クラボウ TICと海外生産強化へ
2025年03月27日 (木曜日)
クラボウは、25日開催の取締役会で安城工場(愛知県安城市)の閉鎖を決めた(一部既報)。紡績・織布の操業を停止し、6月30日には閉鎖を予定している。今後は高付加価値素材の開発拠点として、テキスタイル・イノベーションセンター(TIC、同)の機能に加え、海外生産を強化し、グローバルサプライチェーン全体を見据えた供給力を底上げする。
安城工場は敷地面積約13万3千平方㍍で、綿・合繊糸、綿・合繊織物を製造している。設備は紡機2万8168錘、織機125台。工場閉鎖は、2020年に紡績糸を生産していた丸亀工場(香川県丸亀市)の閉鎖以来となる。
繊維事業では、独自技術を活用した機能素材開発に取り組み、価格競争に巻き込まれにくい事業モデルへの転換を進めてきた。しかし、国内の紡績・織布工場ではエネルギーコストの上昇によるコストアップに加え、設備の老朽化によってコスト競争力の低下が課題となっていた。
構造改革に加え、新型コロナウイルス禍からの回復によって22年度に5期ぶりの黒字となったが、23年度に再び赤字へ転落。今年度は第3四半期(24年4~12月)まで営業損益で3200万円の黒字(前年同期は営業損失4億4千万円)を維持していたが、厳しい状況が続いていた。
こうした状況を踏まえ、安城工場の操業を停止。今後はTICの機能を強化するとともに、生産は海外関係会社などに移管する。
TICには試紡・開発用に6千錘の紡機のみ残す。羽毛代替となる中わた材「エアーフレイク」や、裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」の専用設備も維持する。
海外では設備を増強しつつあり、インドネシアのクラボウ・マヌンガル・テキスタイル(クマテックス)では23年にコンパクト糸の紡績機を増設。タイ・クラボウでも競争力向上のため、古い紡機の入れ替えを検討している。グローバルサプライチェーン全体を見据えた供給体制を整備しながら、繊維事業セグメント全体の収益基盤の強化を図る。
従業員は166人(2月末時点、準社員・パート含む)で、雇用確保を前提に、労働組合とも協議の上決める。業績への影響としては、25年3月期連結・個別決算で減損損失など約15億円の特別損失を計上する予定。工場の解体撤去などの費用は、25年4月以降に計上を予定している。
繊維事業の国内工場としては染色加工の徳島工場(徳島県阿南市)が残ることになる。紡績では子会社の大正紡績(大阪府阪南市)が紡績糸の生産を継続する。
国内紡績から撤退続く
国内紡績からの撤退が続いている。ユニチカは2月7日の臨時株主総会で、今年9月に紡績子会社のユニチカテキスタイル(岡山県総社市)の生産を休止することを明らかにした。
既に、綿紡績大手の日清紡テキスタイルやフジボウテキスタイルは国内での紡績から撤退し、海外拠点で生産。日東紡は22年3月末で紡績糸の製造販売子会社であるニットーボー新潟(新潟市)を解散し、原糸販売事業から撤退した。
国内にはシキボウの富山工場(富山市)や東洋紡せんいの庄川工場(富山県射水市)などの紡績工場が残っている。日本紡績協会加盟企業の24年の運転可能錘数は14万8千錘と、前年に比べ16・4%も減少。クラボウ、ユニチカテキスタイルの操業停止で、10万錘を割るのは時間の問題とみられる。06年に100万錘を割って以降、20年足らずで10分の1まで縮小した。
商品の多様化や生地・製品供給の拡大により、糸売りそのものが縮小傾向にある。さらに、賃上げに伴う人件費の上昇により、国内の紡績事業での高収益化が一層難しくなりつつある。