地球環境に優しい企画・素材メーカーからの提案/クラボウ、クラレ、サンランド、シキボウ
2002年10月15日 (火曜日)
クラボウ/反毛綿使いの衣料素材、リサイクルとは言わない
クラボウの綿合繊事業部は昨年4月から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称=NEDO)の助成を受けて、綿混糸使いの中古衣料をワタ状にほぐす(反毛)技術、そしてほぐしたワタを使って紡績糸を作る技術や、固めて建材を作る技術の開発を進めてきた。
従来の反毛機を使うと、繊維長が損傷によりさらに短くなり、再度紡績することが難しい。このため、開繊機と反毛機の独立化を図り、かつ布帛を裁断せずにこの工程に投入する方式を確立した。この反毛綿を使って今、面白い試みを行っている。 “リサイクル”を売り物にしようとするのではなく、反毛綿を使うが故の、糸、生地の表情の面白さを追求しようというのだ。そしてそれを、普通の糸、生地同様、顧客の感性に訴える方針だという。 “リサイクル”という売り文句は敢えてうたわない。すでに試作品が、いくつか完成している。
一方、日本繊維機械学会が昨年5月に発足させた繊維リサイクル技術研究会に入会し、会員と共に「繊維屑で家が建つか」という興味深いテーマにも挑戦し始めた。クラボウは、反毛綿や落綿を利用してボードを作り、壁材や床材への利用の可能性を検討している。このボードの試作品は、「ニューアース2002地球環境技術展」(10月16~19日にインテックス大阪で開催)や、「北陸技術交流テクノフェア2002」(10月24~25日に福井産業会館で開催)でも、同研究会を通じて展示される。
クラレ「プラスターチ」/どこでもやれないPLA
「どこでも作れる生分解繊維はやらない」。クラレが目指すPLA(ポリ乳酸)による生分解性繊維「プラスターチ」の戦略だ。
同社の生分解性ポリマーはPLAだけではない。PVA「ポバール」、溶融可能なPVA「エクセバール」も生分解性を有する。この3種類の生分解性ポリマーを持つ特徴を生かしてハイブリッド、複合化に重点を置く。
ポバールによる繊維はビニロンだ。これと「プラスターチ」を交織した植生マットが群馬県桐生市において産官学一体で開発され、実地施工を行っている。分解性の遅いビニロンと早い「プラスターチ」を組み合わせることで、木本類が成長する次期には「プラスターチ」は分解し、織物の目開きが容易となるため、高木が育つように設計されている。
もうひとつは「エクセバール」とPLAを複合化したもの。11層に積層状に複合紡糸し生地にした後、熱水処理すると、「エクセバール」が溶解し、0・33Tの偏平糸が生まれる。つまり、ワイピング性能に優れた生分解性生地になる。排水は活性汚泥処理できるので、ポリエステル/ナイロン割繊糸のようなアルカリ減量加工不要のため、製造工程でも環境対応型になる。
こうした「PLAハイブリッドですき間を狙う」と言う「プラスターチ」は昨年度販売量が数十トン、これを3ケタ台に乗せるのが今年度の目標だ。
サンランド/生活・環境繊維糸、最終製品見据え商品開発
サンランド(五味義文社長)のエコオルゴールは、紡績業界でエコマーク認定第1号となった商品だ。
資源の有効利用を目的に、未利用繊維(落綿など)70%を独自の方法でバージンコットン30%とブレンドした綿100%糸で、完成製品には同社のオリジナルタグを付けることができる。現在、月産3トンのペースで生産。カーテンやレッグニット、タオルの分野の固定客に販売している。
同社の売上構成は、合繊メーカーからのアクリル混紡糸の賃紡が9割で、手張りによる糸売りは1割。メーカー賃紡が減少する中で、糸売りビジネスの強化、構築が課題の1つとなっている。
糸作りでは、常に最終製品を念頭においた開発を行う。商品開発の切り口となるメーンテーマは「思いやりのある生活環境」と「地球にやさしい環境」だ。いずれも空気精紡糸で、20番手(一部30番手)までの太番手での展開を行う。
「思いやりのある生活環境」では、人への優しさとタッチ/ルックを重視した展開を行う。スーピマにシルクをブレンドしたシルク綿、アンゴラとスーピマ綿晒し、カシミアとスーピマ混紡糸、消臭綿糸など。
また、「地球にやさしい環境」では、イグサ10%/綿、綿リネン、ケナフ綿、カポック綿、ベンガル綿、バンブーレーヨン綿など豊富な商品ラインナップを持つ。
全国のニットや綿織物産地を対象に提案を積極的に行い、取り組み型販売の構築を目指す。
シキボウ「セルグリーン」、「モダール」で多彩な素材
シキボウは、湿潤時の強力低下が少ないなど、普通レーヨンには無い特徴を備えるHWM(ハイ・ウエット・モジュラス)レーヨンで使った衣料素材を、「セルグリーン」商標で商品化している。
このHWMレーヨンは、オーストリア・レンチング社が「モダール」商標で生産しているもの。環境保護に配慮し、欧州のブナ森から計画的に間伐された木材パルプを原料に生産されている。もちろん、土中に埋めれば自然に分解する。環境への負荷が少ない繊維だといえる。
同じセルロース繊維である綿や普通レーヨンは、水との馴染みがよく、吸水性、吸湿性に優れるものの、縮みやすく、シワになりやすいという欠点を持つ。これに対し「モダール」は、湿潤時の強力低下が少ない。洗濯を繰り返しても繊維のフィブリル化が少なく、毛羽立ちしにくいため、生地表面は滑らかなままほとんど変化しない。
この繊維を使ったシキボウの生地、「セルグリーン」への需要はまず、婦人下着市場で拡大した。ここにきて、婦人外衣市場でも需要が増え、販売量の3割を外衣向けが占めるまでになった。糸使いの多様化が、その背景にある。ドレープ性を強調した「モダール」100%糸、ふくらみ感と柔らかさが特徴の「モダール」・綿均等混糸、さらにはポリエステル長繊維を「モダール」で覆ってシャリ感を強調した二層構造糸など、様々な糸を商品化してきた。