特集 尾州産地総合(2)/在名4商社 尾州との取り組み/タキヒヨー/瀧定名古屋/豊島/モリリン

2025年03月27日 (木曜日)

〈タキヒヨー 執行役員素材開発/販売グループマネジャー 中嶋 正樹 氏/“攻めの姿勢”大事に〉

――尾州との取り組みに変化は見られるか。

 ポリエステル・レーヨン混生地やツイードなど、高次元の意匠性や機能をかなえるモノ作りの優位性を生かした取り組みを続けています。最近、迅速な生産依頼に関する納期面での問い合わせが増えています。原料の調達から稼働率の把握など、生産面での情報共有を密にしています。

――尾州の強みを生かすために大事なことは。

 尾州の強みは分業体制で多品種かつ高品質なモノ作りができることです。大事なのは、当社が尾州に支えられて積み重ねた知見や実績を生かし、新たな業種やブランドに訴求する“攻めの姿勢”です。パートナーである尾州企業とともに、新たな販路の構築を狙います。

――タキヒヨー・一宮工場(愛知県一宮市)も活用する。

 希少な英式梳毛紡績機を保有し、原料や製法から差別化した紡績糸を作っています。シェットランドウール使用の紡績糸の生産例が多く、出来上がった糸は豊かな表情と風合いを持ちます。一宮工場のモノ作りに注目する販売先も増えており、要望に合わせて編み地やアパレルなどの最終製品で供給することも可能です。2台保有するションヘル式織機を生かしたモノ作りにも挑戦したいです。

〈瀧定名古屋 婦人服地部部長 小野 高志 氏/多彩な仕上げ表現魅力〉

――ウール使いの商品の商況はいかがですか。

 温暖化の影響やスポーツへのトレンド変化でウールの中でも紡毛の受注は苦戦しました。一方で、梳毛はそうした影響を受けることはなく、安定的に仕事は回りました。糸の調達を含めて独自のモノ作りをしている点も良かったと思います。

――尾州の強みについて。

 整理加工のバリエーションの豊富さです。風合いをはじめ、こちらが作りたいものを表現できます。中国や韓国もウール生地を扱っており品質は上がってきていますが、最終の仕上げ工程についてはまだまだ尾州に分があります。そこは輸出の商材にも生かせる部分でもあります。

――尾州との取り組みで強化しているポイントを教えてください。

 先ほど述べたように尾州は整理加工にアドバンテージがありますので、そうした工場と共同での開発を進めています。輸出となると環境認証も重要になってきますので、取得に向けたサポートもしていきたい。

 ウール離れも進行していますので、繁閑差是正の狙いも込めてウール以外のモノ作りも進めようと考えています。1年を通して安定的に尾州の工場が回るようになればと思います。

〈豊島 一宮本店 一部部長 酒井 良将 氏/製品への“つなぎ役”〉

――尾州の現況をどのように捉えていますか。

 これまで堅調だった官需やユニフォーム向けで一服感が出ていることに加えて、主力とする衣料向けも海外からの製品輸入が加速しており、苦戦を強いられている状況です。一方で婦人向けのコート地については24年末から急激に寒くなったことで、動きを取り戻しつつあります。

――商売の在り方も変化しています。

 そうですね。以前のようなまとまった量での見込み発注はだいぶ減っています。発注側が在庫を抱えることを敬遠する流れもあり、引き付け型の発注へのシフトがより進んでいます。そのため規模縮小が続く尾州ではQRが難しくなりつつあります。

――御社と尾州の取り組みは。

 一宮本店は糸売りを中心とした素材部門ですが、当社の製品部門との“つなぎ役”になることで出口を見据えたビジネスを進めています。

 具体的には尾州の織布工場が一宮本店から買った糸を使って生地を作り、今度は当社製品部がその生地を購入して、尾州を冠した製品として販売しています。海外向けも尾州の生地を使うようにしていますし、海外展では尾州素材の発信にも取り組んでいます。

〈モリリン ファイバーマテリアルグループ4部 原糸課 部長代理 林 伸太郎 氏/双方の情報共有がカギ〉

――尾州の現状と課題について。

 糸の流通量はさらにタイトで、生産工程を担う企業は減少しています。独自色豊かな意匠の表現や緻密なモノ作りが尾州の特徴ですが、事業継続性に課題があり、強みが発揮しにくいという危機感を覚えます。商況が不透明で、何が・どれだけ・いつ必要なのかを共有しにくい局面にもあります。

――産地に向け、どう役割を果たすか。

 非常に難しいですが、製販双方の細かい情報を収集し続けることに尽きます。原糸販売では需給面のミスマッチを減らし、販売先の要望に合わせた供給精度を高める必要があります。産地に育てられながら培った対応力や俊敏性を生かし、あらゆる需要に応えたいです。

――独自素材の提案も強化する。

 独自の機能付与を施し、環境にも配慮した特徴ある素材の訴求を強める一方で、販売先の意図を具現化できる独自素材の開発・販売にも対応します。素材が持つ優位性を生かし、尾州の高度な生産技術を組み合わせて新たな生地や製品を販売できるように取り組みます。

 販路は国内だけにとどまらず、海外にも販売できるようにしたい。意匠性ある尾州生地の輸出と並行しなから強化していきます。