不織布新書25春(7)/FANS/金井重要工業/倉敷繊維加工/呉羽テック

2025年03月31日 (月曜日)

〈FANS/米国にストックポイント/「ヒメロン」グローバル販売〉

 ニッケグループのエフアンドエイノンウーブンズ(FANS、大阪市中央区)は、新たにニッケグループに加わった呉羽テック(滋賀県栗東市)とも連携することで主力の不織布「ヒメロン」のグローバル販売を拡大する。特に呉羽テックの米国子会社が北米市場におけるストックポイントとなることを強みにする。

 発足初年度となった2024年11月期は上半期にヒメロンが自動車メーカーの生産停滞の影響で苦戦。OA機器向けも流通在庫の調整局面が続いたが、4月以降に荷動きが正常化した。楽器向け羊毛フェルトは需要低迷が続く。中国での生産・販売拡大を見込んでいたバグフィルターも現地の景況悪化で計画通りではない。

 昨年8月には呉羽テックが新たにニッケグループに加わったことで25年11月期は両社の連携が進む。例えば呉羽テックの米国子会社でもヒメロンを販売する。北米にヒメロンのストックポイントができることを生かし、クイックデリバリーを強みに自動車用途への拡販を進める。

 また、東南アジア市場はタイ子会社のFANSプレシジョン〈タイランド〉、中国市場は中国子会社の芳珠精密加工〈深セン〉を拠点にヒメロンのグローバル販売拡大を進める。原反販売だけでなく、ラミネート、打ち抜きなど加工への対応も強化する。

 インドネシア子会社のFANSインダストリーインドネシアは設備増強が完了し、5月から増産がスタートする予定。こちらはOA機器向けで販売を拡大することになる。

〈金井重要工業/研磨ホイールに期待/加工度を高める戦略〉

 短繊維不織布、繊維機器製造の金井重要工業(大阪市北区)は来期(2026年3月期)、プリント基板用研磨ホイールの拡大を見込む。

 研磨材向けは不織布での供給が主力だったが、その技術を生かしながら加工度を高めて製品で供給するもの。設計から量産まで一貫生産で、繊維径や研磨粒子・樹脂量などニーズに応じた開発が可能。来期から本格採用が決まる可能性があると言う。

 同社はケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布などを生産。自動車内装材、空調フィルター、研磨材、不織布タワシなどの生活資材を主力とする。

 今期は中期計画の初年度だったが、増収も減益となる見通し。原料高騰分の価格転嫁は進んだものの、カバーし切れていないエネルギー費、物流費、労務費がさらに上昇するため収益面では厳しく、販売量も大きな変動がない状態にある。

 その中で収益性を改善するために研磨ホイールなど「加工度の向上」(源野佳郎取締役不織布事業部長)に取り組む。

 同時に不織布製造所(兵庫県宝塚市)では需要家と交渉しながら品番を絞り込み、生産効率の改善も図る。

 なお、同社は「2025年大阪・関西万博」の大阪ヘルスケアパビリオン内に出展し、がんの放射線治療に使用される不織布スペーサを出展する。

〈倉敷繊維加工/フィルター軸に拡大狙う/半導体関連も量産開始〉

 クラボウグループの短繊維不織布メーカーである倉敷繊維加工(大阪市中央区)は2025年度(26年3月期)から始まる新中期経営計画でフィルター分野を軸に売上高の拡大に取り組む。主力の自動車や空調用途に加え、半導体関連用途でもグラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」も本格採用に向けた量産が始まる。

 24年度はフィルター分野が空調用、自動車キャビンフィルター用ともに堅調に推移した。生活資材分野も底堅い。中国子会社の佛山倉敷繊維加工も電気自動車(EV)向けフィルターなどが拡大し、黒字を確保した。

 このため25年度から始まる新中計でもフィルター分野を軸に売上高の拡大を目指す。引き続き自動車、空調用途に力を入れ、貼り合わせや複合素材化など加工による高付加価値品の開発・提案を進める。佛山倉敷繊維加工の活用も視野に入れる。

 クラングラフトも量産を開始する。自社工場に加えてクラボウの熊本事業所(熊本県菊池市)でも一部工程を委託することで生産能力も倍増する。これまでも引き合いは順調に増えていることから、量産による採用本格化に期待を寄せる。

 これら取り組みによって新中計で中長期ビジョンに掲げる売上高100億円の目標に向けた基盤整備に取り組む。

〈呉羽テック/グループ連携で収益改善/原反だけでなく加工品も拡充〉

 2024年8月からニッケグループに加わり新たな出発となった呉羽テック(滋賀県栗東市)。グループ連携によってアイテムを拡大し、不織布原反の販売だけでなく加工品の取り扱いも増やすことで収益改善を急ぐ。

 同社の課題が利益率の低さ。米国子会社のニッケ呉羽アメリカの赤字が収益を押し下げている。このため今期(25年11月期)からニッケ呉羽アメリカで同じニッケグループのエフアンドエイノンウーブンズ(FANS)の不織布「ヒメロン」の北米販売を担うことでアイテムの拡充を進める。また、スリットやラミネートなど後加工も拡充する。

 アジア市場でもFANSとの連携を進める。原反を製造販売するタイ子会社の呉羽タイランドとFANSの加工拠点であるFANSプレシジョン〈タイランド〉が協業することで取扱商品の加工度を高めることが可能だ。

 また、FANSは中国、香港、ベトナム、インドネシアにも拠点を持つことから、FANSの海外拠点を通じて呉羽テックの商品を販売することで販路拡大を目指す。

 同じ不織布メーカーでも呉羽テックは薄物を、FANSは厚物を得意とする。このため相互OEMなど生産面での連携も進め、商品ラインアップ拡充と開発力強化などシナジー発揮にも期待を寄せる。