クラボウ/「ネイテック」はフラグシップ糸/アウターへも広げる
2025年03月13日 (木曜日)
クラボウは、原綿改質の機能綿糸「ネイテック」を“フラグシップ糸”と位置付け、拡販に力を入れる。ネイテックは現状、糸売りの3~4割を占め、今期(2024年3月期)は前期比約1・5倍の販売量を見込む。これまでインナー用途が中心だった。UV遮蔽(しゃへい)・遮熱機能の「ネイテック・ダル」の投入でアウターへも広がりを見せ、「年間を通じて売れる」(繊維事業部の小林靖弘繊維素材部長)素材として、市場での存在感を高める。
ネイテックは吸湿発熱機能の「ネイテック・ウォーム」、吸放湿機能の「ネイテック・ブリーズ」、消臭機能の「ネイテック・フレッシュ」、保湿機能の「ネイテック・モイスト」を展開してきた。特にインナー用途が多く、冬用にウォーム、春夏用にブリーズの採用が多かった。他にも靴下や寝装への採用も増えている。
7番手から80番手までの対応が可能。安城工場(愛知県安城市)やタイ、インドネシアの自社工場で生産し、国内外で安定した品質で供給できる。基本的にはバイオーダーで顧客の要望に沿って供給。単なる糸の売りっ放しではなく「最終製品まで介在し、しっかり機能を担保する」対応によって顧客からの信頼度を高め、受注拡大につなげてきた。
昨年、新たにダルを追加。スポーツのTシャツ用途へ提案が進んでおり、26年以降に製品が市場に出回る。これまで秋冬物への採用が多かったが、ダルの投入で年間を通じてネイテックを提案しやすくなり、来期に向けても「今期と同じペースで増やしていく」。
「春夏を充実させたい」との考えからネイテックに新たな機能付与の開発も推進。セーターなど横編みへも用途を広げる。綿だけでなく同じセルロース系繊維のレーヨンも理論的には“ネイテック化”を「ほぼできるはず」として、今後の開発を見据える。織・編みを含めた高次加工に加え、取引先の技術を組み合わせ、「クラボウから買ってもらえる理由」を追求する。
〈ウール100%でリング精紡糸〉
クラボウは、リング精紡機によるウール100%糸を開発し、販売を始めている。ウールは繊維長が長く、通常の綿専用の紡機では紡績できない。「開発にかなりの時間を要したが、ノウハウができてきた」(小林繊維素材部長)として、少量の生産であれば品質も安定しつつある。
綿番手で30番手まで生産が可能。生地にすると、ウール100%の梳毛糸や紡毛糸の生地とは違う独特な風合いで、ハイエンドのブランドからの引き合いが多いと言う。ウール100%の中空紡績糸「スピンエアー」も開発。「ネイテック以外のさまざまな糸開発も力を入れていきたい」