経産省/第三者監査制度を来月開始/特定技能の人権基準適合で
2025年03月21日 (金曜日)
経済産業省は19日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)繊維産業小委員会を開き、国内繊維産業の監査要求事項と評価基準「JASTI」を策定した。当面は、繊維業の特定技能受け入れ追加要件「国際的な人権基準の適合」を確認する第三者監査制度として運用する。運営は日本繊維産業連盟が統括事務局を担い、4月1日をめどに立ち上げる。
現在の人権基準適合の確認は、GOTS、OEKO―TEX STeP、Bluesign、GRS、日本アパレルソーイング工業組合連合会―取引行動規範ガイドラインによる認証で行っているが、4月からは第三者監査としてJASTIが加わる。
運営体制は、日本繊維産業連盟が統括事務局として全体を管理し、その傘下に検査機関コンソーシアム(カケンテストセンター、ボーケン品質評価機構、日本繊維製品品質技術センター、ケケン試験認証センター)と、全国社会保険労務士会連合会の二つの事務局を置く。監査の実施と監査レポート(判定結果)の作成は、検査機関所属の監査員または社労士が担当する。社労士連合会の事務局は準備を整えるため、今夏をめどに参画予定。
JASTIの監査要求事項は人権面において最低限順守すべきとする全84項目からなる。繊産連とILOによる「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」と、主な国際イニシアチブ、国際認証を元にまとめた内容をベースに、同省が精緻化したもの。
判定基準は、監査要求事項ごとに重要度を「許容不可」「重要」「軽微」の3段階で設定。例えば児童労働における法令違反はもっとも厳しい許容不可となる。
監査結果は数値化して、概ね7~8割程度クリアした場合はA判定、6~7割がB判定、以下は判定なしになる。取り組み促進のため、A判定は更新を2年後、B判定は同1年後とするインセンティブも設ける。
さらに、多くの事業者がJASTIの監査を初めて受けることになることから、着手しやすく継続しながらの改善を促すために、初回監査と2回目以降とで異なる判定基準を採用する。一例としては、初回監査で重要度の低い軽微に該当する監査要求事項については判定への影響を小さくし、2回目以降から必要な改善を促すため初回より判定への影響を大きくする。
繊維業の特定技能受け入れに当たっては、追加要件の一つである人権基準の適合確認を得るための費用や人的な負担を指摘する声が中小、小規模事業者を中心に相次いでいる。今回のJASTIの運用では、海外の認証制度より安価な水準になることから費用面でのメリットが期待されるほか、判定期間についても監査後の認証プロセスが不要となり短縮される見通し。
同省では、将来的にJASTIを国際認証に発展させ、国内繊維産業の海外展開促進の足掛かりにしたいという戦略を描いている。時期については運用状況や国際的な動向を踏まえてからとしているが、その過程では現在の人権面中心の内容だけでなく、環境に関連する項目も加わってくる可能性があり、より高度化する前に対応慣れしておく必要がありそうだ。
さらに技能実習制度に代わる新制度として27年度までに始まる育成就労においても、特定技能制度との連続性を考慮すれば人権基準への適合要件が外れることはないとみられる。年内には具体化に向けた検討が始まる見通しだ。
〈供給連鎖強靭化で議論〉
繊維産業小委員会は同日、同省「繊維産地のサプライチェーン強靭化に向けた対応検討会」(委員長・奥山雅之明治大学教授)の4回にわたる会合の成果についての議論も行った。
検討会が提示した強靭(きょうじん)化対応案では、事業継続、カバー体制、収益構造、認知不足を産地の課題とし、これに対する目指すべき発展の方向性として多様な主体や産地間の連携、外需獲得に向けた取り組みごとに複数の対策案を挙げた。検討会は、小委員会からの意見などを盛り込み、今春中に開催予定の次回会合で取りまとめを行う予定。