トップインタビュー/MFU 理事長 八木原 保 氏/常に輝いている団体に/ファッション業界に夢や元気を
2025年03月27日 (木曜日)
「ベストドレッサー賞」などを主催する日本メンズファッション協会(MFU)。八木原保理事長は「団体として常に輝き、日本中に夢や勇気、元気、希望を届けたい」と強調し、若手クリエーターを表彰するイベントで新たな取り組みも実施した。ファッション業界と共に前進を続けるMFUの現在や今後を聞いた。
――日本ファッション産業の現状をどのように捉えていますか。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行しました。当時は、これで衣料品の需要が増えてくると思っていました。実際にはなかなか需要が回復せず、市場は盛り上がりを欠いた状態が続いています。メンズファッション業界も同じような状況にあると言えるでしょう。
訪日外国人(インバウンド)による需要の拡大という好材料はありますが、旅行や飲食業界は別として、ファッション・衣料品分野で言うと恩恵を受けているのは都市部が中心になっています。日本人もSNSなどで価値や価格を調べてから購入するようになりました。難しい時代になったと感じています。
――繊維・ファッション企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。
原材料・原燃料価格が高騰し、人件費も上昇の一途にあるなど、あらゆるモノの価格が高くなっています。小売価格への転嫁が不可欠ですが、衣料品分野で言えば、十分ではないというのが実情です。他方で少子高齢化によって日本市場も縮小が予想されます。消費者の意識やモノ作り、市場の全てが大きな変化の時を迎えています。
国内での展開も重要ですが、やはり世界を見ていかなければ生き残りの可能性は低くなります。ポイントは得意技術や強みを持っているかどうかです。世界に通用する商品を作るには技術や強みを生かすことが不可欠です。簡単ではありませんが、技術や強みを磨いていけばチャンスは残っています。
――困難な状況が続いていると言えます。そうした中で、MFUの役割は。
「メンズ」という名前は守っていますが、取り組みはライフスタイル全般に広がっていることを先にお伝えしておきます。会員も産業や業種を問わず、輝いている企業に入ってもらっています。MFUは業界団体ではありますが、一般消費者に目を向けてもらっている特異な団体だと自負しています。
消費者が目を向けてくれるのは、MFUが強みを磨き続けてきたからです。旬な人を取り上げる各種イベントの開催がそれです。国民的行事といわれる「ベストドレッサー賞」が代表的なイベントですが、「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」も次回で44回目を迎えます。
――いずれも恒例イベントになりました。
ベスト・ファーザー イエローリボン賞は、日本に父の日を定着させるきっかけになったとされています。母の日は浸透していましたが、父の日はそれほどでもありませんでした。世の「お父さん」はどこか「後回し」になっていた感がありましたが、父の日の定着で少し変化したのではないでしょうか。
――新たな取り組みはありますか。
今年は「ベストデビュタント賞」で初めての試みを行いました。同賞は、若手のクリエーターを応援するという趣旨のもとでMFUが04年に創設しました。クリエーターやアーティストの中から社会や文化、業界、一般の人たちから支持され、将来の活躍が期待される人たちを各部門で選出しています。
これまでは年末のベストドレッサー賞と併催という形で発表・授賞式を行ってきましたが、21回目の今回は、国内最大規模のクリエーティブの祭典「Tokyo Creative Salon2025」の開催期間中である今月14日に開催しました。昨年に東京・原宿で開業した東急プラザ原宿「ハラカド」を会場としました。
――独立開催の成果は。
ベストドレッサー賞は日本を代表するような人が選ばれますが、ベストデビュタント賞は「出来上がった人」ではなく、これから大きく羽ばたいていく人が選出されます。そうした賞をファッションや情報の発信地である原宿で開催したことで、これまで以上に注目が集まったと感じています。
今回は受賞者に、デザイナーの村田晴信さん、画家の真田将太朗さん、声優・アーティストの伊達さゆりさん、建築家の工藤浩平さんの4人を選出しました。いずれも才能にあふれた人たちです。将来が嘱望される4人を選出・表彰できたことはMFUにとっても光栄なことです。
――MFUは設立から65年を迎えました。今後は。
今年も6月のベストファーザーを皮切りに、「グッドエイジャー賞」「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」を開催し、ベストドレッサー賞へとつないでいきます。イベントを通じて「夢」「勇気」「元気」「希望」を日本全体、そして繊維・ファッション業界へ届けていきます。
厳しく、難しい時代ですが、MFUの会員は着実に増えています。これは協会に魅力があることの表れであり、「何かある」と期待されているのだと思っています。「社会貢献」と「世界平和」「SDGs(持続可能な開発目標)」を軸に、常に輝いている団体であり続けます。
【略歴】
やぎはら・たもつ ジム代表取締役会長兼社長。MFU理事長のほか、日本アパレル・ファッション産業協会理事、西印度諸島海島綿協会理事長などを務める。2011年黄綬褒章、20年旭日双光章受章。