特集 アジアの繊維産業(11)/「VIATT2025」回顧/国際・専門性追求の総合展/日系はベトナム内販、第三国向け拡大へ
2025年03月19日 (水曜日)
メッセフランクフルト〈香港〉と、ベトナム貿易促進局が主催する繊維総合展「ベトナム国際アパレルファブリックス&繊維関連技術専門見本市」(VIATT2025)が2月26~28日、ベトナム・ホーチミン市のサイゴンエキシビション&コンベンションセンターで開かれた。日系企業は計17社が出展。ベトナム内販や第三国向け輸出の拡大を目指し、日本製生地などを訴求した。
〈24カ国・地域から450社〉
この10年で繊維のグローバルサプライチェーンは大きく変化している。米中対立と新型コロナウイルス禍が、その流れを加速させた。中国はいまだに世界最大のサプライチェーンを持ち、またアパレル消費大国でもある一方、欧米などの海外ブランドが中国からASEANへの生産シフトを進めている。縫製業を中心とした中国企業自らも、人手不足や人件費上昇、米中対立を背景にASEANに進出している。
VIATTは、こうした「『売る側』と『買う側』双方のASEANでのニーズに応えるべく、開催を決めた」と、メッセフランクフルト香港の温テイ総経理は話す。アパレル、ホームテキスタイル、産業資材の全サプライチェーンをカバーする国際性と、専門性を追求したベトナム初の総合展を目指す。
第2回となる今回は、1万5千平方メートルの展示スペースに24カ国・地域の450社超(昨年展400社強)が出展。中国、日本、欧州、インド、韓国、台湾が、それぞれパビリオンを設けた。中でも中国企業は出展社全体の約半数を占め、存在感を示した。製品カテゴリーはアパレル用途(素材・製品、副資材)、ホームテキスタイル、産業資材、繊維・縫製機械で、4分の3がアパレル用途だった。
来場者は、地場ブランドや輸出向け縫製工場の関係者のほか、欧州や南米など海外ブランドの仕入れ担当者などの姿が見られた。
〈地場ブランドがターゲット〉
日系企業は、「ジャパンパビリオン」に生地商社・メーカー12社(スタイレム瀧定大阪、瀧定名古屋、サンウェル、宇仁繊維、ヤギ、柴屋、豊島、田村駒、東洋紡せんい、船場テキスタイル、クラボウ、シキボウ)、副資材2社(島田商事、カジテック)、製品1社(MNインターファッション)、繊維機械1社(村田機械)の計16社が出展した。またローカルエリアに東陽織物が単独出展した。
地場ブランドをターゲットにする生地商社は、日本製生地などの備蓄品と、即納サービスをアピールした。
瀧定名古屋は、日本や中国、韓国などで生産する天然素材と合繊を使った生地のストックサービスを訴求。ベトナム内販では、地場の高級ブランドなどとの取り組みを拡大中だ。
サンウェルは日本本社、上海、タイのグループ会社が取り扱う備蓄品を打ち出した。ハノイやホーチミンの商業施設に出展する高価格帯のブランドへの販売を伸ばしている。
スタイレム瀧定大阪は主力の日本に加え、中国、韓国、インド、ベトナムなど、アジア各国で開発する備蓄品を出展。地場ブランドは現状、規模が小さく、有力顧客の数は限られそうだが、「5年、10年後に大きくなるところを今から見つける」(宮地信介・第一事業部テキスタイル3部GMO室室長)。
柴屋は、小ロット・短納期のストックサービスを前面に訴求した。昨年開かれた同展への出展を機に内販を本格化し、地場ブランドと縫製工場に向けた備蓄品と、バイオーダー品の商売を広げようとしている。
北高とコスモテキスタイル、ミナミの3社は、「船場テキスタイル」として共同出展し、それぞれが備蓄販売する日本品を紹介した。船場テキスタイルは、関西ファッション連合(KanFA)テキスタイル部会が昨年立ち上げた「船場」地区をルーツにしたブランド。参加企業の素材開発力と備蓄販売機能をアピールし、国内外で販路を開拓することを目的とする。
宇仁繊維は、現地で好まれるポリエステル使いの光沢感のある無地のサテンなどを打ち出した。昨年展に出展したのを機に内販を強化し、デザイナーズブランドなどへの販売で成果を上げている。
ヤギは、日本で備蓄する丸編み地や西陣織りなどの生地と、それを販売する電子商取引(ECサイト)の紹介に力を入れた。「ベトナムでもSNSがはやっている。SNS上で運営するブランドの市場が開拓できないか模索中だ」
豊島は日本本社、ベトナム、中国、インドネシアのグループ会社が連携し、地場の縫製工場に向けて各拠点が取り扱う生地を訴求した。
田村駒は、内販を深耕するために出展した。トリコットシャツ地「コンフィール」やリサイクルポリエステル「C2C」の編み物などの日本製生地と、現地の専用ラインで生産する編み物製シャツを来場者にアピールした。
〈自社工場の強み訴求〉
ベトナムやタイの自社工場をアピールし、内販と欧米など第三国向け輸出の新規開拓を目指す企業も目立った。
クラボウは、ベトナム法人とタイ法人の2社で共同出展し、タイの自社工場で生産するパンツ地を中心とした織物と、日本とベトナムの協力工場で生産するデニム地を訴求した。同社は伊藤忠グループと連携するなどし、複数の地場大手ブランドへのタイ製パンツ地などの販売を拡大しようとしている。
MNインターファッションは、日本本社とベトナム法人の2社で共同出展し、日本製生地と、ホーチミンにある自社工場のSBサイゴンファッション(SBSF)を紹介した。SBSFは現状、日本向けの生産が中心だが、欧州など第三国向けビジネスの開拓にも着手している。
東洋紡せんいは、日本とインドネシアの自社工場で生産する編み物の内販の可能性を探るため初出展。中肉の高密度編み地「スクラムテック」、紫外線と近赤外線を遮断する編み地「レイブロック」などを訴求した。
東陽織物は、内販と第三国向けの輸出の可能性を探るため、カーテンなどのインテリア向けの織物を出展した。同社は日本向けのインテリアや、ユニフォーム・スポーツ用途の織物を地場の台湾系工場で生産。昨年開催の同展への出展を機に、内販と第三国向けの輸出の開拓に乗り出した。