学生服特集/21世紀の学校制服を展望する

2002年05月29日 (水曜日)

今入学商況の結果とモノ作りの行方を探る

 学生服業界の今入学商況は生徒数の減少、単価ダウン、「お下がり」によるリユースの増加、不況による購入枚数の減少など、依然厳しい状況が続いている。学生服もデフレ経済の中で単価ダウンを余儀なくされ、一部で海外生産を活用した取り組みが出始めてきた。今回は学生服業界における海外対応の進捗状況を取材しながら、これからの学生服業界を展望した。

 また、業界内の流通段階では学校の統廃合が進み、金融機関の貸し渋りなどから小売店の資金繰りも圧迫し、在庫が持てない状態だ。そのような中で、流通段階の閉鎖・廃業も相次いでいる。本特集では学生服業界における素材メーカー、商社、アパレルの各段階を取材し、今入学商戦を検証しながら業界の現況と課題をまとめた。

モデルチェンジ校/今春の制服更新は235校/16年間で3割が変更

 今年春の中学、高校の制服モデルチェンジ校は昨春より32校多い235校となった。

 学生服素材最大手の日本毛織の調べによると、今年の高校の制服モデルチェンジ校は前年より29校増の163校、中学が3校増の72校となり、合計で235校となった。

 学校制服のモデルチェンジはバブル期から増え始め、88年から200校台になり、ピーク時の92年には414校を記録。その後減り続け、ここ4、5年は200校前後の更新で推移している。別表の制服モデルチェンジ校の推移をみると、87年~2002年までの16年間で中学、高校を合わせた制服更新の総数はちょうど4500校にのぼる。

 現在、日本の中学と高校を合わせた学校総数は1万4558校(01年3月末段階)。この16年間で31%の学校が制服更新をした。中学と高校別でみると、中学は1万407校のうち、11%の1174校が更新。高校は4151校のうち、80%の3326校が制服更新した。高校についてはなんと8割がこの10数年間で制服更新を行い、その大半がブレザータイプである。いまや高校においては詰襟服とセーラー服を見かけることが少なくなった。

 日本毛織の調べによると、今年のモデルチェンジ校のデザイン内訳は男子が高校でブレザータイプ73%、スーツタイプ18%、別注詰襟服9%。中学ではブレザーが86%、スーツが14%。

 一方、女子では高校がブレザー70%、スーツ28%、セーラー2%。中学ではブレザー82%、スーツ14%、セーラー2%、その他2%である。

 日本毛織の内藤征二スクールユニフォーム部長は制服のモデルチェンジについて「来年も今年と同じぐらい制服更新が出てくるだろう」とみている。中・高一貫校や公立校のいろいろなプロジェクトが進み、それに伴う制服更新需要が出てきそうだ。

 また、今入学商戦の特徴について、原反の出荷段階では追加受注が昨年に比べて多く、多品種小ロット化しているという。一方、ペットボトルによる再生ポリエステルを使用したリサイクル学生服の採用は3年前が26校、2年前が44校に増えたが、昨年が40校前後。今年もそれほど採用が伸びなかったという。これからは回収システムをどうするかが問題で、すでに製造段階での回収システムの受け入れが整ってきた。小売店と学校がこれからどこまで回収に協力してもらえるかがポイントになってくるという。

今入学商況/大手4社で更新8割占める/1社微増、3社微減で健闘

 学生服業界の今春の入学商戦は、昨年に引き続き生徒数の減少、「お下がり」の増加、さらに単価の下落も加わって厳しい市場環境にある。しかし、学生服の主力産地、岡山・児島地区では全般に微減から横ばいのところが多く、中には微増を確保したところもあり、まずまず健闘した結果になった。

 商社によると、中学・高校を中心とした学生服市場は「生徒数の減少、『お下がり』やリユース、単価ダウンを含めると、業界平均では前年比7~10%見当の落ち込みを余儀なくされているのが実情」という。それだけに1ケタ%台の微減は、まずまず健闘したといえる。また、前年実績を上回るためには5~10%近い新規校を獲得しなければならない状態にある。

 そのような中で産地内の有力各社の今入学商況を聞いてみると、最大手の尾崎商事は「学生服、体育衣料とも微減の見通し」(尾崎敏之常務)である。今入学商戦の特徴としては「単価ダウンよりも買い控えが一番響いた」とし「定員に対して10~15%の買い控えが多く、中には25%ぐらいの買い控えもあった」という。

 明石被服興業も「スクールウエア全体では微減となり、まずまず健闘したのではないか」(河合秀文常務)とみている。ただ、「詰襟服は減少基調にあり、買い控えも増えてきている」と話す。また、テイコクでは「体育衣料は前年比1~3%減になったが、学生服は前年比プラス」(田窪啓二取締役)と健闘した。学生服のモデルチェンジ校は今年、約80校を獲得したことが貢献し、厳しい市場環境下で前年比微増を確保。今年の中・高校のモデルチェンジ校の3分の1を同社が獲得したという。

 瀧本は「今入学商戦で前シーズン比3%減の微減収になる」(廣瀬佳弘企画開発本部長)見通し。アイテム別では学生服全体は3%減にとどまったが、シャツ・ブラウスが前年比8%減と低迷したほか、スポーツウエアも4~5%減となった。しかし、今年は在庫が昨年に比べ約10%減少したという。また、今入学商戦では私学を中心に定員割れが目立ったほか、公立校の中・高一貫化や統廃合による生徒数の増減に読み違いが生じたという。

 日本毛織の調べによると、今年春の中学、高校の制服モデルチェンジ校は中・高校合わせて235校となり、大手学生服メーカー4社の尾崎商事、明石被服興業、テイコク、瀧本で今年のモデルチェンジ校235校のうち、約190校を獲得した模様だ。縮小する学生服市場の中で大手学生服メーカー4社が今年春の制服モデルチェンジ校の8割近くを獲得するなど、厳しい市場環境の中で大手メーカーへの集中化も進んでいる。

今入学商戦/岡山の中堅クラスも健闘/産地のシェア高まる傾向

 一方、学生服産地、岡山・児島地区の中堅、中小クラスの学生服メーカーも健闘しているところが多く、中堅クラスの児島では今入学商戦は昨シーズン比横ばいを確保。詰襟服の採用が増加基調で推移したことが寄与したという。学生服業界では男子学生服の定番品である詰襟服が年々減少する傾向にあるが、同社では逆に詰襟服が増え、現在ではブレザーと詰襟服の比率が半々という。また、小郷産業も今入学商戦では学生服が横ばい、スポーツウエアが減少で、トータル微減という。さらにサンアミも今入学商戦は横ばいで推移。石井産業も4%減の微減となった。

 そのほか、トーアレディースでは今入学商戦で地域差があるものの、最終的には数量ベースで2%減となり、地域別には大阪が若干増えているが、九州が横ばい、東京が減少を余儀なくされた。吉善商会では「男女共学化など主力とする私学分野の健闘のほか、入学生徒数が予想より増加したなどのいくつかのプラス要因が複合した」ことで、微減予想が数%程度の前年オーバーとなった。金原は微減収ながらも増益を確保。また、佐藤産業も今春夏商戦では微減収で推移。森徳も今入学商戦では中学校向けは下げ止まりから横ばいと健闘したものの、生徒減の影響をモロに受けた高校向けが減少、トータルでも微減に止まった。しかし、利益面では社内体制の見直しが奏功し、前年同期比で若干ながら増益を確保した。

 このように大手以外に中堅クラスでの健闘も目立ち、業界全体から見ると、全国の学校前業者のシェアが産地や一部有力メーカーに集約化されているともみられる。

出生数/01年は最低117万5千/減少に歯止めかからず

 厚生労働省が昨年末にまとめた人口動態統計の年間推計によると、2001年に生まれた赤ちゃんは前年比約1万6000人少ない117万5000人となり、出生数としては最低になる見通しだ。

 出生数はすでに93年の118万8000人から120万人を割り、その後、95年の118万7000人、97年の119万1000人、99年の117万7000人、00年の119万人と推移。そして01年は推計値であるが、最低の117万5000人となった。

 人口1000人当たりの出生率は前年より0・02ポイント減り、過去最低の9・3になる見通しで、過去最低だった99年の9・4を下回る見込み。依然、出生数の減少に歯止めがかかっていない状態で、厚生労働省では出生率の低下は女性の晩婚化に伴う一時的現象と判断していたが、最近では結婚しても子どもを産まない女性が増えているとみている。

 学生服業界にとって、出生数の減少は約10年後の生徒数の減少につながっているだけに、まだまだ生徒数の減少に歯止めがかかったと言える状態ではない。

展示会/6~7月にかけて開催

 学生服業界の来入学商戦に向けた展示会は各社が6月から8月にかけて開催する。

 別表の各社の展示会日程をみると、素材メーカーでは日本毛織、カネボウ繊維、トーア紡が6月から8月にかけて開く。また、学生服メーカーでは6~7月に集中して東京や本社で各社がそれぞれ展示会を開く予定。

 日本毛織では昨年に引き続き「21世紀の学校制服に求められるものは何か」を追求し、制服の新しい価値観を展示会で具現化する予定。学生服メーカーでは尾崎商事が今年は「スクールブティック」をテーマに、これまでのブランド別の提案から学校の個性に合わせた企画で提案。小郷産業も今回は教育改革に伴うそれぞれの学校の個性に合わせた企画で提案する。また、瀧本では今回は学校向けとディーラー向けの日時を明確に分けて行う予定だ。

中・高一貫校/この4年間で73校設置/03年以降に46校予定

 「中高一貫校」が99年度から制度化されて以来、今年春で73校が設置された。

 文部科学省によると、中高一貫校の設置は99年度が4校、00年度が13校、01年度が34校、02年度が22校で累計73校となった。その内訳は公立が50校、私立が20校、国立が3校。また、形態別では中等教育学校が9校、併設型が26校、連携型が38校である。

 02年度に設置された22校は、公立17校、私立5校で、公立の地域別では高知3校。新潟、静岡、熊本の各2校。北海道、青森、岩手、岡山、島根、香川、佐賀、沖縄が各1校。

 また、03年度以降に設置される予定の中高一貫校は46校(中等教育学校11校、併設型21校、連携型13校、設置形態未定1校)となっている。内訳は公立39校、私立6校、国立1校。国・公立の地域別にみると、国立の1校は和歌山県。公立の39校は群馬5校。東京、岐阜、滋賀、愛媛、山口、沖縄が各3校。秋田、埼玉、静岡、広島、長崎が各2校。宮城、茨城、新潟、兵庫、徳島、佐賀が各1校の予定である。

 さらに最近では小学校と中学校の連携を模索する動きが一部出ており、東京都品川区では小中一貫校の新設を検討している。06年度の開校を目指し、既存の小中学校を合併し、同じ敷地で教育することを検討している。また、文部科学省も小中一貫校の設置基準をまとめ公表している。