繊維ニュース

技術の眼/YKK/東レ/小嶋織物/東海サーモ/大和紡績/桃谷順天館

2025年04月10日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/コードストッパーに代わるファスナー〉

 YKKの「コードアジャストファスナー」は、衣類の裾や袖口、フードを絞る際のコードストッパーの代わりとして使用できるファスナー。

 従来のコードストッパーは、衣類の外側にひも(コード)が出ているため、ものに引っ掛かってけがの要因となる懸念もあった。コードアジャストファスナーは、ひもをファスナーに内蔵しているため、引っ掛かりによるけがを防ぐ。スタイリッシュな外観で、取り付ける衣類のデザインに溶け込むのも特徴。

 従来品が片方ずつ両手で絞るのに対し、コードアジャストファスナーは開閉だけで絞りを調整できる。

 操作性、安全性、ファッション性を兼ね備えた製品として、スポーツ・アウトドア、子供服、ワーキングと多様な用途に向け提案する。

〈東レ/国産の新SBを発売〉

 東レは、オレフィン系スパンボンド不織布(SB)「アートレイ」シリーズを4月から本格販売する。産業資材向けを中心に用途に応じた3タイプをそろえ、2026年度に10億円の売り上げを目指す。同社の国産オレフィン系SBの本格販売は初めて。

 アートレイはFN、HS、BCの3タイプからなり、いずれも17年に滋賀事業場(滋賀県大津市)に導入した独自のSB開発設備の技術を活用。量産も同設備で行う。FNはフラット加工を施したポリプロピレンSB。紙に似た風合いを持つ一方、破れにくく(引裂強力は紙の6倍)、紙粉が出ず、耐摩耗性に優れることから、包装材料やメディカル用途に適する。

 HSはかさ高性のあるポリプロピレンSBで、高い剛性、高通気量を備える。BCは2成分の複合SB。芯部がポリエステル、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘構造で、熱によって接着させるヒートシール性を持つ。

〈小嶋織物/デニム端材から糸、生地〉

 織物壁紙・襖(ふすま)紙製造の小嶋織物(京都府木津川市)は、自社生産工程で出たデニムの端材を反毛し、同わたを使用した紡績糸、生地をアパレル向けなどへ提案する。デニムは主に140センチ幅で、壁紙は105センチ幅のため、35センチ分が端材になる。これまで端材で小物を作るなどしてきたが、反毛して糸、生地にアップサイクルして提案する。

 反毛設備を持つ子会社の加藤繊維(岐阜県瑞穂市)が広島、岡山県産のデニム端材を反毛する。一般的な反毛設備は、生地をしっかりかく必要があるが、同社の設備は生地を粗めにカットして熱と圧力で空気を当ててほぐすため、生地の色などが交じりすぎず味のあるわた、糸が作れる。生地は小嶋織物で生産する。糸、生地売りは別注対応が基本。わたの混率、番手、生地の種類はカスタマイズできる。綿4~16番手に対応するほか、ネップヤーンやトップ染め、先染めも可能。

〈東海サーモ/合繊短繊維使いの芯地〉

 芯地・副資材製造卸の東海サーモ(岐阜県大垣市)は、得意とする重衣料向け以外の芯地分野を開拓する。新商品としてサステイナビリティーや機能性にこだわったポリエステル短繊維使いの芯地「V―スパン」を投入し、シャツなどの軽衣料やインサイドベルト向けの拡販を狙う。

 素材はポリエステル100%で、そのうち50~60%は再生ポリエステルを使用。染色工程での水の使用量を抑えたほか、「エコテックス」規格にも対応する。通気性は従来品に比べて2倍以上優れており、腰や襟回りの快適性を向上させた。速乾性も備えるほか、抗菌防臭性や非フッ素による撥水(はっすい)機能もある。特殊なポリステルを使いハリ感も持たせた。紡績から織布は協力工場、仕上げ整理は自社工場で手掛けるなど国内で生産する。

 推奨用途や糸番手、混率などによって4品番展開する。将来的には年間販売数量30万メートルを目指す。

〈大和紡績/独自の素材で存在感〉

 大和紡績は、紡績技術や特殊加工、独自原料の活用などを駆使した商品の提案を継続強化している。綿100%でありながらさまざまな機能を付与した生地「プレミア」を新たに開発するなど、独自性の高い商品の投入で需要を取り込む。

 綿100%の高機能生地では、合成繊維並みの速乾性を持つ「ミラクルドライ」を展開しているが、「(速乾性などの)機能は維持しながらソフトな風合いを持つ生地が欲しい」という顧客の要望に応える形で開発したのがプレミアだ。紡績技術と特殊加工などを組み合わせることで機能の発現を可能にした。

 拡散性残留水分率試験(0.6ミリリットル滴下)で55分以内という高い吸水速乾性を誇り、ストレッチ性やソフト風合いも付与した。抗ピリング性、寸法安定性といった特徴も持つ。過流精紡機「MVS」で紡績した糸を使ったタイプとリング紡績糸を使ったタイプの2種類を用意し、Tシャツ向けなどで提案する。

〈桃谷順天館/美肌に導くレーヨン繊維〉

 化粧品メーカーの桃谷順天館(大阪市中央区)は、独自成分によって美肌効果をもたらすレーヨン繊維「モイストファイバー」の拡販に力を入れている。現在、肌着やパジャマなど肌に触れる繊維製品を中心に12社と商品開発が進行中。繊維製品そのものを化粧品として販売する構想も描く。

 繊維業界には多くの制菌・抗菌素材が存在するが、それらは肌トラブルとなる悪玉菌だけでなく、肌に潤いを与えバリア機能を高める善玉菌まで抑制してしまう可能性がある。一方、モイストファイバーは悪玉菌を抑えつつ、肌表面の善玉菌を増やすことでスキンケア効果を期待できる。さらに肌の水分量を維持し、肌環境の改善にも寄与する。

 “繊維製品の化粧品化”を視野に入れ、自社の厳しい基準に照らし合わせたモイストファイバーの保湿やバリア機能を強化。マーケティング戦略も含め販売先と密接に連携しながら市場を広げる。