メディカル・介護ウエア/生産コスト増が足かせに/多方面との協業で打開探る
2025年03月13日 (木曜日)
物価高で病院、介護施設の経営が厳しさを増す中、その余波はメディカル・介護ウエア市場にも及ぶ。メーカーにとって悩ましいのが原材料費や人件費、為替をはじめとする種々のコストアップだ。販売への影響懸念から価格転嫁が進まず利益圧迫が続いている。(甘利昌史)
超高齢化を背景に中長期的には緩やかな成長が見込まれる同市場だが、足元では取り巻く環境の変化に伴う課題が山積だ。中でもここ数年にわたる生産コストの上昇がじわりと影響を及ぼし始めている。
一方、エンドユーザーである医療、介護施設も薬剤や医療材料価格の急騰で負担を強いられている。2024年度の診療、介護報酬改定を経て賃上げを優先する傾向も強まっており、購買原資の大幅な増加は見込めない。
このような状況下でのユニフォームの価格改定は、買い控えや買い替えサイクルの延長につながる可能性が高く、転嫁率を抑えた値上げや据え置きで対処するメーカーの動きが目立つ。手術衣や患者衣、被介護・在宅療養者向けウエアといった周辺領域に広げていくケースもある。
現状の打開策として注目されるのが協業ネットワークを多方面に展開する動きだ。ネットを利用した医療関連サービスの提供を行うエムスリーは昨秋、患者衣、タオルなどを含む入院セットレンタル大手、エランを連結子会社化した。エムスリーが構築した約6千件の医療機関と、エランが持つ年間延べ約500万人の患者接点によるクロスセルシナジーが期待できるメリットは大きい。他に新規事業開発や入院セットの付加価値向上、海外展開サポートの連携を通じて、医療関係機関へのサービスの網羅性を高めていくことに意欲を見せている。この中ではユニフォーム事業拡大の可能性も否定できなさそうだ。
エランと患者衣の共同開発を進めるメディカルウエア製造販売のクラシコ(東京都港区)は先月末、新たにMNインターファッションと資本業務提携を締結した。東南アジア市場をはじめとするグローバル展開の加速を目指すとともに、国内市場において企画開発から生産、物流など商品供給全般で協業を進める。
クラシコはさらにサステイナブル活動において、デジタル技術とファッションの融合を目指すSynflux(同中央区)と型紙設計を最適化するプロジェクトに着手。ウエアの3Dデータを元に最適な型紙配置を人工知能(AI)で計算。生地の無駄を極限まで減らすことで従来比約9~10%の廃棄量の低減を見込む。縫製箇所が増えないことから作業工数や電力消費の抑制効果も期待できる。
リネンサプライ業大手のワタキューセイモア(京都府井手町)は、クラボウのアップサイクルシステム「ループラス」を活用したサステ活動を進める。自社の患者衣の製造過程で発生する裁断片を反毛、紡績、縫製し、新たな患者衣に再生する仕組みを構築。25年は試験的に3千着強の生産計画を立てている。