春季総合特集Ⅳ(11)/Topインタビュー/ボンマックス 社長 外川 雄一 氏/常に挑戦する姿勢示す/海外市場の開拓に本腰
2025年04月25日 (金曜日)
ユニフォーム製造卸ボンマックス(東京都中央区)の直近2025年1月期連結売上高は前期比約10%増の113億円に達した。昨年稼働した滝の里物流センター(岩手県陸前高田市)と新基幹システムも順調だ。次のステージに向け、「海外」「プラットフォーム」「備蓄QR」「新技術・特許関連」の4テーマで新規事業の開拓に注力する。
――Gゼロ時代に突入し、より先行きが不透明になる中、御社が国内そして海外で改めて強化していく取り組みは。
現状維持は脱落なりという考えで常に新しいコトに挑戦する姿勢を大事しているので、先行きの不透明感が高まったからといって改めて取り組むべきことはありません。
とはいっても無鉄砲に突き進むというわけではなく、堅調な既存事業と不確実性の高い挑戦分野とのバランスを考えることは大切です。盤石な財務体質があってこその挑戦です。どのような環境変化においても既存事業はしっかりと成長させていける取り組みを常日頃から行っているかどうかが重要です。
――足元、春夏の商況と26年1月期の見通しは。
25年1月期は単体売上高が前期比約7%増の82億円、連結は同約10%増の113億円でした。今期は、単体売上高については前期とほぼ同水準の予算で組んでいます。連結では好調なBMファン(東京都中央区)の伸び次第で今期以上を目指すことも十分可能だとみています。
今期に入って足元2、3月の動きは、前期に大口案件があったことを差し引いても少し鈍いと言わざるを得ない状況です。
オフィスウエアは市況全体に元気がないということはありますが、インバウンド消費で活気づいているホテルや飲食業向けのサービスユニフォームに勢いが見られません。一時的なものかどうかも含めてしばらく動向を注視していく必要があると考えています。カジュアル、別注案件も前年同期ほどの勢いはまだ出ていません。
――挑戦分野に掲げる新規事業開拓の4テーマ「海外」「プラットフォーム」「備蓄QR」「新技術・特許関連」の進捗(しんちょく)は。
まず、海外展開については、昨年タイの拠点とするため、現地企業と当社が出資して問屋機能を持つボンマックスタイランドを設立しました。サービス、カジュアルウエアを中心とするユニフォーム備蓄の小口対応、別注案件を取り込んでいます。日本のデザインと品質、さらには産地からの直接仕入れを強みに順調に推移しています。
今期は米国にも注力したいと考えています。主力となる商材はTシャツです。日本文化などをモチーフにした和デザインで売り込んでいきます。
3月に東京ビックサイトで開催された「ファッションワールド東京」で日本のファッション輸出展示会に出展し、予想以上の手応えがありました。中でも大河ドラマで今話題の蔦屋重三郎に関連する浮世絵を、自社の企画として独自のプリント技法を使ったTシャツ、インパクトのある小物などにした商品は好評です。インバウンド客だけでなく、米国市場でも反響を得られるのではないかと期待しています。
タイ以外の東南アジア諸国でも昨年ウオーミングアップを兼ねていろいろと試しましたが、本腰を入れて取り組まなければ一筋縄ではいかないというのが実感です。
プラットフォーム事業は、EC(電子商取引)で一定の成果を出していますが、次の飛躍に向けてきっかけとなる手段を模索中といった段階です。備蓄QRはオンデマンドでOEMに対応するサービスを拡大させていきます。新技術では、刺しゅう風のプリントTシャツやアバター、サイネージ付きの自動販売機やアバターのサイネージなどを試験的に展開しています。
――本社1階に「蔦重通油町ギャラリー」をオープンしました。
蔦屋重三郎の書肆(しょし)「耕書堂」跡地が、本社ビルから数十㍍の場所に立地していることが縁で来年1月まで開設しています。蔦屋重三郎を知るパネル展示や関連物品を販売するほか、新たなビジネスの実験場としても活用していきます。
〈昭和時代の思い出/激務〉
「昭和の時代に気力と体力を養ったおかげで、平成、令和を通して仕事がきついと思ったことは一度もない」と外川さん。小学生から大学生までは剣道の厳しい鍛錬に明け暮れた日々だった。大学卒業後に入社した伊藤忠商事では、膨大な仕事をこなすため、頻繁な海外出張や連日残業に追われる激務を30歳まで続けた。「昭和はとにかくきつかったという記憶しかない。その分、今は気力、体力共に余っちゃっている感じかな」
【略歴】
とがわ・ゆういち 1990年ボンマックス入社。販売促進部長、常務、専務を歴任し2002年から現職