燃料電池イオン交換膜を開発/東洋紡 低湿度で作動可能に

2003年06月11日 (水曜日)

 東洋紡は、固体高分子形燃料電池に使用される低湿度下でも作動可能なイオン伝導性ポリマーとして、高耐熱型炭化水素系ポリマー「SPNポリマー」の技術開発に成功した。

 現在実用化されているフッ素ポリマー系イオン交換膜は、作動条件が温度80度以下・相対湿度80%以上に制約されている。これに対して「SPNポリマー」は、温度80度・相対湿度10~20%の低湿度下でも実用性のある出力特性が得られると言う。同ポリマーは、温度80度・相対湿度80%の条件ではフッ素系ポリマーの1・7倍、温度80度・相対湿度15%の低湿度条件では1・3倍の出力特性を持つ。

 さらに、高分子材料の中で最も優れた耐熱性と強度特性を持ったPBO(ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール)の微多孔支持フィルムと「SPNポリマー」を複合化したナノコンポジットイオン交換膜の開発も、東洋紡は進めている。これは、PBOに強度や弾性率などの機械特性、イオン伝導ポリマーにイオン伝導性をそれぞれ独立に与えて、イオン交換膜全体としての性能向上を図るもの。100度以上の高温下でも使用可能なイオン交換膜の実現を目指す。これにより、周辺の温度・湿度調整システムを含めた大幅なコスト低減が見込める。東洋紡は、とくに成長の期待される燃料電池自動車への売り込みを図っている。

 2010年の市場規模は数千億円。更に20年には、燃料電池自動車2兆円、家庭用コージェネレーター2000億円、モバイル機器4000億円に達する見込み。