クラボウ 成長分野確実に伸ばす
2025年04月18日 (金曜日)
クラボウは今期(2026年3月期)から、3カ年の新中期経営計画を始動する。西垣伸二社長は「長期ビジョン達成に向けた非常に重要な3年間となる」と述べ、繊維事業の独自技術を生かした製品、化成品事業の高機能樹脂製品や機能フィルムなど、「成長分野を確実に伸ばす」との方針を示す。
繊維事業の設備投資額について、前中計を上回る水準を想定する。
前期(25年3月期)は第4四半期(1~3月)に、半導体設備向け高機能樹脂の受注が、中国における内製化投資の一巡によって減速。繊維事業も計画比でやや苦戦したが、全体として通期の営業利益ベースでは「中計の目標水準レベルでの着地」を見込む。
繊維事業は独自技術を用いた製品がけん引し、「24年度は“転換期”となった」(西垣社長)。原綿を改質した機能綿糸「ネイテック」は、遮熱・UV機能を備えた新シリーズの投入により、秋冬物に加えて春夏物にも展開が広がり、インナーからアウターまで用途が拡大した。
暑熱リスク・体調管理システム「スマートフィット」も、スマホレス型端末や可視化レポートの採用が大手企業も含めた導入を後押しし、売り上げは前期比で3倍超に伸長した。
一方で、エネルギーコストの高騰や建屋・設備の老朽化による競争力の低下を背景に、紡織拠点だった安城工場(愛知県安城市)の閉鎖を決定。6月末に予定する。生産設備の一部は、タイやインドネシアなど、競争力のある海外拠点への移管を検討している。
今後、国内ではテキスタイルイノベーションセンター(TIC、安城市)と、染色加工の徳島工場(徳島県阿南市)が中心となり、「独自技術を磨く」。TICには試紡・開発用に6千錘の紡機を残し、羽毛代替となる中わた材「エアーフレイク」や、裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」関連の設備を存続。技術開発の機能の維持、強化に努める。
繊維事業では、新中計で「前中計の期間よりも設備投資額を増やす」方針を掲げ、海外での最新鋭の生産設備の導入も視野に入れる。
化成品事業の半導体関連は、足元では市況調整の影響を受けているものの、今年後半からの回復を見据える。3月に竣工(しゅんこう)した熊本イノベーションセンター(KIC、熊本県菊池市)を核とした開発力を強化し、「回復局面での飛躍に備える」考えだ。