合繊メーカー、来春夏へ新素材相次ぐ
1999年04月14日 (水曜日)
合繊メーカーの2000春夏向け婦人服地提案が出そろいつつある。現実の商談は今夏物の最終段階にあり、五月連休明けから本格化する秋冬もののデリバリーを待つ段階。需要回復に力強さはまだ見られないが、杢調やストレッチ素材など好調に推移しているものも散見され、在庫調整の進展もあって来春夏シーズンへの期待が高まっている。
「これまでとは雰囲気がいい方向に変わりつつある」と語るのは東レの奥村嘉宏取締役テキスタイル事業部門長。同社の婦人織物の荷動きでみると春物までは苦戦を強いられたが、二月以降の夏物では「前年実績を上回るペース」だという。ハイシルキー調「フェミノス」、梳毛調「セルシオン」などの新素材が計画通りで、杢調「ジョフォール」、清涼薄地「サップ」なども人気が高いという。
ユニチカの雪城豊和テキスタイル営業第二部長は今春夏向け婦人服地販売について、薄地は大苦戦としながらも「中厚地織物は前年比一〇%増」と見込む。「エスナー」「ファナトーン」「アレイス」などが売れ筋で、杢、ストレッチ、軽量がキーワードになっている。
このように数量減、単価下落のダブルパンチで不振にあえいでいたポリエステルを中心とする婦人用長繊維織物にも明るい話題が見られるようになってきた。大苦戦が続いた薄地も、プリント復活は望めなくても、無地は「供給調整の効果が期待できる」(伊藤靖彦三菱レイヨン長繊維事業部長)。
こうした状況をとらえ、合繊メーカー各社は今秋冬から来春夏に向け、独自技術を生かした新商品の投入などにより、市場活性化を図ろうとしている。その特徴は「杢」「ストレッチ」「複合」などのトレンドをとらえながらも従来商品の枠を超え、ポリエステル長繊維で新しい領域を構築しようとする動きだ。
今春夏までは黒、グレーなど濃色杢が売れ筋になっているが、今後はパステルや白など淡色にカラートレンドが移ると予想される。これに対応して帝人は濃色から白をはじめとする淡色まで、さらに細杢から粗杢までの表現が可能な「シャルトレー」を開発した。カチオン可染(CD)とレギュラー、二成分から成るポリエステル長繊維の糸構造、さらにCD比率のコントロールで「限りなくウールに近い杢表現が可能」(西川寛ファッションテキスタイル販売部大阪厚地織物課長)になった。
東レの「プルエラ」はゴムまりのような躍動感がある弾力性、反発性が特徴。ストレッチ素材として人気が高いポリエステル・コンジュゲート糸を使っているが、新ポリマー構成による重合紡糸制御と高次加工段階の構造ち密化技術で織物にスプリング構造を発現させた。ダブル幅のアパレル入り値は一メートル千五百~千八百円と高いが「今春夏のテストセールではヤング向けSPAにも好評」(奥村取締役)と手ごたえを感じている。
ジアセテート・ポリエステル複合の〝本命〟として三菱レイヨンが投入したのは「セブロス」。輸出で実績がある「カローザ」の技術をベースに、ポリエステル差別化糸のバリエーションを増やすなどして、国内市場向けに新規開発した。ジアセテート・ポリエステル複合素材そのものは産地コンバーター物を中心に珍しくはないが「独自の混繊技術など当社チョップでなければ出来ない商品」(伊藤事業部長)に仕上げた。
ポリエステル長繊維が〝元気〟を取り戻すには需給や価格の改善はもちろん、こうした新商品開発に一層力を注ぐことが大切だ。