特集 アジアの繊維産業(13)/ボーケン品質評価機構/海外でも“品質パートナー”へ
2025年03月19日 (水曜日)
ボーケン品質評価機構は、従来型の納品前検査を中心とした検査機関から、企業の品質、環境、人権などへの取り組みを共同で推進する“品質パートナー”への転換を進めている。海外事業を担う海外事業本部も繊維の納品前品質検査だけでなく生活産業資材、機能性、認証・分析、品質支援の各事業本部と連携し、ボーケンの多様なサービスに対する海外における“窓口”としての役割も担う。
〈海外拠点を一括管理/サービス、対象、市場を拡大〉
ボーケンは現在、中国に現地法人として上海愛麗紡織技術検験、常州紡検検験、青島紡検検験があり、現地や海外の検査機関との業務提携によって中国の広州と杭州、台湾、韓国、ベトナムのホーチミン、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタに試験センターを展開する。カンボジアのプノンペンには事務所もあり、アジア・ASEAN全域をカバーする体制となっている。
海外拠点での事業を統括する海外事業本部は、ボーケンが掲げる“お客さまと共同で品質保証するパートナー”を海外でも実現することに取り組んでいる。そのために中国とアジア地域それぞれを一体管理する体制を強化してきた。各拠点とも現地スタッフの積極登用などで現地化を進めると同時に、日本人駐在員は所属拠点に縛られずに依頼企業のニーズに応える行動を可能にした。
こうした活動を可能にするため、中国は上海、アジア地域は台湾が起点となり事業を推進する体制となる。上海は中国向けの試験、化学分析、生分解性試験、食品衛生試験への対応を強化することでポートフォリオの強靭(きょうじん)化を進めている。台湾は、海外向けの品質サポートや教育支援など多彩なサービスを打ち出し、他の拠点へ展開する。
対象とするサービスやアイテム、市場も拡大した。中国とアジア全域で品質検査、機能性試験、化学分析に加え、工場QC(品質管理)サポート、CSR監査、教育支援を実施している。こうした対象サービスと対象分野の拡大は、ボーケンの他の五つの事業本部と連携することで実現した。八木康亘海外事業本部長は「海外事業本部は、海外におけるボーケンの全事業の“総代理店”としての役割を担う」と話す。
〈人権やサステ支援も確立/品質支援〉
海外事業本部としても品質支援業務に力を入れており、海外の生産現場での品質だけでなく、人権やサステイナビリティーへの対応に対するサポートも強化した。
工場QCサポートやCSR監査は中国での需要が大きく、品質支援事業本部と連携して実績が上がる。
中国での人材育成にも取り組み、実地訓練を含む社内要件を満たした人材を多く輩出した。さらにマネジメントシステムや人権に関する外部資格の取得にも積極的に取り組む。ASEAN地域でも要望は多い。現在は日本や中国から出張監査体制を構築しているが、現地人員の育成も進める方針。
また、中国とASEAN地域いずれでも品質や人権だけでなく、サステ支援を強化するために情報開示や有害物質管理、温室効果ガス(GHG)やLCA算定ができる体制と人員確保に取り組む。
〈現地規格や規制に対応/販売支援〉
中国やASEAN地域での内販サポートにも力を入れる。中国では上海法人が2024年度から中国税関総署によって日系検査機関として初めて税関輸出入服装検査採信機関として登録された。また、中国3法人はともに中国の検査機関に対する国家認証であるCMA/CNAS認可を受けており、中国内販に関連した品質試験や表示作成の依頼にも対応する。最近では自社ブランドを持つ中国企業から日本進出に向けた法規制や表示に関する指導依頼も増えている。
台湾、韓国、ASEAN地域でも現地販売に向けた法規制や表示事項に対する問い合わせは多い。このため法規制調査や提携先・現地検査機関との協業による各国規制に基づく安全性試験、表示作成、注意事項の翻訳サービスが好評を博している。拠点がない国・地域に関しても提携先と協業でサポート体制を確立中であり、特に規制が厳しい電気製品などにも対象を拡大することを検討する。
〈ニーズに合ったサービス提供/教育支援〉
海外での教育支援サービスに対するニーズも一段と高まった。これに応えるためにボーケンが国内で提供している繊維の基礎知識セミナーや「BOKENアパレル塾」の内容をオンデマンド化し、海外にも提供することで好評を博している。
さらに新入社員教育や品質管理担当者の教育支援など海外でのニーズに合わせた教育カリキュラムも作成した。受講生の習熟度を可視化することで実務に活用できる知識・知見の確保をサポートする。
セミナーの内容も生産現場での品質管理に関するテーマを重点的に取り上げ、問題の発生を未然に防ぐ方法や改善策に焦点を当てる。海外各国の法規制や強制認証など注意が必要なポイントも紹介する。