特集 アジアの繊維産業(12)/カケンテストセンター/アジア事業の継続拡大に力点/ベトナム、バングラなど存在感
2025年03月19日 (水曜日)
カケンテストセンター(カケン)のアジア事業は、拠点によってばらつきはあるものの、全体では2024年度(25年3月期)も堅調に推移している。ベトナムやバングラデシュが存在感を示すほか、中国も底堅さを見せる。25年度も引き続きアジア事業の拡大を図る方針で、需要に応じて試験機の拡充・導入などを進める。
カケンのアジア事業の24年度は、23年度を上回る試験件数を確保するなど、堅調な動きを見せる。特定の試験が突出して増えているわけではなく、一般試験と機能性試験を合わせて全体として増加した。国別ではインドネシアが勢いを欠いたが、中国やベトナムなどは健闘した。
中国については、ASEAN地域などへの生産移転が危惧されていたが、製造コストやロット対応といった観点から回帰も見られるようだ。「顧客からは中国はやはり外せないといった声が聞こえてきた」とするなど、生産拠点としての存在感を改めて示しており、カケンも上海科懇検験服務を中心に堅調に推移した。
バングラデシュの試験依頼も増えている。昨年の政変の影響は一部に残っているが、バングラデシュ試験室では大きな問題は発生していないと言う。バングラデシュは今後も有望な市場とし、UVカットなどの機能性試験や人員の増強について提携先との協議に入っている段階。
25年度以降も継続的な成長を目指す。各拠点で需要に合わせて試験機の拡大を進めるほか、さまざまなニーズに応えられる体制を整えていく。日本でも注目度が上がっているPFAS(有機フッ素化合物)などの化学物質分析への対応力を高めていく。
中国やバングラデシュに加え、昨年10月に子会社「MTVカケンベトナム」を開設したベトナムの成長にも期待する。インドは将来的には繊維製造拠点としての発展が予想されており、ベンガルール試験室も同国繊維産業の発展と合わせて拡大を見込む。
〈対応可能な試験増やす/上海科懇検験服務〉
中国・上海の上海科懇検験服務は、カケンにとって海外で最も大きな拠点。生産のASEAN地域などへの移転が進むが、生地開発は中国国内に残り、生産の回帰もある。このことから同拠点の試験依頼は減っておらず、24年度も前年度比微増で推移するなど、堅調な動きを見せる。
24年度は、機能性試験などの実施が増えた。また、PFASをはじめとする化学物質分析の問い合わせや依頼も増加傾向にあると言う。上海科懇検験服務の大きな特徴は、日本で実施している試験の「8割程度は対応できる」ことである。今後は対応可能な試験のさらなる拡充や化学物質分析に力を入れるとしている。
機能性試験の拡充では、顧客からの要望が多いという帯電性試験機導入を検討している。「これまで日本に送っていたが、上海で実施することで納期を含めて利便性が向上する」とした。全体の納期対応に力を入れるとし、「短納期はまだまだ不十分。改善の余地が残っている」。
課題の一つが人材。開設から30年を超える上海科懇検験服務では、定年退職者も出てくるとし、新規人材の確保に目を向ける。人件費も高騰しており、コストダウンや自動化などに取り組む方針だ。
〈計画通りスタート順調/MTVカケンベトナム〉
ベトナムは、チャイナプラスワンなどの観点から重要生産拠点の一つであり、繊維関連試験の依頼も増えている。カケンは、昨年10月に子会社のMTVカケンベトナムを立ち上げるなど、同国での新たな取り組みをスタートさせた。同子会社は、上海科懇検験服務に並ぶ拠点に育てる。
MTVカケンベトナムは、吸水速乾や吸湿発熱、保温、接触冷感、消臭といった機能性試験に対応している。ベトナムの繊維産業の拡大もあって試験も確実に取れているとする。「ベトナムのルールへの対応などは簡単ではなく大変だが、業務自体は順調に推移していると言える」とした。
25年度についても試験依頼の取り込みに力を入れる方針で、中でも機能性試験は充実を図りたい考えだ。「日本に送ると納期に時間がかかる。現地で対応できる強みを訴求していきたい」と強調し、早期に事業を軌道に乗せる。
現状は、スタッフ約60人の体制を敷いている。上海科懇検験服務に近づくためにもまずは100人体制を目指す考えだ。人員拡充についても大学新卒が確保しやすい状況にあると言う。「100人という一つのゴールに向けて計画通りに進んでいる」と話した。
〈知名度向上が課題の一つ/インドベンガルール試験室〉
カケンは、インド南部のカルナータカ州のベンガルールで19年1月に事務所を開設し、試験受け付けや試験相談の業務を行ってきた。ベンガルール試験室を開設し、香港に本部を置くグローバル検査機関のインド法人との提携で、21年8月から試験業務に取り組んでいる。
実施可能な試験は、染色堅ろう度や物性試験、混用率試験、製品試験(耐洗濯性試験など)をはじめとする一般試験が中心。試験業務開始当初は納入先が限られていたが、「顧客は確実に増えている」と話す。日本人が2人常駐し、日本語での対応が可能なことも利点の一つと言える。
今後の成長に向けて、「カケンがインドで試験業務を行っている」という事実を広めることが課題になる。その一環として、2月に首都ニューデリーで開催されたインド最大級の繊維業界展示会「バーラト・テックス」に提携先のMTSと共同で出展した。
インドは、ASEAN地域やバングラデシュと比べると、寝具などを含めて多種多様な繊維関連製品が製造できる拠点。ベンガルール試験室への問い合わせも多く、工場紹介などのサポートも行い、試験依頼を増やしていく。