新たな成長の舞台へ 素材メーカー系商社の視点(5)/東洋紡せんい/「利」と「理」を追求
2025年03月13日 (木曜日)
東洋紡せんいは、4月1日付で東洋紡STCから工業材料事業と機能資材事業が移管されることにより衣料から資材まで扱う総合繊維企業に進化する。清水栄一社長は「シナジー発揮で開発型ビジネスを拡大する」と強調する。
2024年度(25年3月期)は輸出織物事業が円安の追い風もあり中東民族衣装用織物を中心に堅調。ただ、為替リスクが無視できないだけに「市況変調に耐えうる収益構造を作る」と清水社長は話す。ナイロン高密度織物もマテリアルリサイクル品とケミカルリサイクル品をそろえ欧州市場へ提案を進める。
スクール事業も学生服のモデルチェンジ増加が追い風となり好調を維持した。ただ、流通在庫も増加傾向のため受注ペースはやや鈍化している。ユニフォーム事業は備蓄ワークウエア向けが減少したが、白衣が好調。また、自社縫製工場で発生する端材をリサイクルする「T2T」もリネンサプライ企業と提携し、レンタルユニフォーム用途で具体的な取り組みを進めている。
マテリアル事業も原糸販売は堅調。特に新方式開繊技術を活用したリサイクル綿糸「さいくるこっと」への注目は高く、採用が本格化した。ただ、インナー向け生地販売は市況が振るわず苦戦した。また、スポーツ事業も苦戦。アパレルの素材に対するニーズとのミスマッチが生じていると分析する。ただ、中国や欧米への生地販売は拡大した。
24年度は売上高330億円、営業利益10億円を計画しているが、工業材料事業と機能資材事業が移管されることで25年度は売上高約450億円、営業利益20億円を目指す。清水社長は「当社が国内外に持つ工場を生かした調達力や開発力を活用することでシナジーを発揮できる」と指摘。マテリアル事業部が取り組む熱可塑性炭素繊維複合糸など非衣料分野の開発素材を活用した新商品や新規ビジネスも期待できる。
衣料から資材まで全ての領域で「『利』すなわち『経済的価値』と、『理』すなわち『社会的価値』を追求するのが当社の基本方針」と清水社長は強調する。東洋紡グループの繊維事業の中核として衣料分野から産業資材分野まで総合的に扱うメーカー・商社機能を担うことになる。