LIVING-BIZ vol.116(4)/特集 環境/シキボウ/東洋紡せんい/イワタ

2025年03月17日 (月曜日)

〈綿再利用ペレットに力/ホテルのシーツ回収検討/シキボウ〉

 シキボウは、廃棄する綿素材を再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」の用途開拓に力を入れる。ホテルのシーツなど寝装の回収・再資源化も検討する。

 コットレジンは、生産工程で発生する綿廃材や、回収された廃棄衣類を再利用して、リサイクルセルロースマイクロファイバーに再資源化したもので、独自の配合でポリプロピレン樹脂に分散・混錬する。

 同ファイバーを配合したペレットを使用することで強度がアップし、成形品の薄肉化、軽量化が可能になる。バイオマス原料を配合することで石油由来樹脂の使用量削減にもつながる。

 同社の織布・染色加工子会社、シキボウ江南(愛知県江南市)にバルク生産設備を据え付け、3月から試運転を開始する。ポリプロピレン樹脂と混ぜることによって物性が向上し、プラスチック製品の強度が向上することから自動車部品や電化製品、建材などさまざまな用途へ提案し、販売を本格化させる。

 回収では、ホテルのシーツなど寝装品へのアプローチも進めて取り組みを広げる。

〈高品質のリサイクル素材/綿、ナイロンで/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループ寝装チームは、高品質リサイクル綿糸「さいくるこっと」、高品位リサイクルナイロン「ループロン」を寝装向けで提案する。

 さいくるこっとは、くず糸、生機や加工生地の裁断くずを独自工程でリサイクルする。従来の反毛とは異なり、繊維を傷めずに生地片をわたに戻す開繊技術を採用。細かく裁断した後に、繊維に薬剤を付着させるオイリングを施して空気の力で開繊することで、繊維長が維持でき、高品位なリサイクルコットン100%糸や細番手糸を紡績できる。

 ループロンは、マテリルリサイクルタイプを「ループロン―M」、マスバランス方式ケミカルリサイクルタイプを「ループロン―C」として打ち出す。

 ループロン―Cは、産業廃棄物をケミカルリサイクルで基礎原料のナフサまで分解することで、バージン原料と基本性能が変わらず、高品質な製品を作ることができる。バージン原料に近づけることで食品衛生法もクリア。食品、衣料、資材などの幅広い用途に使用できる。二酸化炭素(CO2)もバージンと比較して74%削減できる。

〈「本物&持続可能なモノ作り」/地球との調和追求/イワタ〉

 寝具製造卸・小売りのイワタ(京都市)は、「オーセンティック&サステナブル」を新たなデザインコンセプトにしたモノ作りを追求する。

 従来のデザインコンセプトは「シンプル&エコロジー」。これまでの取り組みをベースに、より「本物で持続可能なモノ作り」(岩田有史社長)を目指す。

 新デザインコンセプトに基づいて新たにプレミアムベッドシリーズ(ベッドフレーム、マットレス、キャメル敷パッド)を打ち出した。マットレスの「ラークオール」は天然毛使いで同社を代表する商品だが、より進化させた。

 インテリアトレンドを反映したアッシュと、大人の落ち着きを感じさせるベージュを基調とした新カラーを導入。顧客一人一人の要望に寄り添いながら、丁寧に仕立てる「御誂(おあつら)え」で、体形や好みに合わせて中材に積層する獣毛を組み合わせ、洋服のボタンや裏地を選ぶように生地や房の色を選択できる。

 環境対応では、生産に再エネ電力を使用するほか、耐用年数経過後にふとんのように仕立て直しやパーツ交換を可能にして製品寿命を延ばす。製造工程で排出する生地の端切れを再生してタオルを開発、動物性のくず毛を堆肥工場と連携し、有機肥料として再資源化するプログラムなどを内蔵し、廃棄と炭素排出を最小化するサーキュラーデザインのマットレスとして提案する。

 持続可能なモノ作りでは、二酸化炭素(CO2)排出量を削減した羽毛ふとんも販売している。「使い続けること」をテーマにした「アンブリーチ」シリーズから打ち出す。

 Earth hacks(東京都渋谷区)が提供する「デカボスコア」(脱炭素化)の認定を受け、無染色・無漂白の生地と羽毛を使用し、再生エネルギー由来の電力使用や定期的なメンテナンスによる製品の長寿命化などで、従来商品に比べてCO2e(CO2相当量に換算した値)を42%(28キロ)削減した羽毛ふとんを提案する。さらに購入者と協力して、対象商品の購入でCO2排出量を埋め合わせるカーボンオフセットにも取り組む。

 同社は、「自然との調和を眠りから実現する」をパーパス(自社の存在意義、社会に対して果たす役割)に掲げる。東洋思想「天人合一」(自然と人はひとつながりという意味)をキーワードに、自然との調和のために2方向からアプローチする。

 一つは、自然のリズムと同調した良質の睡眠を届けること。もう一つは自然の限界範囲内でのモノ作り。この考えを具現化するために、三つのフィロソフィー「SLEEP(良質な睡眠を提供)」「SAFE(安心かつ安全な品質)」「SUSTAINABILITY(持続可能なモノ作り)」に基づいた企業活動を行う。

 この考え方に基づいた環境取り組みが評価され、今年2月に「令和6年度京都府環境保全功労者表彰・環境トップランナー部門」、「令和6年度京都環境賞・特別賞(KES推進賞)」などを受賞している。