3千人減)で、10年連続減少した。このうち3歳児の園児数は37万1千人で5年連続増加し過去最高となった。また、大学の学生数は266万7千人(同3万4千人増)で、16年連続増加し過去最高となった。このうち女子学生数は93万1千人で、前年度より3万1千人増加し過去最高。その占める比率も34.9%で前年度より0.8ポイント上昇し、過去最高となった。

《不登校、中退増える》

 文部省の学校基本調査によると、97年度1年間の長期欠席者(30日以上の欠席者)数は、小学校が8万1千人(前年度比3千人増)、中学校が14万2千人(同1万2千人増)の合計22万3千人となり、4年連続増加し過去最高となった。このうち、病気やけが、経済的事情などを除いた「学校嫌い」を理由とした欠席は、小学生が前年度より1千人多い2万1千人、中学生が同1万人多い8万4千人の合計10万5千人となり、初めて10万人を超えた。不登校児童・生徒の数は、統計方法を変更した91年度以降、6年連続増加し過去最高。とくにここ数年は伸び率も増加。96年度には小中学生合わせて前年度比15.5%増と過去最高の伸び。97年度は同11.7%増と下がったが、依然2ケタ台の高い伸びを示している。不登校児童・生徒の割合は、小学生が0.26%(同0.02ポイント増)、中学生が1.89%(同0.24ポイント増)で、それぞれ6年連続増加し過去最高。とくに中学での増加ぶりが目立ち、2クラスに1人は不登校の生徒がいる計算になる。また、「学校嫌い」で50日以上欠席した小学生は1万6千人、中学生は7万1千人の計8万7千人で過去最高を更新している。一方、全国の公私立高校を中退した生徒数は、97年度が約11万1千500人となった。文部省によると、前年度より約500人減ったものの、生徒数の減少で高校全体に占める割合(中退率)は2.6%と、統計を取り始めた82年度以降で最高となった。中退者数は全日制・普通科が5万9千人(中退率1.9%)、同・専門学科が3万6千人(同3.3%)、同・総合学科が700人(同2.6%)、定時制が1万5千人(同14.9%)。普通科と総合学科では中退率がそれぞれ0.1ポイント、0.3ポイント上昇した。公私立別では公立が7万3千人、私立が3万8千人。中退率はそれぞれ2.4%、2.9%で、前年度より0.1ポイントずつ上昇した。中退した学年は1年生が全体の半数を占め、中退率は4.2%。1クラスで2人近くが入学後1年たたずに学校をやめた計算になる。中退率は学年が進につれて低くなっている。

[トレンド分析 99年入学商戦の結果は?]

 今年の中学、高校の制服モデルチェンジ校は昨年より46校少ない234校となった。学生服素材最大手の日本毛織の調べによると、今年の高校の制服モデルチェンジ校は前年より33校減の154校、中学が13校減の80校となり、合計で46校減の234校となった。また、ペットボトルによる再生ポリエステルを使用したリサイクル学生服の採用は、昨年が5校だったが今年は26校に増えた。内訳は中学20校、高校6校であった。今年の学生服商戦を回顧する。

《モデルチェンジ減る》

 日本毛織の松村博昭取締役ユニフォーム第一部長によると、今年の制服のモデルチェンジは消費不況が業界を色濃く包んだことに加え、金融機関の貸し渋りによる信用不安などで伸び悩んだとしている。とくにアパレル段階では信用不安を背景に作り込みが浅かった。また、小売店、代理店からの発注も極めて慎重だったことから、結果的には合格発表後の3月に追加オーダーが集中。アパレル段階に大きな混乱をきたしたとしている。さらに今年は地域振興券の影響で制服の購入そのものが大きく遅れた。また、学校段階では私学の経営対策として、男子校と女子校で共学化に踏み切るところが増えてきたため、学校間で男女のバランスの狂いが目立ったとしている。学校制服のモデルチェンジは、DC制服の提案が本格化したころから増え始め、90年で初めて300校台を記録。92年で414校のピークを迎え、その後も96年まで300校台で推移してきた。しかし、97年から300校を下回り、200校台で推移している。松村部長は「制服のモデルチェンジは全体的に落ち着いてきている」として、来年の制服更新については「これだけ景気が悪いので今年と同じ程度の200~250校ぐらい」とみている。

《代理店の在庫圧縮響く》

 今入学商戦は代理店の極端な在庫圧縮が進み追加オーダーが3月に入ってから集中したため入学式直前まで小口の追加対応に追われたのが特徴である。さらに今年は地域振興券で制服を購入するケースも目立ち、それが例年に比べて購入を遅らせ、代理店のオーダーの遅れにもつながったとみられる。地域振興券の発給は遅いところでは香川県などが4月1日からで、それだけ制服の購入も入学式に引き付けられた形になった。郡部など地方ほど振興券で制服を購入するケースが多くみられ、さらに、今年は制服の「お下がり」やリユースも昨年以上に増えたと言われている。それだけに流通段階では確定したオーダーが出しにくく、大幅な遅れにつながった。一方で今入学期は全国的に制服のモデルチェンジ校が、昨年に比べて大きく減少した。日本毛織の調べでは前年に比べて、全国で46校減少したわけで、その分だけ1~3月の生産スペースも昨年より空いていたのが実情である。また、ある大手学生服メーカーのある部長が「受注した総量は昨年に比べて増えていないが、代理店からの発注書は昨年の何倍にも増えている」と言うほど追加生産の小口化が進んだ。最大手の尾崎商事は「代理店が猛烈に在庫を絞り込み、しかもそれが非常に小口のオーダーとなって、3月に集中した」(田邊荘平常務)と語る。この流通段階の在庫圧縮は金融機関の貸し渋りが背景にあるが、代理店が極端に在庫を抑えたことから、そのしわ寄せが学生服メーカーに集中し、小口生産の混乱を招いた。同社の場合、昨年8月から地域密着路線として本社と販売会社の関係を大きく洗い直したことも影響しているが、とくに3月に入ってから定番品の受注量が昨年の倍となり、しかもそれが非常に小口化したという。また、最終の追加オーダーは5枚、7枚という1ケタ台の注文が多く、今年の1回当たりのオーダーは昨年に比べて半減。それだけに「生産をしているより生産の段取り替えに時間が掛かるほどロットが小さくなった」と話す。また、小郷産業でも「1~3月の追加生産の時期に、今年は追加注文の出てくるのが遅れたことから、3月に集中。これまでにない混乱が生じた」(山下利勝取締役部長)と話す。しかし、逆に今年はトラブルが少なかったとするところもある。明石被服興業では昨年が追加生産に追われ、かなり混乱したことから、CAD/CAMなどを増設。「今年は定番品の注文が1、2月に控えられ、3月に集中したものの、昨年に比べて総じてトラブルは少なかった」(河合秀文常務)と話す。テイコクでも昨年は入学生数の見込み違いからかなり混乱が生じた。しかし今年は「小ロットの追加生産に追われたが昨年のような混乱はなかった」(川上謙治マーケテイング部長)と言う。ただ、オーダーの小口化で裁断がネックになったとしている。このように今入学商戦の状況はメーカーによって受け止め方に差はあるが、共通している点は流通段階の在庫の絞り込みに加えて、オーダーが非常に小ロット化したことだ。学生服業界は生徒数こそ毎年減っているが比較的数字がはっきり読める安定した業界である。しかし、今年は流通段階で大きく在庫が絞り込まれ、限られた納期に小口発注が頻発したためとなると、メーカー内部では対応しきれない問題が噴き出したとい