ITを活かす/伊藤忠 軌道に乗るネット事業

2002年10月24日 (木曜日)

 伊藤忠商事が展開するインターネット事業「マガシーク」と「T―セレクト」が早くも成長路線に乗りつつある。雑誌社と提携して掲載されたアパレル製品を販売する「マガシーク」は、商品調達と販売のネットワークが確立され、3年目の事業ながら月間8000万円規模のビジネスにふくれ上がっている。今期目標の6億円は軽々クリアし、3年後には30億円という目標を持つ。一方のデザインオーディション形式のTシャツ販売サイト「T―セレクト」も、低単価商材を扱いながら、夏場は月間1000万円を射程に入れている。どちらもネット販売としては大成功の事例といっていい。両事業の担当者に現状と展望を聞いた。

マガシーク MAGAseek.com/50社100ブランドで月商8000万

<マガシーク開発リーダー・井上直也氏>

 スタートは2000年8月。女性の消費者が「ファッション雑誌で見たものを買えるシステム」という単純明快なコンセプトで、当然のニーズに応えたのが好調の理由だろう。上代も店頭と同じだ。

 iモードの公式サイトとしてスタートし、いまでは2500以上ある公式サイトの中で20代女性の人気サイト2位にランクされている。アクセス数は月間495万PV。Webと合わせ810万PVを誇る(今年9月)。

 提携雑誌はキャンキャン、オッジ、マフィン、エフ、ノンノなど10誌。扱うブランドはサンエーインターナショナル、フランドル、トゥモローランドなど、百貨店ブランドを中心に50社100ブランド。ファッション雑誌には巻末近くに「(掲載)協力社&アイテムリスト」があるが、マガシークで取り扱うものには☆印が付いている。商品調達と配送フローは別表の通り。中2日で消費者に届く。

 サイトでは商品画像とともに商品説明も表示する。当初は雑誌を見たことを前提にコメントは載せていなかったが、「マガシーク」へのダイレクトアクセスに配慮してコメントを加えたところ、売り上げが飛躍的にアップした。常時扱う品番数は1000~1500あり、サイト掲載用の画像をデジカメで月に約1000枚撮影しなければならないのが、井上氏の苦労の1つである。

 OL、主婦が主要客層で、購入単価は高い。売れ筋はデニム。セブン、ディーゼル、アールジーン、シマロン、AG、ラッキーブランドダンガリーズなど人気ブランドが並ぶ。アパレルブランドでは、ナチュラルビューティーベーシック、セオリーが人気だ。

 人気商品は1アイテムで300~500枚が売れることもある。従って欠品も悩みの種。10月の販売額は8000万円に達する見込みだが「在庫切れがなければ軽く1億はいっている」と井上氏は言う。受注販売比率は現状3割。

 アパレルメーカーは商品を納めさえすればいい。出版社は「マガシークが使える」というセールストークが広告収入に寄与している。誰もが満足する非の打ち所がない事業だ。中国展開も構想中という。

T―セレクト yahoo.t-select.com/異業種の才能をアパレルに

<レディスアパレル第2課・田中宏樹氏>

 今年6月3日にオープンしたばかりのサイト。ヤフージャパンと連携し「インターネットの双方向性を生かした物販ビジネスモデルの確立」を目指した。デザインオーディション形式の採用で、消費者がデザイナーにも審査員にも購買者にもなる、消費者主導型ファッションビジネスになった。

 デザイナーが応募したTシャツデザインを選考し、選出したデザインは毎週更新でサイトにアップされ、掲載期間中に受注数が30以上に達すると生産化され、購入できる仕組みだ。

 ヤフーだけでなくWebコンテンツ制作のカヤックと提携して企画運営を任せ、登録デザイナーの充実を図ってデジタルデザインのデザイン・エクスチェンジや、ジャパン・デザイン・ネットを運営する丹青社とサイト連携するなど、コラボレーションを活用したビジネスモデルでもある。来月からはWebクリエーター養成学校のWAO!(ワオ)がカリキュラムにデザイン応募を取り入れる。現在行っている「ポパイ&オリーブ・ファッションデザインコンテスト」にも、パーグラムマーケット、神戸ファッションマートが協賛する。

 7、8月の売り上げは400~500万円。Tシャツオークションのスタートプライスは2900円であり、ネット販売では成功といえる規模。来夏には月間1000万円を目指す。

 事業を統括するレディスアパレル第2課の田中宏樹氏は、立ち上げ後5カ月の弱の感触について「思ったよりデザイナーの意欲が高く、作品発表の場を欲しているのが分かる」「応募作品はギャグやパロディが多く、Webで見て分かりやすい柄が売れる」と話す。

 「アートと絡めているので、アパレル以外のデザイナーが参加できるのが特徴」だ。今後の抱負は「息の長い事業に。駆け出しのデザイナー、クリエーターの掘り起こしも目的。Tシャツサイトは多いが、ナンバー1サイトにしたい」。

 当面はユーザー登録数を現在の5000から1万に、デザイナー登録数を1500から3000にと倍増させるのが目標。Tシャツ以外にもパーカー、トレーナーを扱う。多アイテム化を進める計画で、ジーンズのカスタマイズも考えている。