特集 アジアの繊維産業(6)/マレーシア/高付加価値品で市場開拓/サプライチェーンを最適化

2025年03月19日 (水曜日)

 マレーシア東レグループは、東レグループのASEAN地域における商品開発・マーケティング拠点としての機能を強化してきた。原糸・原綿からテキスタイルまで、国際競争が激化する中、グループ連携によって生み出される高付加価値商品の拡大、サプライチェーンの最適化を推進する。

 2024年度(25年3月期)もASEAN地域の繊維市況は厳しい環境が続いている。原綿は中国品やトルコ品との価格競争が激化し、特に汎用品は大きな影響を受けた。ただ、サステイナブル素材の需要拡大は続いておりポリエステル短繊維製造のペンファイバー(PFR)もペットボトルリサイクル原綿の販売が拡大した。

 ペンファブリック(PAB)に関してもウクライナ紛争や中東の政情悪化など地政学リスクと不確実性の高まり、中国の景気低迷などが市況の重しとなっており、強化してきた中国市場向けやワークウエア用途に影響が及んでいる。

 このため、これまで以上に生産・販売品種の高付加価値化が不可欠となっている。PFRはペットボトルリサイクル原綿の販売拡大や品種高度化、東レグループのサプライチェーンを活用した特品原綿の拡販に力を入れる。

 PABも重点的に取り組むカジュアアル用途で撥水(はっすい)、防シワ、防汚、UVカット、高通気など機能性長短複合織物へのニーズが高まっていることを受け、東レの特殊原糸・原綿を活用して開発した「エボトゥルース」ブランドで中国・インド市場の開拓を進め、成果を上げている。今後はASEANや欧米市場にも水平展開を目指す。

 染色や後加工の高度化に加え、織布のラインアップ強化にも取り組んでいる。日本、韓国、中国、ASEAN市場に向けたアウター用途の長短複合高密度タイプライター生地やボトム向けに高い遮熱性と紫外線遮蔽(しゃへい)性・防透性が特徴の「EVOTRUTH WHITE」など付加価値の高いテキスタイルの生機供給を拡大する。

 東レグループのインドネシアの染色加工会社であるセンチュリー・テキスタイル・インダストリー(CTX)にも出資しており、インドネシアでの地産地消スキームの構築を進めながら東レの繊維事業におけるアジア全体のシナジーを生み出していく。東レグループが出資する現地縫製企業との連携を深めることで、生地だけでなくガーメントでの提案を可能にすることでより精度の高いビジネスの組み立てを構築する。

 こうした取り組みを通じて、マレーシアは新商品開発やマーケティング、技術指導に磨きをかけ、中国や日本の東レグループ開発拠点との共同開発や要素技術の探求を深化させる。

〈執行役員在マレーシア東レ代表トーレ・インダストリーズ〈マレーシア〉社長 テー・ホック・スーン 氏/〝脱・中国〟を好機に〉

 米国のトランプ大統領就任以降、矢継ぎ早に出された関税強化の方針によってサプライチェーンに地殻変動が起こる可能性が高まりました。“脱・中国”の流れが加速し、中国の紡織加工会社もASEAN地域に事業拠点を求める動きが強まっています。こうした動きは、マレーシアに拠点を構える当社にとっても大きなビジネスチャンスになると捉えています。

 一方、マレーシアは25年も電力料金や最低賃金が引き上げられ、用役コストや労務単価が上昇しています。このため事業構造の抜本的な改革が必要です。汎用わたや定番のポリエステル・綿混織物から脱却し、カジュアル用途やスポーツ用途に向けた高付加価値素材の生産拠点として生まれ変わることが必須。東レグループの総合力を発揮し、新規顧客・新規用途の開拓を推進します。