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ベトナム/衣料ブランド、若者つかむ/日系繊維、新たな商機狙う

2025年03月24日 (月曜日)

 ベトナムの衣料業界で、内販向けの地場アパレルの人気が高まっている。ベトナムの経済成長に伴う中所得層の拡大に照準を合わせたローカルブランドが若者のトレンドをつかんでいるためだ。海外からの相手先ブランドによる生産(OEM)の委託を受けてきた地場衣料メーカーが独自のブランド力を蓄えてきたことで、日本のアパレル資材業界にとっても商機が広がりつつある。

 南部ホーチミン市で2月26~28日に開催されたメッセフランクフルト〈香港〉と、ベトナム貿易促進局が主催する繊維総合展「ベトナム国際アパレルファブリックス&繊維関連技術専門見本市」(VIATT2025)で、ひときわ目を引いたのが、日本企業が集まった「ジャパン・パビリオン」だ。期間中の来場者数は昨年を10%上回る約1万9千人。大半は国内からの参加者で、大手地場ブランドのバイヤーらが多数訪れ盛況だった。日本企業17社は、こうしたバイヤーの気を引こうと懸命なアピールを続けた。

 出展企業の一つ、東洋紡(大阪市)は昨年にベトナム国内販売のライセンスを取得したばかり。担当者は、「これまで生産地としてベトナムを位置付けていたが、内販向けの商流を探り始めた」と語る。クラボウ(同)も2018年に現法設立後、新型コロナウイルス禍で営業活動が中断していたが、内販向けの営業に再び本腰を入れ始めた。

 独調査会社スタティスタによると、国内で販売された衣類1点当たりの平均価格は24年時点で女性向けが約6ドル、男性向けが約7ドル余りにとどまる。

 VIATTの主催会社の担当者によれば、単価が高い日本製生地のベトナム市場開拓には時間がかかるとみられ、現在は長期的な目線で出展を決めた企業が多いが、「日本製生地が利用できる価格帯のブランドも徐々に増えてきている」と言う。この担当者は中所得層の増加に伴い高価格帯ブランドはさらに増えていくとして、「トレンドに合わせ小ロットから対応可能なサプライヤーには商機が見込まれる」と強調した。

〈1万円超えも定着〉

 中所得層に支えられて成長する地場高価格帯ブランドの代表格が女性向けブランド「SIXDO(シックスドゥー)」だ。カジュアルウエアやオケージョンドレスが人気で、ブラウス1枚1万円程度する。ホーチミン市の30代営業職の女性は「質が良くてデザインも好きなのでよく買っている」と話す。

 12年創業でドレスを販売するPOXI(ポクシー)が展開する女性向けのカジュアルファッションブランド「Ivorya(イボリヤ)」もシャツ1枚5千円程度、現代風のアオザイ1着1万円程度で展開する。

 男性向けの中高価格帯ブランドも増加している。「AnPhouc(アンフオック)」はシャツ1枚7千円程度でオフィスウエアやゴルフウエアなどを提供する。仏ブランド「ピエール・カルダン」の販売パートナーでもあり、高級感のあるラインアップが特徴。南部ドンナイ省の30代会社員女性は「何回か父の誕生日プレゼントに買ったことがある。フォーマルなデザインが素敵で人気のブランドだから」と話す。

〈豊富なデザイン〉

 シンガポールの電子商取引(EC)大手ショッピーは、15以上のローカルブランドを取り扱う。24年7月の自社ブログで、「以前は国際的なアパレルブランドにシェアを独占されていたが、いまでは若者のファッショントレンドになった」と指摘する。ベトナム人のニーズに合わせ豊富なデザインや販売戦略を武器にシェアを拡大したと言う。

 ホーチミン市の30代会社員女性は「1着150万ドン以下の予算なら、国内ブランドの方が、デザインが好みで、品質も高いと感じる」と語る。

〈市場規模は3年で1.4倍に〉

 スタティスタによると、24年のベトナムのアパレル産業の売上高の見込みは67億ドルで、前年比4%増。コロナ禍の21年からの3年間で1・4倍に拡大している。29年には、24年比20%増の80億2千万ドルに拡大する見通しだ。

 特に市場の約半数を占める女性向けブランドの拡大が、全体の伸びをけん引している。24年の売上高の約50%を占め、金額ベースでは3年前から40%増加している。

[NNA]