インテキ上海25春夏レビュー 後

2025年03月21日 (金曜日)

地場備蓄メーカー人気に

 「ジャパン・パビリオン」と単独出展する大手日系メーカー各社は、今回展も大盛況だったが、それに負けず劣らずにぎわっていたのが、地場の備蓄系メーカーのブースだ。

 その1社の広東易紡紡織(イーファン)は、2005年に広東省佛山で設立された生地メーカーだ。織物と編み物の双方を手掛けている。

 元々は華南エリアの地場高級ブランド数社向けに特化していたため、業界での知名度はそれほど高くなかった。ところが、20年に新型コロナウイルス禍が広まると、既存顧客向けが痛手を被った。

 こうした中、ビジネスモデルを大幅に変更。台頭を始めたライブコマースを手掛ける新興ネット通販ブランドを新規開拓するため、備蓄サービスと生地の自社開発に乗り出した。インターテキスタイル上海などの展示会出展でのプロモーションにも着手し、知名度を高めていった。

 こうした備蓄系メーカーは、同社にとどまらない。今回展では、編み物メーカーの巨豊(ジューフォン)や、同じく編み物を手掛ける秀泰(ショー・タイム)などのブースが人気を集めていた。

 ある日系生地商社幹部は「コロナ禍の前と後では世界が全く異なる。コロナ禍を機に、備蓄を手掛ける地場企業が急増した」と説明する。

 こうした地場備蓄系メーカーの存在を脅威と見る日系企業関係者は少なくない。一方、「うちは広く浅くなので、(顧客の)バッティングはそれほど心配していない」(日系生地商社関係者)や、「備蓄サービスは簡単ではない。(専業の生地商社ではない)メーカーがやるのは難しいのではないか」(日系メーカー幹部)などの声も聞かれる。

 いずれにしても、こうした地場企業と差別化することが欠かせない。そのための切り札の一つが、独自素材だ。今回展では、キュプラ繊維「ベンベルグ」やトリアセテート繊維「ソアロン」の日本の独自原料を使った生地が人気を集めた。

 旭化成アドバンスは、キュプラ繊維「ベンベルグ」を使った裏地の染色加工を手掛ける地場の合弁会社と共同出展し、ベンベルグ使いのファッション向け裏地を訴求した。

 東レの中国法人で、長繊維生地を製造販売する東麗酒伊織染〈南通〉(TSD)は、東レの革新的な複合紡糸技術「ナノデザイン」で開発した4種類のポリエステル糸を使った複数の生地を前面に打ち出した。

 帝人フロンティアの中国法人、帝人商事〈上海〉は、独自開発した新素材「ワンダーパイル」と、中国内販が好調なポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」の二つの素材ブランドを訴求。

 ジャパン・パビリオンに新規出展したANTS JAPANは、クラボウインターナショナルのコラーゲンを配合したレーヨン使いの素材「ルナセル」を出展し、生分解性や、消臭性などの機能性をアピールした。

(おわり)