繊維ニュース

日系企業のベトナム生産/内販と第三国向け拡大へ/自社工場の稼働好調

2025年03月18日 (火曜日)

 ベトナムの日系企業が、日本向け製品の生産を順調に拡大している。一部企業の自社工場はフル稼働が続く。こうした中、ベトナム内販と第三国向けの拡大に乗り出す企業が増えている。(ホーチミン=岩下祐一)

 ベトナムの2024年繊維品輸出額は、前年に比べ11・2%多い約440億㌦となった。中国に次ぐ世界第2位の規模で、伸び率は中国(2・8%増)を大幅に上回った。

 中国からASEAN地域への生産シフトは、新型コロナウイルス禍を受けたサプライチェーンの混乱と、米中対立の激化で加速した。その恩恵を最も受けるのが、ベトナムだ。人手不足や人件費の高騰など、ベトナムの繊維産業も課題は少なくないが、それでも周辺国に比べれば優位性がある。

 「ミャンマーは政情不安で、バングラは生産アイテムが軽衣料に偏る。そのため、ベトナムが選ばれている」「ミャンマーの中国系工場が人手不足を理由にベトナムにシフトしてきている」などと、現地日系企業の幹部らは話す。

 これを受け、日本向け製品をメインに手掛ける現地日系企業の24年業績は軒並み好調だった。一部企業は過去最高益を更新した。

 ベトナム生産の課題の一つである現地調達も、徐々に進んでいる。機能素材など付加価値の高い生地は中国品に依存するが、定番品は現地品に切り替える動きがある。副資材は、小付属を中心に現地調達が可能になってきた。「プラスチックホックは難しいが、その他の副資材は現地で広く浅く調達できる」と、日系企業関係者は話す。

 副資材大手、島田商事のベトナム法人、島田商事ベトナムの(現地で生産し、現地で販売する)地産地消比率は24年、9割に達した。コロナ禍が落ち着いた23年以降に中国系などの工場進出が進み、仕入れ先が増えたことで、同比率は大幅に高まった。

 自社工場の拡充も進む。東レインターナショナルのベトナム法人、トーレ・インターナショナル・ベトナム(TIVN)が、22年に中部のクアンガイ省で立ち上げたTIVNクアンガイ工場は、スポーツウエアを中心に生産。24年から安定稼働し、フル生産が続く。

 STXのベトナム法人、STXベトナムは、南部のロンアン省にある自社工場、SFLでの生産を拡大している。24年業績はこれが貢献し、過去最高益を更新した。

 テープとリボンを手掛けるSHINDOは24年11月、北部のタイグエン省で新工場を開業した。地産地消を進めるのが狙いだ。

 日本向けが順調に推移する中、多くの企業は第三国向けと内販にも目を向ける。伊藤忠商事のベトナム法人、プロミネント〈ベトナム〉は、地場ブランド向けの製品と生地の販売を加速。24年は既存顧客の地場ブランド向けを大幅に拡大した。

 シキボウのベトナム法人、シキボウベトナムは、日本品とベトナム品の糸の備蓄品の内販と第三国向けの拡大を目指す。

 クラボウのベトナム法人、クラボウ・ベトナムも内販と第三国向けなどのオウンビジネスの拡大に傾注する。