春季総合特集Ⅲ(19)/Topインタビュー/ボーケン品質評価機構 理事長 吉田 泰教 氏/公益性の実現が重要に/“品質の一歩先”目指す
2025年04月24日 (木曜日)
ボーケン品質評価機構は、従来の納品前品質検査を中心とした検査機関から、依頼企業が抱える課題や社会的要請に応える“品質パートナー”としての第三者試験機関への転換を急ピッチで進めている。4月から始まった新中期経営計画は「品質の一歩先にある私たちの未来」をスローガンとして掲げ、さらなる進化を目指す。
――国際経済の前提条件が不安定になっています。
先行きが読めない時代になっています。ただ、今後予想されるバリューチェーンの再編にあっても、社会や業界に対して公益性を実現するという第三者試験機関として役割は変わりません。それが消費者、企業、業界、社会それぞれがウィン・ウィンの関係となる世界を作ることにつながると考えています。日本はこれまで比較的安定した状態が続いていましたが、今後はさらなる変化の時代に入るのではないでしょうか。その中で繊維業界も変化を余儀なくされるはず。それに何とか対応していくことが重要です。そのためには「人財」の育成も含めて、組織運営のレベルアップも必要だと考えています。
――4月から3カ年中期経営計画がスタートしました。
新中計は「品質の一歩先にある私たちの未来」をスローガンと事業ビジョンとして掲げ、それを実現する「現場力溢れたポジティブな組織と人財」を組織ビジョンとして定めました。二つを一体的に運用し、業界・取引先・社会・従業員全ての関係者に豊かで持続可能な生活を届けることが新中計の目指すところです。
――具体的に「品質の一歩先」とは。
一つは「対象分野、アイテムの拡大」です。繊維だけでなく生活雑貨や家具、建材、電気製品、化粧品なども対象に加え、福祉、介護、ペット、アウトドアなど用途別にサービスを整理します。商品開発や評価技術へのサポート、教育支援なども強化しています。二つ目は「拡大販売責任」への対応。品質、環境、人権といった課題に対するサービスを拡充します。そのためにシステムも強化し、取引先とのデジタルデータ連携も進めます。三つ目は「対象サービスの拡充」。工場監査や環境・人権・品質に関する検証事業を強化し、国際標準規格や認証システムに参画することで認証・検証事業の拡大に挑戦します。品質支援、サステイナブル支援、教育支援に向けたソリューション事業組織も拡大しました。外部研修の活用などによる専門人財への人的投資も拡充します。
――各事業の基本戦略は。
品質支援事業は生産工場の品質・人権・環境に関する監査業務に力を入れます。さらに環境配慮設計のJIS(日本産業規格)制定やSSBJ(サステナブル基準委員会)基準に基づく教育、検証、改善支援サービスを展開します。こうした取り組みを生活雑貨分野にも広げていきます。
認証分析事業は各種の消費品品質・安全課題解決を含む分析検査体制をさらに充実させるとともに、国際的な環境イニシアチブにも関与・参画し、LCA(ライフサイクルアセスメント)算定支援やGHG(温室効果ガス)排出量検証業務などを業界団体や取引先との協業で力を入れます。機能性事業は生活雑貨や建材、樹脂製品、フィルムなど非アパレル品の機能性評価を充実させます。また、材料から製品まで一貫した機能性評価体制も強み。そのために人体生理測定の技術を持つユニチカガーメンテックとの提携も強化します。
生活産業資材事業は、生活分野で企画・生産・流通・販売・リサイクル・ライフサイクル全体での品質支援事業を強化します。また、中国に続きベトナムとインドネシアでの検査体制も充実させます。繊維事業は日本・中国・アジア地域での連携を強化するほか、品質だけでなく環境・人権分野も含めた人財育成を担う教育機関としての役割を強めます。海外事業は海外法人で現地スタッフの幹部登用を進めており、管理体制を強化しています。試験における品質保証体制ナンバーワンを目標に公正・中立でグローバルな品質保証体制を確立します。
人的資本への投資も進め、組織としても環境や人権、ガバナンスを最重要視するサステ経営を組織戦略として進めます。
〈昭和時代の思い出/近鉄から見た江夏の21球〉
近鉄バファローズと広島カープが戦った1979年(昭和54年)のプロ野球日本シリーズ。大阪球場で行われた第7戦をスタンドで観戦していた。近鉄1点ビハインドの九回裏攻撃。無死満塁と近鉄が逆転サヨナラ勝ちのチャンス。近鉄ファンの吉田さんは「勝ったと思った」のも束の間、伝説の“江夏の21球”で「あれよあれよという間に負けてしまった」。近鉄サイドから見た貴重な証言。その近鉄バファローズも大阪球場も今や昭和の歴史の一コマに。
【略歴】
よしだ・やすのり 1991年日本紡績検査協会(現・ボーケン品質評価機構)入所。2009年近畿事業所長、11年東部事業所長、19年6月から理事長兼最高経営責任者