不織布新書25春(5)/帝人フロンティア/東洋紡エムシー/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン
2025年03月31日 (月曜日)
〈帝人フロンティア/短カットを増産へ/縦型不織布は自動車用途に特化〉
帝人フロンティアはポリエステル短繊維の生産を担うタイ子会社、テイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)で湿式不織布向けショートカットファイバー(短カット)の生産能力増強を進めている。2025年度(26年3月期)中には本格稼働することから積極的な拡販を進める。
短カットは主力の膜支持体用途が北米市場でやや調整局面となっていたが、24年度後半からは回復基調にある。加えて競合していたユニチカが事業再編を進めていることから、需要家の間で今後の供給を不安視する声が高まる。これを受けて積極的な拡販でシェア拡大を目指す。拡販の成果によってはさらなる増設も視野に入れる。
一方、自動車用途はクッション材に力を入れる。縦型不織布「V―Lap」はこれまで揖斐川事業所(岐阜県神戸町)で自動車向けを生産し、寝装用は他社で委託生産していたが、昨年12月に外部での委託生産を停止した。今年4月からは揖斐川事業所に生産を集約し、自動車用途に重点を置く。特にカーシートのワディング材などでウレタン代替需要の開拓を進める。自動車用途ではそのほか、吸音材にも力を入れる。成形可能なタイプの開発も進め、需要の掘り起こしを進める考えだ。
ここ数年、高付加価値品への特化を進めたことで販売規模が縮小していることも課題。このため商社機能を生かして海外からの調達を強化し、価格競争力のある商材もそろえることで量的拡大にも取り組む。
〈東洋紡エムシー/2成分複合SBも開発/土木資材は機能品に実績〉
東洋紡エムシーは、新たに2成分複合スパンボンド不織布(SB)の販売を開始する。2025年度(26年3月期)から本格的に市場投入する。また、土木資材用途では機能品に実績ができつつある。
24年度の不織布事業は売上高、営業利益ともに前年実績を上回る水準で推移するなど堅調だった。建材用途はルーフィング材が好調。自動車用途も日本向けを中心に堅調だった。土木資材は人手不足などによる工期遅れで資材の消化が停滞し、苦戦した。
25年度は、新たに2成分複合SBを市場投入する。ユニチカの「エルベス」が高いシェアを持つ分野だが、需要家の間で今後の安定供給に対する不安が広がっていることことから参入を決めた。
苦戦が続く土木資材は機能品で需要開拓を進める。重金属イオン捕集材「コスモフレッシュナノ」は海面最終処分場でも採用されるなど実績が上がり始めた。トンネル工事で発生する残土の仮置き場用途での需要拡大にも期待を寄せる。
自動車用途は北米市場の攻略に力を入れる。1月から米オハイオ州に駐在員を置くなど体制も強化した。自動車用途はアイテムの拡大にも取り組む。内装材だけでなく軽量性や吸音性に焦点を当てたインシュレーターなどの開発も進めることで、電気自動車(EV)シフトによる需要構造の変化に備える。
〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/建材用途を拡大/自動車用途で新規開拓〉
ドイツ・フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパンは、2025年度(12月期)も建材用途を軸に販売の拡大を狙う。また、新規素材の開発も進め、自動車用途などでの採用拡大も目指す。
24年度は売上高こそ横ばいながら営業利益が前年度実績を上回った。価格改定によって利益率が改善したことが要因だ。主力のポリエステルスパンボンド不織布(SB)は、カーペット基布向けが依然として勢いがないものの、ルーフィング材など建材用途が拡大した。
3次元構造体「エンカ」も建材としての不燃認定を取得したことで販売が拡大しつつある。一方、屋根防水材向けポリエステルニードルパンチ不織布「ドリップストップ」は国内認証の取得が遅れていることで、採用も足踏み状態となっている。
25年度も引き続き建材を軸に販売拡大を狙う。ビルや商業施設で旺盛な需要が続いていることを生かす。また、そのほかの用途のSBに関しても競合するユニチカの供給安定性を不安視する需要家が増えていることから、シェア拡大を狙う。
自動車用途は外装材などで新商品の開発・提案に力を入れる。アジア市場では電気自動車(EV)のアンダーボディーシールドなど新規用途で実績が上がる。こうした需要を日本でも掘り起こす。
〈不織布/輸入は長・短で明暗/輸出はともに5.7%増〉
不織布輸入が増加に転じた。財務省通関統計によると、2024年の不織布輸入量は2・1%増の25万1589トンとなった。国内需要の落ち込みを反映し21年から3年連続で前年実績を割り込んでいたが、1~6月の1・6%減を補い増加となった。ただし、長・短では明暗を分けた。
24年の不織布輸入量は長繊維製が前年比0・2%減の14万3540トン、短繊維製は5・4%増の10万8049トンだった。長繊維製は4年連続の減少。大半を占めるポリプロピレン製は0・4%増の12万4522トンと微増に転じ、ポリエステル製も2・4%増の1万2633トンだったが、その他長繊維が55・3%減の3025トンと大きく落ち込んだ。その他長繊維は大半を占めるルクセンブルク(米デュポンのフラッシュ紡糸不織布「タイベック」と見られる)からの輸入が25・9%減の1473トンに落ち込んだことが主因。
短繊維不織布は5・4%増の10万8049トンだった。中でもレーヨン短繊維製が11・5%増の6万4355トンの大幅増と初めて6万トン台に乗せた。レーヨン短繊維製はスパンレース不織布が多いとみられ、中国、台湾、さらにインドネシアからの輸入が増えている。
一方、不織布輸出は5・7%増の7万3096トン。長繊維製が5・7%増の2万7258トン、短繊維製が5・7%増の4万5838トンだった。長繊維製はポリエステル、ポリプロピレンが伸長。短繊維製は全素材が前年を上回った。